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かもとりごんべ

表紙
かもとりごんべ
●日本むかしばなし

「かもとりごんべ」について

 「かもとりごんべ(鴨とり権兵衛)」は、主人公ごんべの愚行を笑い飛ばす〈笑い話〉として、岡山県に古くから伝わる話ですが、類話は宮城・福島・鹿児島県などにも残っています。
 この種の〈笑い話〉は、室町時代末期から江戸時代初期にかけて数多く生みだされたといわれ、大名に仕える御伽衆のお伽噺や、江戸町人による江戸小噺などによって発展し、現在は落語の世界などで生きつづけています。
 さて冒頭での、ごんべが次々と幸運に恵まれて獲物を手中にする展開は、『今昔物語』や『宇治拾遺物語』に載っている「わらしべ長者」と同じパターンです。ただ「わらしべ長者」の主人公が、題名通り富を得て〈長者〉になるのに比べ、「かもとりごんべ」のごんべは、〈愚か者〉として扱われ、〈欲張りや意地っ張りを笑い、戒める〉話として伝えられてきました。
 しかし、むしろごんべという人物の持つ〈軽妙さ・洒落さ〉、大空を飛んで旅する〈スケールの雄大さ〉、物語全体に流れる〈おおらかさ〉などに、強く心を魅かれます。
 わらい話でありながら、話の前半では〈豊漁への祈願〉が込められ、中ほどでは〈天空への憧れ〉が語られ、後半では〈人間わざの限界〉とでもいうべき現実が述べられています。ここには、ごんべという主人公の奇想天外な行動を、結局は〈現世での諦め〉といったものにむすびつけながら、なおも数々の奇跡とロマンを求めてやまなかった人々の、強い願望が感じられます。
 「……そして、ごんべはフーラフラ、まわりの者は、大笑い!」という語り手の言葉に、お腹を抱えて笑いながら、「本当に空を飛べたらなあ……」そういってため息をついたであろう子供達の姿が、目に浮かぶようです。

(秋 晴二)

ぶん:あき せいじ
え:ゆら ふじお
画材:カラーインク
編集プロデュース:酒井義夫

 
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