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きたかぜとたいよう

表紙
きたかぜとたいよう
●イソップさく

「きたかぜとたいよう」について

   この本には、「北風と太陽」をはじめとする〈イソップ寓話〉の代表的な話12編を収めました。
 〈寓話〉とは、教訓または諷刺を含んだつくり話のことで、中でも動・植物を擬人化し主人公として登場させることの多い〈イソップ寓話〉は二千数百年を経た今日でもなお私達の日常に溶けこみ、生きつづけています。その理由の一つとして、1593年に九州・天草で刊行された翻訳本「伊曽保物語」の冒頭部分を引用してみますと、〈一般に、人は何の価値もない戯言には耳を傾けるが、真理の教えにはそっぽを向くようである。そこで、誰もが容易に聞け理解できるような話を集め、ここに出版する〉とあります。これは寓話の持つ魅力の一面を的確に表現しています。
 ところで〈寓話の父〉と呼ばれ、残された寓話の数も数百編といわれるイソップとは、どんな人物なのでしょうか。一般には〈前6世紀の中頃ギリシャに生存し、容姿の醜い奴隷であったが秀れた機知と弁舌により後年自由の身となった。その後、某市民の謀略により殺された。〉と伝えられていますが、定かではありません。それは、イソップが生きていた時代の歴史の記録が残されていないからなのです。ただ、前5世紀に生存したギリシャの歴史家ヘロドトスが、著書『歴史』巻2の中でイソップについて記述していることから、今日のイソップ像が語られているのです。
 さて〈イソップ寓話〉には、恩を忘れるな、身の程を知れ、などの教訓・処世術が説かれていますが、その反面「キツネとカラス」のように〈むやみに口車にのるな〉と忠告しつつ〈他人の愚かさを利用しろ〉とも教えています。
 いずれにしろ、この世に忠告がある限り、そして忠告がそれを受ける者にとって気持ち良い性質のものでない限り、寓話はますますその必要性を高めてゆくと思われます。

(秋 晴二)

ぶん:あき せいじ
え:ゆら ふじお
画材:はり絵・カラーインクなど多種
編集プロデュース:酒井義夫

 
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