むかし バグダッドの まちに、ひとりの おうさまが すんでいました。
あるひのことです。
おうさまの ところに、だいじんの マンゾールが やってきて いいました。
「おうさま、いま おおひろまに ひとりの しょうにんが きております。
めずらしい しなものを たくさん もっておりますから、ごらんになってみたら いかがですか?」
「よしよし。」
おうさまは、きがるに こたえて たちあがりました。
だいじんが いったとおり、しょうにんは きらきら ひかる ほうせきや、みたこともないような みごとな おりものなどを つぎつぎに だして、おうさまを よろこばせました。
「さてと、いったい どれを かおうかな……。」
おうさまが まよっていると、しょうにんは ちいさな はこと、ふるい かみきれを とりだしました。
「それは なんだ?」
おうさまが たずねると、しょうにんも、くびを かしげながら こたえました。
「これが いったい なんなのか……じつは、わたくしめにも わからないのでございます。
この かみきれに かいてある もじも、さっぱり よめませんし……。」
「どれどれ、わしが よんでみよう。」
おうさまは、かみきれを てに とってみましたが、やっぱり よめません。
めずらしものずきの おうさまは、はこと かみきれを かいとると、すぐに、どんなことばでも しっていると いう、がくしゃの セリムを よびました。
かみきれを みるなり、セリムは いいました。
「これは、ラテンごで ございます。」
「それで、なんと かいてあるのだ?」
「はい。 『これを てに いれたものは、アラーのかみの めぐみにより、すばらしいことが できる。 はこの なかの こなを かぎ、ムタボールと となえよ。 そうすれば、どんな どうぶつにも なれるし、どんな どうぶつの ことばも わかる。 また にんげんに もどるときには、ひがしに むかって 三ど おじぎをし、ムタボールと となえよ。だが、どうぶつに なったときは、けっして わらっては ならない。 まじないの もんくを わすれ、にどと にんげんに もどれなくなる。』」
「なんて すごい たからものだ!」
おうさまは おおよろこびです。
「よし、さっそく ためしてみよう。」
と いうと、だいじんを つれて おしろの にわに でました。
すると、ちょうど うまい ぐあいに、一わの こうのとりが いけで えさを さがしているのを みつけました。
しげみに かくれて、ふたりが ようすを みていると、そらから もう一わ、こうのとりが まいおりてきたのです。
「おうさま、あの こうのとりたちは、きっと おしゃべりを はじめますよ。
いったい どんな はなしを するのか、きいてみようでは ありませんか。」
だいじんが いうと、
「うむ、それは おもしろい。」
おうさまも、すぐに さんせいしました。