いまから 八百ねんも むかしのことです。
やまぐちけん しものせきの ちかくにある、だんのうらという うみの うえで、げんじと へいけの さむらいたちが はげしい たたかいを しました。
へいけは、げんじがわに さんざん うちまかされ、へいけの さむらいたちが たくさん ころされました。そのなかに まだ ちいさかった あんとく てんのうも いて、おつきの おんなのひとと いっしょに、うみに とびこんで しんでしまったのです。
この たたかいで、へいけは ほろびてしまいました。
それからというもの、この だんのうらのあたりに、ふしぎなことが つぎつぎに おこりました。
よるになると、まっくらな うみに あおじろい ひかりが ぽうっと うかびます。ふねが とおると ずぶぬれの さむらいが、うみの そこから あらわれ、ふねを しずめたり するのです。
「ああ おそろしい。しんだ へいけの さむらいたちが、うらんでいるのだろう。」
このちかくに すむひとたちは、こわくてなりません。
また、このえに あるような こうらに ひとの かおがついている カニが、たくさん あらわれました。いまでも このカニは《へいけガニ》と よばれています。へいけの さむらいたちの たましいが はいっていると しんじられているからです。
そんなわけで ひとびとは、うみのそばに<あみだじ>という おてらを たてました。
しんだ ひとたちの おはかも たてて、おいのりをしたのです。
そうすることで、へいけの ひとたちの きもちも しずまったのでしょう。もう それからは、うみの ゆうれいも でなくなりました。
それから なん百ねんもたった あるとしの ことです。
そのころ <あみだじ>に、ほういちという びわ ほうしが すんでいました。
<びわ>というのは、びわの みを はんぶんに わったような がっきです。
ベンベン ベベーン
ベンベン ベベーン……。
びわを ひきながら、かなしい ものがたりを うたのように はなすひとを、びわほうしと いいます。
ほういちは めくらでしたが、びわを ひくのが たいへん じょうずでした。
とくに、へいけが げんじに ほろぼされた、あの かなしい だんのうらの たたかいの うたが とくいで、だれもが なみだを ながすほどでした。