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ゆきおんな

表紙
ゆきおんな
●日本むかしばなし

「ゆきおんな」について

 “ゆきおんな”という言葉には、どこか神秘的で、幻想的な味わいがあります。
 「雪女」は、雪国地方の伝説に登場する“雪の精”で、雪女郎・雪娘とも呼ばれています。
 ふだんは人間の味方である自然も、冬になると、とたんに恐ろしい敵と化して、人々をおそいます。降りつもった雪は、雪崩となって家々をおしつぶし、時には人命をも奪います。雪の中をさまよう人は、あまりの寒さに凍死することさえあります。冬の自然は、そこで生活する人々にとって、まさに恐ろしい現実なのです。この冷酷さからのがれるために、人々は家にとじこもり、ながく厳しい冬を過ごさなければなりませんでした。
 しかし、山を谷をはたけを、白一色につつんだ美しい雪景色は、人々にロマンを与えずにはおきませんでした。恐れながらも愛した自然……。この中から生まれたのが「雪女」の伝説なのです。
 雪にちなんだこの種の話としては、ほかに「ゆきんぼ」「雪婆」などの伝説が知られています。いずれも新潟・山形・長野県など、雪深い地方にみられますが、この本では、小泉八雲の『怪談』に出てくる「雪女」の話をもとにしました。
 さて、ここに登場する雪女は、“恐ろしい女”であると同時に、人間的な弱さも持った“哀れな女”でもあります。自分が禁じた話を語る巳之吉の言葉を、じっと聞かねばならなかった雪女の心は、どれほど苦しかったことでしょう。でも、それが雪女の宿命なのです。さいごに雪女は、“子どもたちへの愛”を残して去ってゆきました。それが雪女にとって、せめてもの“心の救い”だった、のではないでしょうか。

(秋 晴二)

ぶん:あき せいじ
え:かじ ひでやす
画材:クレヨン・透明水彩
編集プロデュース:酒井義夫

 
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