やまを いくつも こえ、けわしい たにを わたってゆくと、そこに ぽつんと ちいさな むらがあります。
まるで ねむったように しずかで、のんびりした むらです。
でも この むらにも、こんなに こわい…… いいえ、もしかしたら かなしい はなしなのかも しれません、
こんな はなしが、つたわっているのです。
むかし この むらに、ふたりの きこりが すんでいました。
ひとりは、もさくと いう としよりで、 もう ひとりは、みのきちと いう わかものでした。
ふたりは、いつも いっしょに やまへ でかけました。
その とちゅう、おおきな かわを わたしぶねに のって、わたらなくてはなりません。
いぜんは、この かわにも はしが かかっていたのですが、おおみずの ときに、ながされてしまったのです。
ある ふゆのことでした。
その ひは、あさから つめたい かぜが ふいて、いまにも ゆきが ふりそうな そらもようでした。
もさくと みのきちは、いつものように やまへ でかけ、きを きっていました。
そのうち、とうとう ゆきが ふりだして きたのです。
「これは いかん。はやく かえらないと、 えらい めに あうぞ。」
ふたりは、いそいで たきぎを あつめると、あしばやに かえりはじめました。
その あいだにも、ゆきは どんどん つもります。
ゆうぐれ ちかく、ふたりは やっとの ことで、ふなつきばへ たどりつきました。
ところが、いつも あるはずの ふねが、 ないのです。
「もさくじいさん、たいへんだ!
ふねは、むこうぎしに ついたままだ!」
みのきちが さけびました。
「こまったの。この さむさでは、かわを およいで わたるわけにも いかぬし……。」
もさくも、がっかりしたように いいました。