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したきりすずめ

表紙
したきりすずめ
●日本むかしばなし

「したきりすずめ」について

 この話は日本の五大昔話のひとつに数えられ、北は青森から南は大分まで広く分布している民話です。
 さて、「舌切雀」の原型は、鎌倉時代の説話集『宇治拾遺物語』の「腰折雀」までさかのぼれます。ところがこの「腰折雀」の話には、雀が糊をなめて舌を切られたとか、雀から貰って来た葛籠から宝物が出てきたとかいった展開はありません。雀を助けた善良な婆さんは、米がいくらでも出る瓢箪を授けられるが、雀にわざと怪我をさせた邪悪な隣の婆さんの瓢箪からは、毒虫がウジャウジャ出て婆さんを刺し殺してしまう、いわゆる典型的な動物報恩譚となっています。そして、現在のような「舌切雀」として流布するようになったのは、江戸時代の草双紙のひとつであった赤本によってなのです。
 しかし、<雀は桃太郎のように川上から流れて来た小さ子(異常誕生の子)で、糊をなめて切られたのは舌ではなくて尾羽であった>という青森県での伝承も見逃せません。というのも、現在では「舌切雀」の最も古い型は、「腰折雀」よりもむしろこちらであるというのが通説になっているからです。
 発生の問題はともかくも、雀の舌を切るという残酷な行為と、大きい葛籠のほうが多くの宝物が入っているだろうと想像する欲張りな人間の期待を裏切る皮肉な結末。この二つの要素が取り入れられたのは、この話をより印象深いものにするのに効果的だったからです。もし、この二つの要素が取り入れられなくとも、この話が生まれた時代には、正直者は元来神様の恵みを受けることが約束されているという思想があったのですから――。
 ともあれ、「舌切雀」は、動物愛護の心や、むやみに物羨みしてはいけないなど、現代のわたしたちにも忘れてはならない教訓も含んでいるようです。

(白川千鶴子)

ぶん:しらかわ ちづこ
え:かじ ひでやす
画材:クレヨン・透明水彩
編集プロデュース:酒井義夫

 
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