むかし あるところに、ひこいちと いう とんちの うまい こどもがいました。
あるひのこと。
ひこいちが むらはずれに さしかかると、ちゃみせの まえで、おおぜいの ひとが さわいでいます。
みると、みちの まんなかに、おおきないわが ころがっているのです。
ゆうべの あめで やまが くずれ、ころがりおちてきたのでしょう。
「よいしょ!」
「よいしょ!」
いわを どかそうと、みんなは けんめいに おしています。
けれども、いわは びくとも うごきません。
「こまったなあ……。」
「どうしたら よいだろう……。」
みんなは、ためいきを つきました。
ちょうど そこへ、みるからに つよそうな さむらいが とおりかかり、
「わしが はこんでやろうか?」
と いうのです。
「それは ほんとうですか?」
みんなは、うれしそうに いいました。
「ほんとうさ。わしは、二十にんまえの ちからもちだからのう。
だが、いまは はらぺこなんじゃ。
いわを はこんでやる かわりに、はらいっぱい めしを くわせてくれ。」
「そんな ことなら、おやすい ごようです。」
みんなは、さむらいを ちゃみせに つれてゆきました。
ごはんを たべおわった さむらいは、いわの まえに しゃがんで いいました。
「さあ、いわを せなかに のせてくれ。」
「そんな むちゃな!」
「なにが むちゃなものか。
わしは、いわを はこんでやると いったのだ。
せなかに のせられないのなら、はこぶのは やめだ。わっはっはっは……。」
ひどい さむらいです。
はじめから、ただで ごはんを たべるつもりだったのです。
みんなが こまっていると、いままで だまって この ようすを みていた、ひこいちが いいました。
「みなさん、ちょっと おてつだいしてください。」
ひこいちの ごうれいで、みんなは いわのまえに、おおきな あなを ほりました。
「さあ おさむらいさん、あなの なかに おりてください。
せなかに、いわを のせますから。」
ひこいちが いいました。
おどろいたのは さむらいです。
「ま、まってくれ! この いわを のせられたら、わしは ぺちゃんこじゃ!」
さむらいは、あおくなって あやまりました。
ひこいちは、わらいながら いいました。
「この あなに、いわを おとしましょう。
うえから つちを かぶせれば、みちは もとどおりに なりますよ。」
「なるほど、さすがは とんちひこいちだ。」
みんなは、すっかり かんしんしました。