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ルター(1483−1546)

ルター(1483−1546)16世紀の初め、ローマ教会は、キリスト教の信仰を形だけのものにして、思いのままに権力をふるっていました。マルチン・ルターは、心の底からキリストを信じるすがたこそ正しいとうったえ、宗教改革をおこした人です。

ルターは、中部ドイツのアイスレーベンに生まれました。きびしい父のすすめにしたがい、大学で好きでもない法律の勉強をしていました。しかし、いつでも人生をどう生きるか考えて、心の苦しみが増していくばかりでした。自分は何をすべきなのか迷いつづけていたある日、町を歩いていたルターは、突然の雷雨に出会い、死の恐怖におののきました。そしてのこりの人生は、神のために費やそうと決心したのです。

突然の決意に、父親やまわりの友人は驚き、必死にルターをとめました。どなりつけたり、静かに説得したり、あらゆる方法でルターの心を動かそうとしました。しかし、まったく通じません。

とうとう修道院に入ってしまったルターは、心の平安を求めて、苦しい修行の毎日を送ります。徹夜で神に祈り、断食をくりかえし、きびしい生活でした。でも、満足な結果は少しも得られません。それどころか、これまでの修行は、自分のために神を利用する、いつわりの信仰だったのだと悩み、絶望してしまいました。ルターは、もう二度と立ち上がれないほどの、どん底の悲しみに落ちこんでしまったのです。

まっ暗やみの中からひとすじの光明をみいだす時がきました。

「わたしが神を選んだのではなく、神がわたしを選ぶのだ」

ルターは、自分のつごうのよい時だけ神を信じるという考えを恥じました。そして、人は神の深い愛を信じ、すべてをゆだねなくてはならないという結論に初めて満足しました。

そのころローマ教会は、寺院を建てるお金を作るために、免罪符の販売を始めました。免罪符を買えばいままでの罪はすべて許されるというのです。宗教を金もうけの道具にしているのをみてルターは嘆きました。ローマ教会は、国王も頭が上がらないほどの権威をもっていましたが、ルターはためらわずに、まちがいを批判しました。たった一人で反対意見をさけびつづけるのは、たいへんなことです。しかし、ルターが真剣に道を求めるすがたは、人びとの心をとらえずにはおきません。しだいにルターの声に耳を傾ける人がおおくなり、歴史的な宗教改革となりました。伝統的にうけつがれてきたキリスト教を旧教とよぶのに対して、ルターの改革した流れを新教とよびます。


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