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セルンバンテス(1547-1616)

セルンバンテス(1547-1616)騎士道物語を読みふけっていたドン・キホーテは、いつしか自分が物語の主人公になってしまいました。よろいかぶとに身をかため、やりを持ち、よぼよぼのやせ馬にまたがって、武者修業にでかけました。けらいは、ロバにのった小作人のサンチョ・パンサです。ある農家の風車を、巨大な怪物と思いこんだキホーテは、やりをかざして、もうぜんと風車におそいかかっていきました。

セルバンテスの小説『ドン・キホーテ』です。17世紀はじめのスペインの小説家セルバンテスは、当時流行の騎士道物語とは、ちがったかたちの読物を書こうとしました。『ドン・キホーテ』では、こっけいな英雄気どりの騎士を登場させ、ユーモアあふれる話のなかで、世の中のむじゅんをするどく風刺しています。なにをやってもうまくゆかないドン・キホーテのように、セルバンテスの人生も、なかなか芽がでませんでした。

セルバンテスは、1547年にスペインの首都マドリードに近いアルカラ・デ・エナーレスに生まれました。父は町医者でしたが暮らしは貧しく、あちこちにうつり住みました。セルバンテスは学校にもあまり通えませんでした。23歳のときにイタリアへわたり、軍隊にはいりました。1571年のレパント海戦にくわわって、セルバンテスは負傷し、一生左手がつかえなくなってしまいます。それでも、地中海の各地でいさましく戦い、スペイン海軍の司令官から表彰されたりしました。しかし、スペインに帰るとちゅう、海賊につかまってしまい、アフリカのアルジェリアで5年間も奴れい生活をつづけました。

1580年、ようやくマドリードへもどってきました。それからは、なにをやってもうまくいきません。田園小説『ラ・ガラテア』や、戯曲『ヌマンシア』などを発表しましたが、これも、評判は良くありませんでした。セルバンテスはしかたなく、アンダルシアへいって食糧を集める役人になりました。ところが、銀行が破産したりして、ろう屋にいれられるようなしまつです。

ほかの地へ、またほかの地へ、といったふうに10年ちかくも歩きまわったあげく、ふたたびマドリードにもどってきました。1604年、びんぼうのどん底でなかばやけっぱちで書きあげたのが『才知あふれる郷士ドン・キホーテ・デ・マンチャ』でした。これが、セルバンテス自身もびっくりするほど人気を集めました。1615年には、続編も出版しました。のちに、人間をえがいた近代小説のはじまりと評された本です。しかし、セルバンテスの生活は最後まで楽にはなりませんでした。


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