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カント(1724ー1804)

カント(1724ー1804)18世紀後半のドイツ哲学は、考え方が固定され、独断主義とよばれていました。人間にそなわっている知性や能力を批判したり、疑ったりせず、そのままの純粋な思考だけで真理を発見できるという考え方です。カントは、その古い思想をのりこえ、批判哲学という哲学体系を確立して、精神面を重視したドイツ観念論の代表的思想家となりました。

イマヌエル・カントは、毎日聖書を読む、静かな家庭に育ちました。信仰の厚い両親のもとで、つつしみ深い生活をおくり、寛容と道徳を身につけました。やがて、青年になると地元のケーニヒスブルク大学に進み、哲学を学びますが、数学や物理学などにも熱心にとりくみ、成果をあげました。カントが最初に書いた論文は『活力の真の測定についての考察』という物理学の研究です。卒業ご、数年間は家庭教師をして、生活していきました。しばらくすると、母校ケーニヒスブルク大学に講師として招かれました。数学、科学などの問題を講義して、15年めに教授へ昇進しました。カントは、こつこつときまじめに勤めつづけ、学長に選ばれたこともありました。

毎日規則的な生活を送り、朝は必ず5時に起床し、夜10時には床に入りました。1日の生活は、すべて計画にしたがって行動しました。散歩の時間まで時計のように正確に決めて、自分自身にきびしく義務づけました。

カントは、教授になってから10年あまりは、特に大きな活やくをしませんでした。でも、57歳になると『純粋理性批判』という論文を出版して、批判哲学の基礎をつくり、つづけて『実践理性批判』『判断力批判』を発表しました。カントの名は学問の世界に知れわたり、確かな地位を得ました。

そのころのヨーロッパの思想は、理性によって物の本質をとらえようとする合理主義と、経験によってみきわめようとする経験論と、2つの流れがありました。カントは、冷静に考え、理性でも、経験でもわりきれない精神的な世界があり、それが、道徳や宗教につながっていることを説きました。そして、科学と道徳、あるいは物と心をむすびつけるのは、判断力である、というふうにまとめました。カントの考えかたには、当時のヨーロッパにひろがっていた啓蒙主義の思想も、強くはたらいています。

カントは、一生だれとも結婚しませんでした。弱い体で80歳まで生きたのは、質素で、規則正しい生活をおくったからでしょう。


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