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(13)

パブロフ(1849-1936)

「犬は、えさを見ると、よだれをだす。ところが、えさをあたえるたびにベルを鳴らすのをくり返すと、やがて犬は、ベルの音を聞いただけで、よだれを流すようになる」

これは条件反射という、動物の脳のはたらきを示す実験です。

1849年、ロシアのリャザンという古い町で生まれたイワン・パブロフは、この条件反射を発見した、ソ連の生理学者です。

神父を父にもったパブロフは、父のあとをつぐために、少年時代は神学校で学びました。しかし、しだいに生理学がすきになり、20歳のときにはペテルブルク大学へ進んで、消化器や神経の研究にとりくむようになりました。

「食べものと胃と神経の関係はどうなっているのだろうか」

大学を卒業して医学博士の学位をとったパブロフは、犬を使って実験を始めました。それまでは、動物実験というと、かいぼうや大がかりな手術がつきものでした。でもパブロフは、犬を苦しませないで実験する方法をくふうしました。正しい観察をするためには、犬を、できるだけ自然のすがたのままにして調べることがたいせつだ、と信じていたからです。

まず、腹部の小さなあなから胃液が流れでるようにした実験で、食べものを消化する胃液のでかたは、あたえられた食べものによってちがうことや、脳や神経のはたらきと結びついていることを、明らかにしました。また、口の中のだ液が、ほおから外に流れでるようにした実験では、だ液も脳のはたらきとつながりがあることを、つきとめました。

こうして、およそ30年もの長い年月と、気の遠くなるような数かずの実験から、条件反射は発見されたのです。

「いったい、条件反射はどうしておこるのだろうか」

さらに実験をつづけたパブロフは、ついに条件反射が大脳のはたらきでおこることを発見して、それまでわからなかった大脳のしくみも、はっきりつきとめました。

犬の実験で発見された条件反射が、そのまま人間にもあてはめることができました。パブロフが生涯をかけて、人間のからだと心の関係をみきわめようとした努力が、大きくみのったのです。

1904年、パブロフはロシアの科学者としては初めて、ノーベル医学賞を受賞しました。「わたしが発見したのは、ひとかたまりの土くれです」と語っていたということです。年をとってからも「観察、そして観察」という大すきな言葉を実行して、86歳で亡くなるまで、研究をおこたりませんでした。


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