オンラインブック せかい伝記図書館
足利尊氏


足利尊氏
(1305-1358)
北条氏をたおし、天皇にそむき、戦いに明け暮れて室町幕府をきずきあげた関東の武将。

「足利尊氏」読書の手びき

足利尊氏は、戦前の歴史教育のなかでは逆臣としてあつかわれてきました。そして、湊川の戦いで尊氏に敗れた楠木正成は、忠臣の見本としてたたえられてきました。尊氏は天皇にそむき、正成は天皇に忠誠をつくしたからです。しかし、現代の評価はちがいます。天皇中心につくりあげられていた史観が崩壊してしまったからです。このことは、歴史は、為政者によって作為が加えられることがあることを物語るものです。だから、歴史も歴史上の人物も、表面だけでとらえることは、つつしまなければいけません。尊氏は、たしかに、天皇に矢を向けました。でも、天皇個人をにくんだのではありません。貴族に頭をさげるのをこばんで、自分の力で新しい武家政権をうちたてたかっただけのことです。鎌倉幕府にしても、室町幕府にしても、江戸幕府にしても、幕府誕生の根源を明確におさえない限り、その時代の武将を正しく評価することは、むずかしいのではないでしょうか。

文:有吉忠行
絵:木村正志
編集プロデュース:酒井義夫

 
すすむ