天然痘は、ペストやコレラと同じように、昔からたいへん恐れられてきた伝染病です。人から人へ伝染する力が強く、1度伝染すると、おおくの人たちが、高い熱がつづいたあげく死んでいきました。たとえ命をとりとめても、顔じゅうに、まるで噴火口のようなあばたが残りました。
この天然痘の恐ろしさから人類を救ったのが、エドワード・ジェンナーです。
ジェンナーは、18世紀の半ばに、イギリスのグロスターシャ州で生まれました。父は、牧師でしたが、ジェンナーが5歳のときに亡くなり、少年時代は、父のあとを継いだ兄に育てられました。
幼いころから、ジェンナーは、鳥や花がたいへん好きでした。ひまさえあれば野山へでかけて、美しい自然の中ですごしました。年がたつにつれて、物を、落ちついて、しっかり観察する習慣を身につけ、どんな草花でも、すぐ種類を見わけました。遠くでさえずる鳥の声を聞いただけで、その名をまちがいなく言いあてました。
やさしいだけでなく、自分でなっとくのいくまで確かめてみないと、気のすまない性格でした。
ある冬の日、ジェンナーは野原へ出て、スコップで土を掘り始めました。
「寒くなってくるとツバメがすがたを消すのは、土の中や木の穴にもぐって冬眠するからだよ」
まえの日の夜、兄に、こう教えられたからです。渡り鳥の研究が進んでいませんでしたので、ツバメはほんとうに冬眠すると信じられていました。ところが、いくら掘っても、ツバメは見つかりません。何日つづけても、出てくるのはカエルばかりです。
「おかしいぞ、ツバメはほんとうに冬眠するのかなあ」
この疑問を、ジェンナーは、晩年に渡り鳥の本を著すまでいだきつづけました。
