いたずら好きのトムが、宿なしハックとくりひろげる冒険のかずかずをおもしろおかしく描いた『トム・ソーヤーの冒険』。ハックが、川の中の小さな島で原始人のような生活を楽しみ、白人からのがれてきた黒人どれいをすくいだす『ハックルベリ・フィンの冒険』。世界の子どもたちにしたしまれている、このふたつの名作を書いたマーク・トウェーンの本名は、サミュエル・ラングホーン・クレメンズです。25歳ころまでは、サムという名でよばれていました。
サムは、1835年に、アメリカ合衆国ミズーリ州の小さな村フロリダで生まれました。父は、しょうじきで、げんかくな法律家でした。母は、心のやさしい人でした。腹をすかしたネコがやってくれば、どんなにきたなくても家の中に入れてやるほど、小さな動物にまで、愛をそそぎました。
サムが4歳のとき、家族は、ミシシッピ川のほとりのハンニバルという町へひっ越しました。
ミシシッピ川は、アメリカでいちばん大きな川です。サムは、この川や、川に浮かぶ緑の島のほか、町じゅうのあき地や丘をあそび場にして、楽しい毎日をすごしました。家の中でおとなしくしていることなど、まったくありませんでした。
わんぱくで、いたずらなサムは、小さなヘビやコウモリを、母の針ばこにそっと入れておくようなことをしては、いつも、しかられました。
とくいなあそびは、木の刀をふりかざし、はだしでミシシッピ川の島にのりこむ海賊ごっこでした。板をつなぎ合わせ、ぼろぼろの帆を立てた小さな舟は、宝をつんだ海賊船のつもり。まっ黒に日やけしたサムとなかまは、片目に黒い眼帯をしたひげもじゃの海賊のつもりです。
「おれたちは海賊さまだぁー。宝ものはどこだぁー」
わんぱくこぞうたちは、のどの奥が見えるほど大きな口をあけて、島じゅうをかけまわりました。
こうして、のびのびとした心に育っていったことは、ほんものの宝ものを手に入れるよりも、もっとすばらしいものでした。
ところが、学校でのサムは、勉強するのは苦手で、のろまでした。それに、いたずらをしたり、授業中に教室からぬけだしたりして、そのたびに、先生にむちでぶたれました。でも、たったひとつだけ、だれよりもよくできることがありました。作文です。思いきりあそんだことを、生き生きと書いた作文は、笑いだしたくなるほど楽しくて、みんなを感心させました。
「学校の勉強もたいせつだけど、ぼくには、友だちといろんな空想をしてあそぶほうが、もっとたいせつなんだ」
このように考えていたサムは、ほんとうに、あそびの天才でした。