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中大兄皇子

表紙
中大兄皇子(626-671)
蘇我氏をほろぼし、「大化の改新」を進めて朝廷中心の国家をうちたてた、のちの天智天皇。

「中大兄皇子」読書の手びき

 中大兄皇子は、聖徳太子がきずいたものを受けついで、大化の改新を推進しました。その目標は、官人によって組織された中央集権国家の建設、律令制によってすべての土地と人を天皇が支配する政治体制の確立でした。それは、いわば1つの大きな政治改革であり、歴史的な意義の大きさは、鎌倉幕府の開設および明治維新と並ぶものです。共同体的な古代国家を統一国家への路線にのせたという意味を評価すれば、むしろ、日本史上でも最高の意義をもつものかもしれません。この大化の改新を中心になって進めた中大兄皇子と藤原鎌足の名が歴史に大きく残っているのもとうぜんです。しかし、その評価にあたって頭に入れておかなければいけないことがあります。1つは、この政治改革は、皇子と鎌足だけによってすべて成し遂げられたものではなく、一応の目標完遂までには30年あるいは50年の歳月を要したということです。それは、歴史上の事件は大きな流れの中でとらえねばならないことを教えています。さらに忘れてはならないことは、改革の中核になっている律令制は、中国(唐)の統治の姿を母型にしたものだということです。このことは、聖徳太子の遣隋使以来、あるいはそれ以前から、日本と中国とのかかわりがいかに深かったかを物語っています。ところで、こうして成った大化の改新の起こりや内容について、歴史学者のあいだでは、一方では高く評価しながら、一方では疑義もだされています。真実の歴史を見つめることのむずかしさを考えさせられます。

文:有吉忠行
絵:鮎川 万
編集プロデュース:酒井義夫

 
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