むかし、ギリシアの国スパルタに、ヘレネという美しい王妃がいました。ところが、トロヤの国の王子が、ヘレネをさらってしまいました。
スパルタ国王は、たいへんにおこりました。そして、ギリシアじゅうの兵を集めると1000せきもの船でエーゲ海を渡り、トロヤに攻めこみました。
しかし、大きな城壁に囲まれたトロヤは、ギリシア軍が10年かかって攻めても、打ち破ることができませんでした。そこでギリシア軍は、計略を考えました。
ある日、トロヤの城壁のそとに大きな木馬をおきざりにして、ギリシア軍は、船でひきあげてしまいました。
これを見たトロヤ軍は、戦争はもう終わったのだとよろこびました。そして、ギリシア軍が勝利を神に祈って作ったという、その木馬を城の中にひき入れると、夜は酒もりをして寝てしまいました。
トロヤ軍は、木馬の腹の中にギリシア軍の50人の勇士がひそんでいようとは、夢にも考えませんでした。海のむこうへひきあげたはずのギリシア軍が、こっそりもどってきていることにも、気がつきませんでした。
その夜、トロヤ軍の兵はひとり残らずギリシア兵に殺されてしまいました。また、トロヤの町の宮殿も神殿も、一夜のうちに焼きはらわれてしまいました。
トロヤは、こうして滅んでしまいました。
1822年、ドイツ北部の小さな村で生まれたシュリーマンは、おさないころから、このトロヤ戦争の物語に心をひかれていました。
トロヤ戦争の物語は、ギリシアの詩人ホメロスが書いたと伝えられている話です。しかし、トロヤ戦争はいまから3000年もまえのできごとだといわれ、おおくの人はほんとうにあったことだとは、思ってはいませんでした。
でも、シュリーマンは、このホメロスの物語を、考古学がすきだった牧師の父から何度も聞いているうちに、ただの伝説ではないと考えるようになりました。そして、8歳のときに、火につつまれているトロヤの絵を『子ども世界史』という本で見てからは、トロヤは、いまも土の中にねむっている、と信じるようになりました。

「よし、いつかきっと、トロヤを発掘してみせるぞ」
シュリーマンの心には、いつのまにか、こんな決意がめばえていました。しかし、この発掘の夢は、友だちから笑われるばかりでした。ホメロスの物語に、目を輝かせて耳をかたむけてくれたのは、たったひとり、ミナという女の子だけでした。