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トルストイ

表紙
トルストイ(1828-1910)
貴族でありながら,民衆の貧しい生活に心をいため,善と愛による救済を試みた大文学者。

「トルストイ」読書の手びき

 1904年に日露戦争が起こったとき、76歳のトルストイが『思い直せ』と題する文を書き、両国の国民に戦争の非を説きました。そして、この文は日本でもほん訳され、幸徳秋水や堺利彦らの反戦運動に大きな影響を与えました。トルストイは、社会の悪に対しては敢然と立ち向かいましたが、それはそのまま、自己完成をめざす深い苦悩から発したものに、ほかなりませんでした。トルストイは、つねに、人生の意義や目的や、神の存在や信仰などについて考え苦しみながら生き、その自己の魂の遍歴を、つぎつぎに作品にしていったのです。だから『幼年時代』から『復活』に至る名作の中にえがかれているものは、とりもなおさず大思想家トルストイの、限りない怒りと祈りと懺悔です。「幸福とは他人のために生きることにある」と説くトルストイの思想は、人類は破滅に向かいつつあるといわれる現代に、かけがえのない警鐘を鳴らしつづけています。

文:有吉忠行
絵:江崎やすこ
編集プロデュース:酒井義夫

 
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