ある晴れた日のことです。ひろびろとした農園で、幼い兄弟が、弓矢であそんでいました。はちまきをした頭に鳥の羽根をさして、インディアン気どりで、はしゃいでいます。しかし、兄弟がどんなにいっしょうけんめいねらいをさだめても、矢は的に命中しません。こんなはずはないと、二人は、ぶつぶついいあっていました。すると、そのようすを先ほどからながめていた父親が、ほほえみながら近づいてきました。農作業でふしくれだった大きな手で、弓と矢をつかみ、目の高さまでかかげると、しばらくじっと見つめていました。

「矢が曲がっているぞ。これでは、どんなにねらいうちしても、むだなことだ」
父は枯れ木をひろい集めると、火をたいて矢をあたため、まっすぐにのばしました。
その矢を射ると、みごと命中です。
「おまえたちも、あの矢のようにまっすぐな心を持たなくてはいけない。正しい道を一直線に進みなさい」
父は、二人の頭をなでながら、語りました。
のちに、アメリカ合衆国の独立に力をつくし、初代大統領となったワシントンが、少年だったころの話として、語り伝えられています。
ジョージ・ワシントンは、1732年、当時はまだイギリスの植民地だったアメリカのバージニア州に生まれました。一家は、ワシントンの生まれる80年前にイギリスから移住してきて、大きな農園を経営していました。
ワシントンは、野や山をかけまわる冒険好きな少年でした。毎年春におこなわれる子どもいかだ乗り競争には、いつも参加しました。ある年、いかだが大きなうずに巻きこまれて、転落してしまいました。流れは急です。小さなワシントンは、たちまち、うずの中心に引き寄せられてしまいました。いかだとともに、水の中にかくれて、いつまで待っても、ワシントンは、すがたをあらわしません。とうとう見ていた子どもたちは泣きだし、大人たちの顔もこわばってきました。ところが、そのときワシントンが、突然水の中から顔を出しました。人びとは喜びの声をあげ、手をたたいてワシントンのたくましさをたたえました。