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与謝野晶子

表紙
与謝野晶子(1878−1942)
大たんな表現で、愛と自由をうたいあげた、近代短歌史上随一の情熱の女流歌人。

「与謝野晶子」読書の手びき

 与謝野晶子が活躍したのは、今からおよそ80年まえのことです。しかしその年月を感じさせない程、晶子の生き方は、自由奔放で大胆です。晶子より6つ年上の樋口一葉は「女であれば」しかたがないとあきらめて、母や妹の犠牲になりました。同じ明治の女でありながら、晶子はどうしてこんなにも情熱的になり得たのでしょう。堺町人のなかに、むかし港町として栄え、外国の文化をいち早く受け入れた情熱が脈々と流れ続けていたのでしょうか。熱しやすい乙女時代に、鉄幹と出合ったことも大きな要因にちがいありません。子どものころから、いろんな物語を読み、人間のさまざまな生き方を早くから見知ってしまったということもあります。しかし、何よりも、晶子を晶子たらしめたのは、自分にすなおな偽らざる心の持ち主であったことです。晶子の歌集を成立年代にそって読んでいくと、そのことがよく解ります。ロマンチックな恋に恋する初期、恋の成就により己に酔いしれる壮年期、鉄幹の心がつかめず思い悩む中年期、恋も愛も恨みもすべて濾過され、清涼な心境で自然に相対している晩年。晶子の歌は、ずい分大きく変化しています。それは、いつも自分の心を「野晒しに」してきたからに他なりません。晶子の全歌集は、人間の一生そのものだといえます。長いあいだ縛られ続けてきた女性の感情、感覚を、晶子は身をもって解放すべく実践した最前線の戦士です。

文:浜 祥子
絵:鮎川 万
編集プロデュース:酒井義夫

 
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