オンラインブック 子どもは語学の天才!
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「アメリカ英語」か「イギリス英語」か

 日本の英語教育は「アメリカ英語」なので、「イギリス英語」は役に立たないのではないかといった声を聞くことがあります。
 ご存知の通り、1492年にコロンブスが、ヨーロッパ人としてはじめてアメリカ大陸を発見しました。そして、宗教の考え方の違いからイギリスで迫害された清教徒たちが、メイフラワー号でボストン近くに上陸したのは、1620年のことです。これをきっかけにイギリス人は開拓を行ない、植民地を広げていきました。その後、イギリスが新しい植民地アメリカから重税を取りたてたために、アメリカの人々はワシントンを総司令官に、イギリスからの独立戦争をはじめました。1776年についに独立、1789年には、ワシントンが初代大統領に就任しました。
 このように、アメリカの歴史はそれほど古くありません。したがってアメリカ英語とイギリス英語を比べた場合、一部の単語や表現に違いがあるだけで、文のしくみにはほとんど差がありません。

ビスケット エレベーター 地下鉄 郵便
(英語) autamn biscuit lift underground shop post
(米語) fall cracker elevator subway store mail

 上智大学外国語学部教授の菅原勉氏は、音声学やフォニックス研究の権威として著名な方ですが、次のように明言しています。
 「イギリス英語(ブリティッシュ)では学習に役立たないという人がいるが、とんでもない間違いだ。英語と米語では発音の違いはあるが、東京弁と大阪弁ほどの違いもない。世界的に見ても、フランスやドイツなどヨーロッパ諸国、オーストラリアやニュージーランドなど英国の植民地だった国々を含めて、英語圏の大多数がブリティッシュを使っている。英語を深く学んでいけば、歴史のあるブリティッシュを勉強することになる」
 また英国は、世界でいちばん早く子どものための文学ができた国です。「ジャックと豆の木」「3匹のこぶた」などの語りつがれた昔話をはじめ、「ロビンソン・クルーソー」(デフォー)、「ガリバー旅行記」(スウィフト)、「オリバーツイスト」「クリスマスキャロル」(ディケンズ)など、一流の作家たちが子どものために優れた文学作品を創作してきました。さらに、「ふしぎの国のアリス」(キャロル)、「フランダースの犬」(ウィーダ)、「黒馬物語」(シュウエル)、「宝島」(スチーブンスン)、「幸福の王子」(ワイルド)、「ジャングルブック」(キプリング)、「ピーターパン」(バリー)、「シェークスピア物語」(ラム)、「シャーロックホームズの冒険」(ドイル)など、世界的な名作は枚挙にいとまがないほどです。「ピーターラビット」(ポター)や、「くまのプーさん」(ミルン)、「きかんしゃトーマス」(オードリー父子)は、50年以上も前の作品でありながら、いまもなお世界中の子どもたちに愛されつづけています。近年大ヒットとなった「ハリーポッター」(ローリング)も、そんな伝統の中から産み出された作品です。
 このような優れた子ども文化を育んできたお国がらか、イギリスの国語(英語)教育の研究も、非常にすすんでいます。特に、100年の歴史をほこる英国最大の児童出版社、「レディーバード」の刊行物は、注目に値します。上に挙げたような代表的作品の多くを、原作・原話の味わいを残しつつ、最も洗練された英語といわれるBBC放送のアクターたちが朗読したテープを付けて出版したシリーズなど、そのスケールとこだわりには感心させられます。
 そのほか、家庭で楽しく学べる『フォニックス英語教室』や、『フォニックスであそぼう!』、「マザーグース」の絵本と対応させた音声教材など、レディバードにはお勧めしたいシリーズがたくさんあります。
 さらに、世界中の文庫や新書本のお手本となった、ペーパーバックス叢書「ペンギンブックス」は、英語を深く勉強する人たちには欠かせないシリーズですし、同社の刊行する児童書シリーズ「パフィンブックス」は、定評ある絵本のペーパーバックス版をはじめ、代表的な児童文学がすべて原作で読めるシリーズとして有名です。 
 たしかに、日本の英語教育にはアメリカ英語が使われています。しかし、街を歩けば「○○ショップ」と書かれた看板も、「△△ストア」と書かれた看板も、どちらも目にしますし、ポストもメールも、同じように私たちの生活に溶け込んでいます。「アメリカ英語」、「イギリス英語」に、あまりこだわる必要はありません。


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