オンラインブック かしこい子どもに育てるための15章
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第2部 絵本のすすめ

(13)良い絵本のえらびかた

イラスト 文芸学者の西郷竹彦氏は、数年間にわたる幼児指導や、可能なかぎりの絵本を研究し、その成果を「お話と絵本の相談室」という本にまとめています。親が、子どもに絵本を与える時の的確なアドバイスに満ちていますので、その一部を紹介してみましょう。

「人間の病気を診断するのには、専門的な知識をもった医者でなければわかりませんが、絵本の診断は専門家でなくてもできる。そこがおもしろいところなんです。なんとなく甘っちょろいだとか、絵のキツネもクマもウサギもまるまっちくてかわいいぬいぐるみ式の個性のない、社会性もない類型的な絵だとかいうことは、見さえすればわかります。好きな絵本というだけで選ばないで、さまざまなジャンル、さまざまなスタイルの絵を、つまり、さまざまな形象の世界と多面的に出合わせてやることがのぞましいと思います」

 自分の眼で確かめて選ぶことの大切さを述べ、さらに、たとえ自分の好みに合わなくても客観的にみて良い本を選ぶこと、さまざまなジャンル、さまざまなテーマのものを幅広く与えて、わが子の読書体系をつくりあげるというような大きな目標をもつことをあげています。

それは、つぎのような理由からです。

「子どもの興味本意に読書指導していくと、必ずといってよいほど読書傾向がかたよってきますね。これは、たいへん困った問題だと思うのです。子どもには、まだ自分の知らない世界があるわけです。自分の知らない世界を食わずぎらいで、そこにおもしろいものがあるということに気がつかないでいるわけです。気づかないからまたそこを見ようとしないわけですね。ですから、君の知らないこういう世界があるんだよ、こういう世界に、君らが今まで知っているおもしろさとは違ったおもしろさがあるんだよということを教師の側から手引きしなければいけませんね」

 お母さんは、幼児にとっての最良の教師です。子どもの能力、感覚、思考、感情が豊かに多面的に発達するかどうかは、まさにお母さんの手にゆだねられているといってもよいでしょう。

 もうひとつ、絵本のさし絵の効用と、その価値についてふれてみましよう。

 ものがたり絵本について特にいえることですが、幼児にとって、お話を聞くだけでは細かいところの理解がどこか不足です。経験も浅く、想像力も充分発達していないので、物語の世界を視覚化することはかなりむずかしい作業だといってよいでしょう。そこにさし絵が必要になってくるわけで、目に見えない言葉の世界を、想像力をフルに働かせてみえる世界につくりかえる手助けをするわけです。そして、自分でつくりあげたイメージの世界を登場人物といっしょに歩こうとします。

 そんな意味からも、幼児に与える絵本はなるべくさし絵の多い、色彩の豊かなものがのぞましいといえましょう。わたしたち大人は、いまでも子どものころに見たり開いたりした絵本や、物語、映画、音楽などをふしぎに生き生きと思い出すことができるでしょう。それはおそらく、大人になってからはめったに出合うことのない、第一級の感動だったからに他なりません。

 夢のある物語の世界を親子で楽しむことは、とてもすてきなことです。手にとるたびにいつもよろこびを感じるような、そんな絵本にたくさん出合わせてやりたいものです。


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