レディバードブックス100点セット
 

 

親指姫

昔、かわいい女の子をとてもとてもほしがっている、女の人がいました。
彼女は魔法使いのおばあさんのところへ行って言いました 「私はかわいい女の子、小さなかわいい女の子がとてもほしいのです」

 おばあさんは彼女に、1つぶの大麦の種をあたえました。
「これは畑に植えるのと同じ種類の種ではありませんよ」 と、彼女は言いました。「これはめんどりにあたえるのと同じ種類の種でもありません。これを家に持ち帰って、鉢に植えなさい」

 そこで女の人はそれを家に持ち帰り、鉢に植えました。やがてそれは大きくなって、赤や黄色の、チューリップのような美しい花になりました。
花のまん中には、小さな女の子がすわっていました。彼女はたいへんちっちゃくて、親指の半分くらいしかありませんでした。女の人は、彼女をおやゆびひめと呼びました。

 おやゆびひめは、くるみの殻の半分をベッドにしました。彼女はすみれの花びらを敷きぶとんにし、ばらの花びらをかけぶとんにしました。日中、彼女はテーブルの上で遊び、甘いかわいい声で楽しい歌をうたいました。

 ある夜、1ぴきのみにくい年とったひきがえるがぴょんぴょんやってきました。彼女は、くるみのベッドの中で眠っている、おやゆびひめを見るために立ちどまりました。

 「私の息子にとって、彼女はなんときれいなお嫁さんになることだろう」
と、ひきがえるはひとりことを言いました。いそいで彼女は、おやゆびひめの入っているベッドを拾いあげ、ぴょんぴょんとび去りました。

 ひきがえるはベッドを小川におろし、それをすいれんの葉の上に置きました。

 川岸から遠く離れていたので、おやゆびひめは逃げることができませんでした。

 あくる日、ひきがえるは息子を連れてもどってきました。おやゆびひめは少しも彼と結婚したいとは思いませんでした。彼は母親とちょうど同じくらいみにくかったのです。

 ひきがえるの親子は、かわいいくるみの殻のベッドを沼地の自分たちの家にもって帰りました。彼らは家の中をかたづける間、おやゆびひめをすいれんの葉の上に置いておきました。

 小川の中で泳いでいる魚たちは、ひきがえるの息子がもらおうとしている新しい妻のことについて、ひきがえるが話しているのを聞きました。魚たちはおやゆびひめを見るために泳いで葉っぱに近づきました。彼らは彼女を見るとすぐに、みにくいひきがえると結婚して沼地で彼の母親といっしょに住むには、彼女は美しすぎると知りました。彼女を助けるには、たったひとつの方法しかありませんでした。彼らは葉っぱの下のくきにかみつき、とうとうそれをかみ切ってしまいました。

 それから、葉っぱは流れにのってただよい、おやゆびひめもまた流れていきました。彼女はひきがえると、ひきがえるの息子から流れ去りました。
彼女は日の光の中を小川をくだっていきました。ちょうちょが彼女のまわりを舞い、おやゆびひめはまた楽しくなりました。

 突然、こがねむしがとんできて、おやゆびひめを拾いあげました。彼は葉っぱから、また、ちょうちょから彼女を連れ去り、1本の木の中へと運びました。

 「彼女はなんてきれいなのだろう」 と、彼は言いました。
しかし、他のすべてのこがねむしが言いました。
「ふん、足が2本しかないじゃないか。なんて彼女はみにくいのだろう」
「ふん、触角もないじゃないか。なんて彼女はみにくいのだろう」
「ふん、腹も細いじゃないか、なんて彼女はみにくいのだろう」
そこでこがねむしは言いました 「ふん、なんて彼女はみにくいのだろう」

 それから彼は彼女を拾いあげて、地面にとびおりました。彼は彼女をひなぎくの上に置き去りにしました。
おやゆびひめは自分で、草から小さなベッドを作りました。夏じゅう、彼女は森の中でたったひとりで暮しました。

 彼女は葉っぱから露を飲み、花から蜜を食べました。彼女は鳥たちに耳をかたむけ、ひとりで歌をうたいました。

 冬がやってくると、雪が降りはじめました。かわいそうに、おやゆびひめはたいへん寒くなりました。彼女には食べるものが何も見つかりませんでした。彼女はとても空腹でした。彼女は野ねずみの住む穴にやってきました。
「おおどうか、私に食べものをくださいませんか」 と、彼女は叫びました。
野ねずみは、かわいいおやゆびひめをとてもかわいそうに思いました。彼女はおやゆびひめを中に招き入れ、彼女に食べものをあたえました。

 「よければ、私のすてきな暖かい部屋で、いっしょに住んでもいいんだよ」 と、彼女は言いました。「私のために部屋をきれいにしておくれ」
そこで、おやゆびひめは野ねずみといっしょに住み、彼女の部屋をそうじし、自分の身の上話をし、歌をうたいました。

 「もしおまえがもぐらさんと結婚すれば」 ある日、野ねずみが言いました、「おまえは私の家よりも大きい家に住めるんだよ。彼が来たら、おまえは一番いい話をし、一番いい歌を歌わなくちゃいけないよ」
しかし、おやゆびひめはもぐらが好きでもなく、彼と結婚したいとも思いませんでした。

 ある日、もぐらは野ねずみが住んでいる穴まで新しいトンネルを掘りました。

 「もしよければ、私のトンネルの中を歩いてもいいですよ」 と、もぐらはおやゆびひめに言いました 「しかし注意してくださいよ。トンネルの中に死んだ鳥がいますから」

 おやゆびひめは、鳥がかわいそうになりました。

 「彼はつばめさんなのね、たぶん去年の夏には、彼は私のために歌ってくれたんだわ」 と、彼女はひとりごとを言いました。「彼をすっかりくるんであげましょう」

 彼をくるんであげるとき、彼女は彼の心臓がまだ動いているのに気づきました。つばめは死んではいなかったのです。彼はまだ生きてはいましたが、弱りきっていました。

 冬の間じゅう、おやゆびひめはつばめの世話をしました。春になると、彼は再び元気になりました。おやゆびひめは天井に穴を開け、彼は飛びだしていきました。

 「さようなら、さようなら」 と、彼は言って、飛び去りました。
「さようなら、さようなら」 と、おやゆびひめは叫びました。

 「夏の終りには、おまえはもぐらさんと結婚しなければいけないよ」 と、野ねずみは言いました。「おまえはまず、きれいな新しい服を作らなくちゃいけない」

 とうとう、夏が終りました。新しい服もできました。

 おやゆびひめは日の光にさようならを言うために、野ねずみの穴の戸口に立ちました。もぐらの家は地下にありました。もぐらは太陽を見たことがありませんでした。

 「さようなら、お日さま」 と、彼女は悲しく叫びました。
彼女は、つばめが空を飛んでいるのを見ました。
「さようなら、つばめさん」 と、彼女は叫びました。

 1羽のつばめが、彼女のところにおりてきました。それは彼女が世話をしたつばめでした。
「もうすぐまた寒くなるでしょう」 と、彼は言いました。「私は暖かい国へ飛んでいくところです。私の背中に乗って、いっしょにいらっしゃい」

 そこで、おやゆびひめはつばめの背中に乗り、彼らは飛び去りました。
何マイルも、何マイルも、何マイルも彼らは飛び、とうとう暖かい国に着きました。
「さあ着きました」 と、つばめは叫び、おやゆびひめをおろしました。

 彼女のまわりじゅうに美しい花があり、それぞれの花の中には、ちょうど彼女と同じくらいちっちゃなかわいい男と女がいました。彼らは彼女をおやゆびひめと呼びませんでした。彼らは彼女をメイア(女神)と呼び、しかも、彼女が花の国民の小さな王子様と結婚したときには、彼らもみんな、彼女と同じように幸せでした。


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