レディバードブックス100点セット
 

 

ブレーメンの音楽隊

ドイツにブレーメンと呼ばれる大きな町があります。ブレーメンからそう遠くないところに小さな村があります。昔むかし、この村にろばを飼っている男が住んでいました。

ろばは何年もの間、一所懸命に働いてきました。日魔日を除いて毎日、彼は小麦粉にひくための、重い小麦の袋を粉ひき場に運びました。しかし、ろばは年をとるにつれて、小麦の袋が彼には重すぎるようになりました。
それで男は、なぜ自分のために働ける強さをもたなくなったろばに、えさをやり続けなければならないのかと思いはじめました。

 ろばは、男が何を考えているのかわかり、そのため彼は逃げる決心をしました。
彼は音楽が好きでしたので、音楽家になりたいと思いました。彼は、ブレーメンのような大きな町には、町の音楽隊があるだろうと確信しました。
彼は音楽隊の楽士になれば、たぶん生活費を稼げるだろうと思いました。そこで、彼はブレーメンへの道を進んでいきました。

 まもなく、ろばは犬が道ばたにねそべっているのを見ました。犬は疲れているようにみえました。彼は、まるでレースを走った後のようにあえいでねそべっていました。
「おいおい、年とった犬さん、どうしたんだい」 と、ろばはたずねました。
「ああ」 と、犬は答えました。「私は年をとりすぎて狩りができなくなってしまった。主人は私を殺そうともくろんでいるんで、私は逃げだしてきたんだ。しかし、どうやって生活費を稼いでいいのかわからない」

 「それでは私の仲間にならないかね」 と、ろばはたずねました。「私も主人から逃げてきたんだ。私も年をとりすぎて、まもなく小麦を運べなくなるんで、主人はもはや私を飼いたくないんだ。私は町の楽士になるためにブレーメンの町に行こうと思っている。それでは私といっしょに来ないか。
私はリュート(ギターに似た弦楽器)を弾き、あなたはドラムを演奏すればいい」 犬は同意して、2人はブレーメンへの道を進んでいきました。

 まもなく、ろばと犬は猫に会いました。彼女は道ばたにすわり、ひどく陰気な (3日間も雨が降りつづくような面白くない) 顔をしていました。
「おいおい、年とったおひげさん。どうしたのですかな」 と、ろばはたずねました。

 「ああ」 と、猫は答えました。「今や、私は年をとり、歯がするどくなくなって、ねずみを捕るのも容易ではないの。実際、ねずみを捕るよりは暖房器の前でねそべっていたいわ。私がもはやねずみを捕ることができないので、女主人は私を溺れさせようと考えているの。それで私は逃げだしてきたのよ。でも、私は生活費をどうやって稼げばいいかわからないの」

 「それでは私たちの仲間にならないかね」 と、ろばはたずねました。「私たちは両方とも主人から逃げだしてきたんだ。私たちは町の楽士になるためにブレーメンに行こうと計画している。あなたは夜歌うことになれているにちがいない。それでは私たちといっしょに行かないか」
猫は同意して、彼ら3人はブレーメンへの道を進んでいきました。

 まもなく、3人の旅人は農家の庭にさしかかりました。雄鶏が門の上にとまって、ありったけの声で鳴いていました。
「おいおい、雄鶏さん、どうしたのですか」 と、ろばはたずねました。
「あなたの鳴声はたいへん大きくて、私は耳が聞こえなくなりそうだ」

 「ああ」 と、雄鶏は答えました。「日曜日に、お客を晩さんにまねくことになっている。私の女主人は、チキンスープを出そうとしているから、明日、私は殺されてスープにされてしまう。そこで今、私は生きてそれができる間に、ありったけの声でときをつくっているのだ」

 「くよくよすることはないよ、年とった雄鶏さん」 と、ろばは答えました。
「まだ死ぬ必要はない。それでは私たちの仲間にならないかね。私たちは町の楽士になるためにブレーメンに行こうと計画している。あなたはいい声をしているから、私たちの手助けができるよ。それでは私たちといっしょに来ないか」
雄鶏は同意し、彼ら4人はブレーメンへの道を進んでいきました。

 4人の旅人は、その日のうちにはブレーメンの町に着けなかったので、森の中で一夜を過ごすことに、みんな同意しました。
ろばと犬は、木の下に横になりました。猫は、木の下の方の枝にゆったりとすわりました。雄鶏は、そこが最も安全だと思ったので、木のいちばん上の枝にちゃんと飛びあがりました。
眠りにつく前に、雄鶏はまわりじゅうを見わたしました。はるか遠くに、小さなあかりが見えるように思いました。

 「遠くにあかりが見えるように思うんだ」 と、彼は仲間に呼びかけました。
「そんなに遠くないところに、家があるにちがいないよ」
「もしそうなら」 と、ろばはこたえました。「それをさがしにいこう。ここはあまり居心地がよくないから」

 「肉がついた骨が2、3本あれば文句はないね」 と、犬が言いました。4人の仲間は、その小さなあかりの方へ出発しました。彼らがそれに近づけば近づくほど、そのあかりはますます大きく、またあかるくなりました。

 とうとう彼らは、あかりが窓から流れでている家にやってきました。ろばが一番背が高かったので、彼は窓の中をのぞきこみました。
「何が見えるかね、年とったろばさん」 と、雄鶏がたずねました。
「何が見えるかって」 と、ろばは答えました。「おいしい食べものや飲みものが並んだテーブルと、そのまわりにすわって楽しくやっている泥棒たちが見えるよ」
「私たちがどうにかできるような感じみたいですね」 と、雄鶏が言いました。
「ああ、私たちがあの食べものを手に入れることさえできたらなあ」 と、ろばが言いました。

 それから4人の仲間は、どうやったら泥棒をびっくりさせて追いはらえるかについて話しあいました。とうとう、彼らはひとつの計画をひねりだしました。
ろばは前足のひづめを窓わくにかけました。犬がろばの背中にとび乗りました。猫が大の背中にのぼりました。そして雄鶏が猫の上にとまりました。
彼らはこれらすべてのことを、物音をたてずにやりました。

 それから、ろばがうなずいて合図をし、そして彼らはいっせいに音楽を始めました。
ろばがヒヒーンといななき、犬がワンワンとほえ、猫がニャーオとうなり、雄鶏がありったけの声でときをつくりました。あなたがたも今までにこんなに恐ろしい音を聞いたことはないでしょう。

 同時に、4人の仲間はガラスを割って、窓からとびこみました。それはどんなにすごい音だったでしょう。
びっくりした泥棒たちはとびあがり、森の中へと急いでかけていきました。

 それで、ろば、犬、猫、雄鶏はテーブルのところにすわって、腹いっぱいになるまで食べました。
このすばらしい食事の後に、彼らはあかりを消して、落ち着いて眠りにつきました。

 ろばは中庭のわらの上に横たわりました。犬はドアの後ろに落ち着きました。猫は火のそばにのびのびと寝そべりました。そして雄鶏は天井近くの梁に飛びあがりました。
彼らは長いこと歩いて、たいへん疲れていたので、みんなすぐにぐっすり眠りました。

 一方、泥棒たちは少し離れたところから見張っていました。彼らは家の中のあかりが消えるのを見ました。深夜までには、シーンと静まりかえりました。それで彼らは、なぜみんながあんなにびっくりしたのかと思いはじめました。
「我々は、あんなにびっくり仰天すべきではなかったのだ」 と、泥棒のかしらが言いました。彼はそれから、他の泥棒の1人に、家に行ってよく見てこいと命令しました。

 泥棒は家に忍びよりました。物音ひとつしませんでした。そこで彼は、ろうそくに火をともそうと静かに台所にはいっていきました。
暗闇の中で、ねこの光る目が光っているのが見えました。彼はそれが火の中で光っている石炭だと思いました。そこで、彼は火をつけようと、ろうそくをその方へ突きだしました。

 猫は、目に向かって何かを突きだされるのがきらいでした。彼女はとびあがって、うなり、唾をはきながら、泥棒の顔をひっかきました。
泥棒はびっくり仰天して、裏のドアに突進しました。そこで彼は犬に倒れかかったので、犬はとびあがって彼の足にかみつきました。

 男が足をひきずりながら中庭を横切ったとき、うなりながらろばが彼を存分にけりました。

 このときまでに、雄鶏は騒ぎに目を覚していました。彼はありったけの声でするどく鳴きながら、梁から飛んでおりました。

 泥棒は恐れおののきました。彼は足をひきずりながら、できるだけ速く仲間のところへ戻りました。
「いったい何が起ったのだ」 と、泥棒のかしらがたずねました。

 「なんとまあ」 と、恐れおののいた泥棒がうめきました。「あの家の中には魔女がいます。彼女は私につばをはきかけ、長い爪で顔をひっかきました」

 「それからドアの後ろにはナイフを持った男が立っていました。彼は私の足を刺したんです」
「さらに中庭には大きな黒い怪物がいました。彼は木の棒で私をたたきました」
「屋根の近くには裁判官がいました、彼は『泥棒をここに遅れてこい』と、叫んでいました」
「それで、私はできるだけ速く逃げてきたのです」

 この恐ろしい話をきいた後、泥棒たちは二度と家に近づこうとはしませんでした。
これは4人の仲間には、たいへん都合のよいことでした。彼らは幸せにも、いっしょに住むためにその家に落ち着きました。
彼らはブレーメンの楽士になるために、ブレーメンに行くことはしませんでした。


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