レディバードブックス100点セット
 

 

ガチョウ番の娘

 昔、美しい王女さまがいました。彼女は母である女王さまと、丘の上のお城に住んでいました。
父である王さまは、王女がまだ赤ちゃんのときに死にました。彼女は成長して、遠く離れた国の王子と結婚することになりました。

  ある日、女王が彼女に言いました 「あなたはもう大人になったのだから、私を離れて、あなたの王子さまのもとに行って結婚しなさい」
王女は、お互いにたいへんに愛していましたから、母親のもとを去るのを悲しみました。

 彼女は美しいドレスや立派な宝石をすべてつめこみ、女王は彼女にいくつかすばらしい贈物をしました。
王女がもっとも好んだ贈物は、話のできる白い馬でした。その馬はファラダという名前でした。

 別れの言葉を言うときが来ると、女王は彼女の髪の毛を切りとりました。
彼女はそれを王女に与えて言いました 「これを持っていきなさい、かわいい娘よ。これはあなたの安全を守るお守りです」

 王女は、ドレスの中にそれを注意深くしまいこみました。女王は王女に最後の贈物をくれました。
「ここに金色のカップがあります」 彼女は言いました。「川に着いたら、それで水を飲むことができますよ」

 それから王女は、メイドを連れて長い旅へと出発しました。
彼女たちが丘を越え、森を通って馬で行くうちに、王女はのどがかわいてきました。

 「私のメイド」 と、彼女は言いました 「どうか私の金色のカップをとって、川から水をくんできてくださいな」
「自分でくんでおいで」 と、メイドはいやな声で言いました。「なぜ私があなたから命令されなければならないの」 彼女は王女に嫉妬していたのです。

 王女は騒ぎを起したくありませんでした。そこで、彼女は水にとどくまで川の堤の上にひざまずきました。すると、女王の髪の毛がドレスから落ちて、川下へと流れていきました。
「ああ」 と、王女は言いました。「私はお母さんのくださったお守りをなくしてしまった」

 メイドは喜びました。今やお守りはなくなってしまったので、王女は彼女の手中にありました。
「あなたの立派な服をおぬぎ」 と、彼女は言い 「そしてそれを私によこしなさい。あなたはこの古いほうを着ればいいわ」
かわいそうな王女。今までは彼女に不親切な人は誰もいませんでした。彼女はつつましく、言われたとおりにしました。

 今やメイドは王女の服を着て、ファラダに乗りました。王女はほろを着て、メイドの馬に乗りました。
とうとう彼女たちは王子の城に着きました。
「もしあなたが生きている人間に、自分は本当は誰なのかを言えば」 と、悪いメイドが言いました 「私はあなたを殺すよ。あなたは天に誓って、誰にも言わないと約束をおし」 王女はとても恐くなって、そう約束しました。

 老王と彼の息子の若い王子は、彼女たちを歓迎しようと出てきました。
彼らは2人とも、立派な服を着ているのでメイドが王女だと思いました。
彼らは彼女を宮殿の中に連れていき、一方、本当の王女は寒さの中、外に立っていなければなりませんでした。

 王様が窓から外を眺めると、彼女が見えました。「あのぼろを着たかわいい少女は誰かね」と、彼はメイドにたずねました。
「途中で会ったあわれな乞食ですよ。何か彼女にやらせる仕事はありませんか」 と、メイドはたずねました。
「カードキンを助けて、がちょうの番をすればいい」 と、老王は言いました、彼は彼女をかわいそうに思ったのです。

 「私にも何かしていただきたいわ」 と、メイドは大胆にも言いました。
「それは何だね」 と、王様はたずねました。
「私が乗ってきた馬を殺させてください。馬は途中でたいへんひどい行動をとったのです」と、メイドは言いました。彼女はファラダが話をして、彼女の秘密をあばくことを恐れたのです。

 王様はファラダを連れ去るために召使をやりました。王女は泣きながら彼を追いかけましたが、彼女は話をする馬を助けられませんでした。そこで彼女は、その男に金貨を1枚与え、馬の首を町の門高くにしっかりとくくりつけてくださいと頼みました。そうすれば彼女は、がちょうを野原に連れ出すたびに、彼女の友だちに会うことができるだろうと思ったのです。

 彼女が門を通った最初の朝、彼女は悲しげに馬を見上げて言いました。
 ファラダ、かわいそうなファラダ
 そんなところにかけられて
魔法の馬は答えました。
 そこを通る王女さま、かわいそうな王女さま
 ああ、ああ、もしお母さまが知ったら
 あなたのために、どんなに悲しく思うことでしょう

 カードキンは、がちょうの番をする少年でした。彼は少女たちをいじめ、髪を引っぱったり、つねったりするのが好きでした。
王女は美しく長い金髪を持っていました。彼女はそれをスカーフの下にかくしていました。野原に出ると、彼女はそれをおろしてブラシをしたり、くしをかけたりするのでした。髪は日の光をうけて金のように輝きました。
カードキンは彼女のうしろに忍び寄り、何本かを引き抜こうとしました。

 そこで王女はかわいい歌をうたいはじめました。
 吹けよ、そよ風、吹けよ
 カードキンの帽子を飛ばしておくれ
 1日じゅうそれを追いかけさせて
 それを遠くへ、遠くへ、とばしておくれ

 風はカードキンの帽子を頭から吹きとばしました。彼は野を越え、丘を越えて、それを追いかけなければなりませんでした。彼が戻ってきたとき、王女の髪はスカーフの中に無事に固くしっかり結ばれていました。

 翌日も同じことが起りました。
王女は門を通るとき、馬に話しかけました。
 ファラダ、かわいそうなファラダ
 そんなところにかけられて
馬は答えました。
 そこを通る王女さま、かわいそうな王女さま
 ああ、ああ、もしお母さまが知ったら
 あなたのために、どんなに悲しく思うことでしょう

 彼らが、がちょうを連れて野原に出ると、彼女は金髪を振りほどいてかわいい歌をうたいました。
 吹けよ、そよ風、吹けよ
 カードキンの帽子を飛ばしておくれ
 1日じゅうそれを追いかけさせて
 それを遠くへ、遠くへ、とばしておくれ

 カードキンの帽子はふたたび飛び去りました。彼はそれを追いかけていき、彼が戻ってきたときには、王女の髪はまたしっかり結ばれていました。

 今度は、カードキンはたいへん機嫌を悪くして、王さまにそれについて報告をしにいきました。
「あの新しいがちょう番の少女は馬の首に話しかけます」 と、彼は言いました。「するとそれは答えるのです。それから彼女は私の帽子を吹きとばします。私は彼女が魔女だと思います」

 3日目、王様は何が起るのか見るために、彼らの後をつけようと決めました。
彼はがちょう番の少女が馬に言うのを聞きました。
 ファラダ、かわいそうなファラダ
 そんなところにかけられて
彼は馬が答えるのを聞きました。
 そこを通る王女さま、かわいそうな王女さま
 ああ、ああ、もしお母さまが知ったら
あなたのために、どんなに悲しく思うことでしょう

 それから、王様は茂みのうしろにかくれて、がちょう番の少女が髪にくしをかけるのを見ました。そのような美しい金髪を持てるのは王女だけだと彼にはわかりました。彼女は歌いました。
 吹けよ、そよ風、吹けよ
 カードキンの帽子を飛ばしておくれ
 1日じゅうそれを追いかけさせて
 それを遠くへ、遠くへ、とばしておくれ

 カードキンが帽子を追いかけていくと、王様は茂みのうしろから出てきました。「あなたが誰なのか教えてくれないか」 と、彼は言いました。
「私にはとてもできません」 と、王女はすすり泣きました。「私は天に誓って、生きている人間には言わないと約束したのです。言えば、彼女は私を殺すでしょう」

 王様は、彼女の住いの、貧しげな小屋までついていきました。その中には、木を燃やすための大きな鉄のストーブがありました。
「もしあなたが私に言えないのなら」 と、彼は言いました。「古いストーブにささやきなさい。あれは生きている人間ではありませんよ」

 かわいそうな王女は泣いていました。彼女は自分の悲しみを誰かに話したいと切望していましたが、王女は決して約束を破りたくありませんでした。そこで、彼女はそっと古いストーブに近よりました。

 「私はひとりで友だちもなくここにいます」 と、彼女はささやきました。
「私は王女です、私のメイドが、王子さまといっしょなる私の場所をとってしまったのです。私はぼろを着て、がちょうの世話をしなければなりません。もし母の女王が知ったら、彼女の胸ははりさけるでしょう」
さて、王様は小屋のすぐ外に立っていました。彼は王女の言ったことをすべて、壁の中のストーブのパイプを通して聞くことができました。

 その夜、王様は宮殿で大祝宴を開きました。誰もが招待されました。にせの王女は、若い王子といっしょに長いテーブルの一方の端にすわりました。王様と本当の王女はもう一方の端にすわりました。彼女は金と銀のドレスを着て愛らしく見えました。誰もが、彼女は誰だろうといぶかりました。誰も、メイドさえも、彼女が、がちょう番の少女だとは推測できませんでした。

 みんなが食べ終ると、王様は、主人のふりをしていた1人の召使の話をしました。
「あなたは彼がどう罰せられるべきだと思いますか」 と、彼はにせの王女にたずねました。

 「彼の立派な服をはぎとって、彼を樽の中に入れなさい。2頭の馬にそれを町じゅう引っ張らせなさい。それから彼を町から追い出しなさい」 とメイドは意地悪く笑いながら言いました。
「なんといい考えだろう」 と、王様は言いました。「それをおまえの罰にしよう」

 それで、にせの王女は町から追い出され、彼女の噂をきくことは二度とありませんでした。
誰もみんな本当の王女を見て喜びました。彼女はたいへん美しくてやさしかったのです。若い王子は彼の本当の花嫁と結婚しました、そして彼らは平和と幸福のうちに、いっしょに彼らの王国を治めました。


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