レディバードブックス100点セット
 

 

眠り姫

 昔、1つのことを除いては、たいへん幸福な王さまと女王さまが住んでいました。彼らは2人とも、たいへん子どもをほしがっていましたが、1人もいませんでした。毎日、彼らはお互いに 「ああ、私たちに子どもがおりさえすればなあ!」 と、言っていました.
さて、たまたまある日、女王さまが水を浴びていると、かえるが池から出てきて彼女に話しかけました。かえるは言いました 「あなたの望みは事実となるでしょう。1年もたたないうちに娘が生れます」

 女王さまは喜んで、夫にそのよい知らせを話そうと急ぎました。
1年以内に、かえるの言ったことが起りました。女の赤ちゃんが王さまと女王さまの間に生れ、彼らはたいへん喜びました。赤ちゃんはたいへんにかわいらしくて、赤ちゃんに会いにくる人はみな 「なんて美しい赤ちゃんでしょう」 と、叫ぶのでした。
王さまは赤ちゃんの娘がたいへん自慢で、すばらしい洗礼式の祝宴を準備するよう命令しました。

 王さまは他の国々の王、王妃、王子、王女はもちろん、すべての友人を祝宴に招待しました。
 王さまは善良な妖精に娘の名づけ親になってもらいたいと思いました。
 さて、彼の王国には13人の妖精がいましたが、1人はたいへん年をとっていて、何年もの間、彼女に会った人は誰もいませんでした.王さまは金の皿を12枚しか持っていなかったので、彼はちょうど12人の妖精を洗礼式の祝宴に招待しました。年をとった妖精は招待されませんでした。

 洗礼式の祝宴が終ったとき、善良な妖精は彼女たちの魔法の贈物をするために王女さまのところに行きました.
最初の妖精が言いました 「あなたは美しい顔を持つでしょう」
2番目の妖精は言いました 「あなたは立派なことを考えるでしょう」
3番目の妖精は言いました 「あなたは親切で愛情のある人になるでしょう」
4番目の妖精は言いました 「あなたは妖精のように踊るでしょう」
5番目の妖精は言いました 「あなたはナイチンゲールのように歌うでしょう」

 妖精の中の11人が彼女たちの贈物をしたときには、赤ちゃんは人が望めるこの世の中のすべてのものを約束されてしまっていました。
そのとき、13人目の妖精が突然やってきました。王さまが彼女を祝宴に招待しなかったので、彼女はたいへん怒っていました。赤ちゃんを指さして彼女は大声で叫びました 「王さまの娘が15歳になると、つむに刺されて死ぬことになるだろう」
他の言葉はなにも言わずに、彼女は宮殿からかけ去りました。

 洗礼式の祝宴にいた人はみな、この悪い妖精の言葉をきいて、恐れおののいてたじろぎました。女王さまは泣きだし、王さまは彼女をどう慰めていいのかわかりませんでした。
そのとき、まだ赤ちゃんに贈物をしていなかった12番目の善良な妖精が進み出ました。
「お泣きなさいますな、女王さま」 と、彼女は言いました 「私にお助けできることをしましょう。私は悪い妖精の不吉な呪いを破ることはできませんが、それを少しは和らげることができます」

 「王女さまは、つむでご自分を刺すことになるでしょう」 と、12番目の妖精は続けました 「しかし、彼女が死ぬことはありません。彼女は百年間続く深い眠りにつくことになりましょう」
王さまはその妖精の親切に感謝しました。しかし、彼は自分の子どもが百年間眠り続けると考えたくはありませんでした。そこで、彼は王国じゅうのすべてのつむを燃やしてしまえと命令しました。王さまの使者はそれがなされたかどうかたしかめるために、王国じゅうのあらゆる町や村へつかわされました。

 時は過ぎゆき、赤ちゃんであった王女さまは愛らしい少女に成長しました。善良な妖精たちが約束してくれたすべての贈物は彼女のものとなりました。
彼女は顔が美しく、立派な考えをしました。妖精のように踊り、ナイチンゲールのように歌いました。
彼女は幸福で陽気でしたので、彼女の近くにいる人もすべて幸せになりました。彼女は親切で愛情にみちていましたから、彼女を知る人はみな彼女を愛しました。
王さまと女王さまにとって、王女さまは大きな喜びのたねでした。

 さて、王女さまが15歳になったまさにその日、王さまと女王さまは、たまたま不在でした。
おもしろがって、王女さまは宮殿じゅうを歩きまわりました。彼女は、今まで見たことがなかった何十という部屋のドアを開けました。
最後に彼女は古い塔へやってきました。彼女は狭い曲がりくねった階段をのぼっていくと、てっぺんに小さなドアを見つけました。彼女は錠についたさびついた鍵をまわすと、ドアが開きました。

 その小さな部屋の中には年をとった女の人がすわっていて、紡ぎ車を動かし忙しげに亜麻を紡いでいました。
「こんにちは、おばさま。なにをしているのですか」 と、王女さまは言いました。
「私は紡いでいるのですよ、お嬢さん」 と、老婦人は答えました.
「おお、なんてすばらしいのでしょう」 と、王女さまは叫びました。「私にもやらせてくださいませんか」
王女さまがつむに触れるやいなや、悪い魔女の予言が事実になりました。
彼女は指を刺してしまったのです。

 王女さまはつむに刺されたと感じるやいなや、ベッドに倒れて深い眠りにおちました。
老婦人も椅子の上で眠りこんでしまいました。そして、他の宮殿の中のすべての生き物も眠ってしまったのです。
まさにその瞬間に、王さまと女王さまは娘の誕生日を祝うために、宮殿に戻ってきました。彼らは宮殿の広間で眠ってしまいました。王さま夫妻といっしょだった、貴族や貴婦人たちも近くで眠りにおちました。

馬小屋では、馬が眠りこんでしまいました。中庭では、犬が吠えるのをやめて眠ってしまいました。屋根の上では鳩がクークー鳴くのをやめて眠りにおちました。宮殿の壁の上では、はえがはうのをやめて眠ってしまいました。
台所では、火が消えて肉が煮えるのをやめてしまいました。料理人は、洗い場の少年がすべきことを忘れてしまったために、横面をまさにぶとうとしていました。しかし料理人は眠りにおち、洗い場の少年も眠ってしまいました。

 宮殿全体が静かになりました。生きている物は、なにひとつとして動きませんでした。風は止み、宮殿の庭の木々の上では、1枚の葉っぱもそよぎませんでした。
いばらのいけ垣が、宮殿やその庭園のまわりに生えました。毎年毎年いけ垣はどんどん高く、どんどん深くなりました。とうとう、それはたいへん高くなって宮殿をおおいかくすばかりになりました。旗と頂上の塔だけが茂みの上に見られるのでした。

 眠りについた美しい王女の物語は、王国じゅうに、さらに遠方にまでひろがりました。彼女は、眠れる美女として知られるようになりました。
ときどき、彼女の美しさについて伝え聞いた王子たちが、彼女の目を覚ましたいと思って、宮殿へと旅しました。しかし、いばらの茂みがたいへん深いため、王子たちはひとりとしてそれを押し分けて進むことはできませんでした。試みた王子は誰でも、手や顔に傷を負い血を流して、あきらめざるを得ませんでした。

 何年もの後、ある王さまの息子が眠れる美女の王国を訪れました。ある老人が、その祖父から聞いた話をこの王子にしたのです。
その話は、その近くに生えた深いいばらのいけ垣のうしろにかくされているお城についての話でした。そのお城の中には、眠れる美女として知られる美しい王女さまが眠っていました。彼女の母親も父親もお城の中のすべての人びともぐっすり眠っていました。彼らはみんな、百年間眠り続けると言われていました。

 王子は老人の話を聞くと言いました。「私はこの美しい王女に会い、彼女を目覚めさせなくてはならない」
「ああ、しかしお待ちください、王子さま」 と、老人は叫びました 「あなたはいろいろな危険があるのをご存知ありません。私の祖父は私に言いましたが、過去に何人もの若い王子たちがいけ垣を破ってお城にはいろうとしました。誰もお城に入れませんでした。誰もが残酷ないばらでひどく傷ついたのです」
「私は恐れないぞ」 と王子は答えました。「私はこの愛らしい王女さまに会わなければならない」

 さて、王子がお城に着いたまさにその日は、たまたま眠れる美女が眠りにおちた日からちょうど百年目の日でした。悪い妖精の不吉な呪いも終ったのです。
王子がいばらのいけ垣を押しはじめると、いばらはみな愛らしいばらになりました。いけ垣はひとりでに開いて、彼を通しました。そして彼が通りすぎると、ばらのいけ垣は彼が通った後で、やさしくもとどおりに閉じました。

 このようにして、たいへん不思議に思いながら、王子はいけ垣を通り抜けて進みました。
とうとう、彼はお城の中庭にたどりつき、そこには犬が眠っていました。
彼は宮殿の屋根を見上げると、そこでは鳩が頭を羽の下につっこんで眠っていました。王子が馬小屋の中へ入っていくと、そこでは馬がみんな立ったまま眠っていました。
宮殿全体が、物音ひとつしませんでした。

 つぎに王子は、宮殿の台所に入っていきました。そこでは、はえが壁の上で眠っているのを見ました。火は消えており、肉は半煮えでした。
料理人は手を、洗い場の少年の方へ向けて、立ったまま眠っていました。
洗い場の少年は、料理人から逃げ出そうとした状態で眠っていました。
台所の女中は、晩さんのために鶏の羽をむしろうとしたまま、テーブルのところにすわって眠っていました。

 王子は、音のない宮殿の奥深くまで歩いていき、とうとう大広間にやってきました。そこでは、王さまと女王さまが王座の上で眠っていました。
2人のまわりでは、貴族や貴婦人がすわって眠っていました。
すべてがたいへん静かなので.王子は眠っている人を起してはいけないと、爪先立ちで歩くべきだという気になりました。
彼は回廊を通り階段を上がりました。彼は見つけたすべての部屋をのぞいてみましたが、どこにも眠れる美女は見つかりませんでした。

 ついに王子は、一番高い塔の下にやってきました。彼は、狭い曲がりくねった階段をのぼりはじめました。彼はてっぺんのドアのところに着くと、それを静かにおし開けて小さな部屋の中へ入りました。
そこのベッドの上に、彼が今までに見たこともないほど美しい少女が眠っていました。王子は彼女の顔から目をはなすことができませんでした。
長い間、彼は驚嘆して彼女を見つめ、それから身をかがめて彼女にキスをしました。

 その瞬間、眠れる美女は目を開けて、すてきな微笑を王子におくりました。それから、すっかり目をさまし、起きあがりました。
王子は彼女に手をさしのべ、彼女は立ちあがりました。いっしょに彼らは狭い曲がりくねった階段をおり、回廊を通り、主階段をおりて大広間へと入っていきました。
その瞬間に、王さまと女王さまは眠りから覚めました。彼らは娘が目を覚まし元気なのを見てたいへん喜び、そして呪いを破ってくれた王子を歓迎しました。

 そのとき、大広間の貴族と貴婦人が目を覚し、そして宮殿全体が動きはじめました。
台所では、火が燃えはじめ、肉が煮えはじめました。女中は鶏の羽をむしりはじめました。洗い場の少年は、料理人に横面をぶたれないうちに逃げていきました。
中庭では、犬が目を覚まして吠えはじめました。馬小屋では馬が動いていましたし、屋根の上の鳩は目を覚まして飛び去りました。

 宮殿は百年間の眠りの後、再び生き返りました。宮殿の中の人誰もが、驚き、また、喜びました。
宮殿のまわりでは、高いいけ垣が消えました。
すばらしい結婚式の祝宴が用意されました。ハンサムな王子さまは眠れる美女と結婚し、彼らはその後ずっと、幸せに暮しました。


もどる