レディバードブックス100点セット
 

 

ジャックと豆の木

昔、ジャックという名前の一人息子を持った未亡人がいました。彼は怠け者でした。彼は生活のために働きにでようとはしませんでしたし、家でも母親のために手伝おうとはしませんでした。
しかしジャックは、まったく悪い少年というわけではありませんでした。
彼は心やさしく快活で、母親はたいへん彼を好いていました。

 ジャックと母親は、ちっぽけな小屋に住んでおり、たいへん貧乏でした。
時がたつにつれて、未亡人はますます貧しくなり-一方、ジャックはますます怠け者になりました。

 とうとうこの世の中で、1頭の牝牛以外未亡人に残されたものは何もないという日がやってきました。そのとき彼女は息子に言いました 「明日、おまえは私たちのあわれな牝牛を市場へ連れていって、売ってこなくてはなりません。この世の中で私たちに残っているのは牝牛だけです、だからきっとよい値段で売ってきなさい」

 つぎの日の朝、ジャックは朝早く起きて、牝牛を連れて市場に向かって出発しました。途中で彼は肉屋に会い、肉屋は彼に牝牛を連れてどこへいくのかとたずねました。
「私は牝牛を売りに市場に連れていくところです」 と、ジャックは彼に言いました。

 「私はおまえと取引がしたい」 と、肉屋はジャックに言いました。「私はこの豆を牝牛と交換したいのだ」 彼は帽子の中に入れてきた、全部色の違う、一風変って見えるいく粒かの豆をジャックに見せました。
「私の牝牛をあなたの豆と交換すれば、私は、ばか者になってしまうでしょうよ」 と、ジャックは言いました。
「ああ、しかしこれは普通の豆ではないよ」 と、肉屋は答えました。「これは魔法の豆なのだ」
ジャックは、そんな魔法の豆を持つことは、なんとすばらしいことだろうと思い、そこで彼は取引を承知しました。彼は牝牛を肉屋にあたえ、豆をポケットに入れて、家路に着きました。

 ジャックの母親は、彼がそんなに早く帰ってきたのを見てびっくりしました。彼女は彼が良い値で牝牛を売ったにちがいないと思いました。
「見て、お母さん」 と、ジャックは叫びました。「私はうまい取引をしたよ。私は牝牛をこの豆と交換したのです」
彼の母親はとてもとても怒りました。「おまえは悪いばかな子だね」 と、彼女は言い 「もう、私たちはきっと餓死するだろう」 彼女は怒って豆を窓の外へ投げ捨て、夕食をあたえずにジャックを2階のベッドへと押しあげました。
「でも、あれは魔法の豆なんだ」 と、ジャックは泣き叫びました。「だから、僕はうまい取引だと思ったんだ」 母親は怒って答えもしませんでした。

 次の日の朝、ジャックはたいへんお腹がすいて、朝早く目を覚ましました。
彼の部屋はいつもよりずっと暗いのです。彼は窓のところへ行きましたが、ほとんど外を見ることができませんでした。前には何も生えていなかった庭に、大きな木があるように思えました。
ジャックは階下にかけおりていき、庭に生えているのは木ではなくて、巨大な豆のつるだということを発見しました。それは、彼の母親が窓の外に投げ捨てた魔法の豆から夜の間に生えたものでした。豆のつるはどんな木よりも高く、強く、しかもたいへん急速に伸びたので、そのてっぺんは見えませんでした。

 ジャックは、すぐに豆の木をのぼりはじめました。枝から技へと自分を引きあげるのは困難な仕事でしたが、ジャックは勇敢な少年で、てっぺんにたどり着こうと決心していました。
ジャックはどんどんのぼっていきましたが、彼がいつ見上げても、豆の木のてっぺんはまだ上の方へ伸びていて見えませんでした。そしてのぼっている間じゅう、彼はますますお腹がすいてきました。

 何時間ものぼった後、ようやくジャックは豆の木のてっぺんに着き、荒れはてて何も生えていない国へと足をふみだしました。木も、草の葉さえも見られませんでしたし、1軒の家も見あたりませんでした。1本の長い道が遠くの方まで続いていました。

 ジャックは道を進んでいき、やがて彼は、たいへん年とった婦人に会いました。
「おはよう、ジャック」と、老婦人は言い、老婦人が彼の名前を知っているのに、ジャックはびっくりしました。
「私はおまえのことは全部知っているよ」 と、老婦人は言いました。「おまえは今、悪い人食い鬼の国にいるのだよ。おまえが赤ちゃんだったとき、この人食い鬼がおまえのお父さんを殺して、彼が持っていたものをみんな盗んだんだ。それでおまえのお母さんは、今とっても貧乏なのよ。おまえはこの人食い鬼を罰して、お父さんの財産をとり返そうと努力しなければなりません」 と、彼女は続けました。「おまえが勇敢な少年ならば、私はおまえを助けるように努めよう」
そう言うと、老婦人は姿を消し、ジャックはさびしい道を進んでいきました。

 夕方になって、ジャックは城に着きました。彼が大きなドアをノックすると、女の人がそれを開けました。彼女はジャックを見て、びっくりしたようでした。
「私はたいへん疲れて、お腹もすいています」 と、ジャックは言いました
「どうか夕食をいただけませんか、そして一夜の宿もお貸しください」

 「おお、かわいそうに」 と、婦人は叫びました。「あなたは今どこにいるのか知らないのですか。私の夫は人食い鬼で、人間を食べてしまいます。彼はきっとあなたを見つけて、夕食として食べてしまうでしょう」
ジャックはそれを聞いて恐ろしくなりましたが、彼はたいへん疲れ、お腹もすいていたので、もう一歩も進めませんでした、そこで、彼は婦人に中に入れてくれるようにと嘆願しました。

 とうとう、人食い鬼の妻は承知して、ジャックを台所に連れていきました。そこで、彼女は彼の前においしい夕食を出してくれました、ジャックはそれをたいへんおいしく食べ、やがて恐怖を忘れました。
彼がかろうじて食べ終ったときに、重く踏みつける足音で地面がふるえました。それから、ドアを3つノックする大きな音が聞こえてきました。それは家に帰ってきた人食い鬼でした。

 ジャックの心臓はどきどきしはじめました。人食い鬼の妻はふるえはじめました。彼女はやにわにジャックをつかむと、かまどの中に押しこみ、かまどは運よくほとんどさめていました。それから、彼女は夫を城内に入れにいきました。

 人食い鬼は堂々と城に入り、台所のあたりの匂いをかいでほえました。
「ふん ふん ふん ふん
 イギリス人の血の匂いがするぞ
 やつが生きていようと、死んでいようと
 骨をひいて粉にしてパンを作ろう」
「ばかばかしい」 と、人食い鬼の妻は言いました 「あなたは夢をみているのです」 それから、彼女は彼の前の食卓の上に、ものすごくたくさんの食事を出しました。人食い鬼は空腹だったので、彼はそれ以上匂いをかがずに、すわって食べはじめました。
ジャックは、かまどの戸のすき間から、人食い鬼をのぞき見しました。
彼は人食い鬼があまりにもたくさん食べるのに、また、あまりにも速く食べものを口の中に押しこむのにびっくりしました。

 人食い鬼は食事を終えると、妻に向かって叫びました 「私のめんどりを持ってこい」 彼女はそれを彼のところへ持ってくると、人食い鬼はありがとうとも言わずに、彼女をベッドに追いやりました。
それから人食い鬼は、めんどりをテーブルの上において叫びました。
「産め」 すると、めんどりは金の卵を産みました。

 「もうひとつ」 と、人食い鬼がほえ、すると、またひとつ金の卵が産みだされました。
何回も何回も、雷のような声で人食い鬼は叫びました 「産め」 めんどりは彼の言うことをきき、とうとう12個の金の卵がテーブルの上に並びました。それから、人食い鬼は椅子の中で眠ってしまい、彼があまりにも大きないびきをかいたので、城が振動しました。

 ジャックは人食い鬼のいびきを聞くやいなや、かまどからはい出しました。彼はめんどりをつかまえ、小わきにそれをかかえて城の外へとしのびでました。
それから彼は、できるかぎりの速さで走りだしました。どんどん彼は走り、とうとう豆の木のてっぺんに着きました。彼はすばやくはいおりて、不思議なめんどりを母親のもとへ連れてきました。
かわいそうな婦人は、再び彼に会えて喜びました。そしてジャックがめんどりをテーブルの上において、それに金の卵を産めと命令したとき、彼女は自分の目を信じることができませんでした。

 毎日、めんどりは新しい金の卵を産みました。この卵を売って、ジャックと母親は、とても安楽に暮すことができ、くよくよ悩む必要はありませんでした。このようにして、彼らは長い間幸せに暮しました。
しかし、しばらくすると、ジャックはもっと冒険がしたくてたまらなくなりだしました。彼は老婦人が彼に語ったことについて、またどのようにして人食い鬼が彼の父親の全財産を盗んだのかについて考えました。
ジャックは再び人食い鬼の城を訪れようと決心しました。彼は人食い鬼の妻にわからないように変装しました。それから、彼は再び豆の木をのぼりはじめました。

 ちょうど前と同じように、ジャックは夕方近くに城に着き、ドアをノックしました。人食い鬼の妻がドアを開けると、彼は言いました 「奥さん、食べものと休む場所をくださるとうれしいのですが、私は空腹で疲れているのです」
「おまえをここにはおけないよ」 と、人食い鬼の妻は答えました。「前に一度私は、疲れて空腹な少年を中に入れたことがあったのよ。ところが彼は私の夫の不思議なめんどりを盗んだの」
ジャックは、めんどりを盗んだのは悪人だと思っているふりをしました。
彼はたいへん快活に人食い鬼の妻にしゃべったので、彼女は彼に食事を断ることはできないような気になりました。彼女は彼を中に入れました。

 ジャックがおいしい夕食を食べ終った後に、人食い鬼の妻は彼を戸棚にかくしました。彼女がそうし終ったちょうどそのとき、人食い鬼がどしどしと入ってきました。彼は台所のあたりの匂いをかいで、ほえました。
「ふん ふん ふん ふん
 イギリス人の血の匂いがするぞ
 やつが生きていようと、死んでいようと
 骨をひいて粉にしてパンを作ろう」
「ばかばかしい」 と、人食い鬼の妻は言いました。「あなたは夢をみているのです」 それから、彼女は彼の前に、ものすごくたくさんの夕食を出しました。
夕食のあと、人食い鬼はほえました 「私のお金の袋を持ってこい」 彼の妻は袋を持ってくると、ベッドの方へ去りました。
人食い鬼はお金を全部テーブルの上にあげて、それを袋にもどす前に何回も何回も数えました。それから、彼は眠りました。

 ジャックは人食い鬼のいびきを聞くとすぐに戸棚からはいでて、お金の袋を拾いあげました。袋は彼が予想していたよりずっと重いものでしたが、彼はなんとか袋を肩にかつぎました。それから、できるだけ静かに城から抜けだしました。
お金の袋があまりにも重かったので、ジャックは走り続けられませんでした。彼は人食い鬼が目を覚して追いかけてくるかと心配しましたが、無事に豆の木のてっぺんに着きました。
ジャックの母親は、もう一度彼を見てたいへん喜び、おまけに彼がお金の袋をテーブルの上にあげたので、びっくりしてしまいました。

 ジャックと母親は、今や自分たちが欲しいものをすべて持っていました。
人食い鬼の城からジャックが持ち帰ったお金で、彼らは前より大きい家を建て、家具や上等な服や食べものを買いました。
未亡人は息子に言いました 「今では私たちは金持になったのよ、だからお願い、危険をおかして豆の木にのぼるようなことはしないでおくれ」 しかし、ジャックはそんな約束をするつもりはありませんでした。

 長い間、ジャックと母親は十分満足していました。そのうちジャックは、さらに冒険したいと思いはじめ、巨人がまだ十分罰せられていないと思いはじめました。彼は、もう一度人食い鬼の城を訪れようと決心しました。
今度、ジャックはまたちがった変装をしました。彼は人食い鬼の妻が彼だと見やぶれないだろうと思い、彼女を説得して彼を城に招き入れさせることができるだろうと思いました。
それでこんどは3回目ですが、ジャックは豆の木にのぼり、同じ道を通って城の戸□に着きました。人食い鬼の妻は彼を見やぶることができず、そして彼は一夜の宿を頼みました。
「だめ、だめ」 と、彼女は叫びました。「おまえを入れるわけにはいかないよ。私が入れたこの前の2人の疲れた少年は泥棒でした。1人は不思議なめんどりを盗み、もう1人はお金の袋を盗みました。だめ、だめ、おまえを中に入れないよ」

 ジャックは頼みに頼みました、そしてとうとう人食い鬼の妻は彼をかわいそうに思って、中に通し夕食を食べさせてくれました。それから、彼女は彼を洗たく用の湯わかしの中にかくしました。

 すぐに人食い鬼が帰ってきて、台所のあたりの匂いをかいでほえました。
 「ふん ふん ふん ふん
  イギリス人の血の匂いがするぞ
  やつが生きていようと、死んでいようと
  骨をひいて粉にしてパンを作ろう」
「ばかばかしい」 と、彼の妻は言いました。「あなたは夢をみているのです」 それから、彼女は彼の前に、ものすごくたくさんの夕食を出しました。
食事が終ると、人食い鬼は叫びました 「私のハープを持ってこい」 人食い鬼の妻は、美しい金色のハープを持ってきて、彼の前のテーブルの上におきました。それから彼女はベッドの方へ去りました。

 「演奏しろ」 人食い鬼がほえると、ハープはひとりでに鳴りはじめました。
ジャックは今までに、そのハープが演奏するような、そんなに甘美な音楽を聞いたことはありませんでした。ハープは人食い鬼がほとんど眠ってしまうまで演奏し続けました。それから、彼が 「やめろ」 と叫,ぶと、音楽はやみました。

 ジャックは人食い鬼の大きないびきを聞くとすぐに、湯わかしからとびだしてハープをつかみました。彼がそれにふれるやいなや、ハープは 「ご主人様、ご主人様」 と、叫びました。人食い鬼は烈火のように怒って目を覚し、ジャックがハープを持って逃げるのを見ました。
「おまえが私のめんどりやお金の袋を盗んだ子どもだな」 と、彼はほえました。

 人食い鬼はまだ眠気がさめず、また食事とぶどう酒で体が重くなっていましたので、いつもほど迅速ではありませんでした。しかし、彼はよろめきながらも立ちあがり、ジャックを追いかけました。
ジャックは恐ろしかったのですが、ハープを落としませんでした。ハープを肩にかつぎ、彼は命がけで豆の木に向かって走りました。かけていく間じゅうずっと、ハープは 「ご主人様、ご主人様」 と、叫び続けました。
ジャックはあまりにも恐怖にかられ、また、あまりにも息切れして 「やめろ」 と、言うことさえ考えつきませんでした。
肩ごしに、ジャックは人食い鬼が大股に後を追ってくるのを見ました。
それで、今までの人生のうちで走ったことのないほどの速さで走りました。

 ジャックは無事に豆の木のてっぺんに着きましたが、人食い鬼はすぐうしろに追っていました。
彼は豆の木にすべりこんで 「お母さん、お母さんすぐに斧を持ってきてください。人食い鬼がやってきます」 と叫びながら、豆の木をすべりおりました。
すると、母親はスカートをつまみあげて、少女だったとき以来走ったことがなかったような速さで走って、彼に斧を持ってきてやりました。
そのときまでに、人食い鬼は迅速に豆の木をはしりおりてきていました。
ジャックは力いっぱい斧をふるって、豆の木に力強い一撃を加えました。

 豆の木は倒れ、人食い鬼が頭から地面に落ちてきたために、ものすごい音がしました。彼はジャックの家の庭に落ちて死んでしまいましたが、彼はあんまり大きいために、その体は庭のはしからはしまでをいっぱいにしました。
人食い鬼を指さして、ジャックは母親に言いました。「彼がお父さんを殺して、私たちのすべての財産を奪ったんだ」

 その瞬間に、前にジャックに話しかけた老婦人が現れました。彼女は彼らに、自分はほんとうは妖精なのだが、魔力を失ってしまって人食い鬼がジャックの父親を殺すのを妨げることができなかったのだと話しました。

 ジャックに、牝牛と交換に魔法の豆を手に入れさせたのは彼女でした。
彼女はジャックを豆の木にのぼらせたかったのです、そして、彼女が彼を人食い鬼の城に導き、そこでは彼を助けました。
「あなたがたの苦労は今や終りました」 と、妖精はジャックと母親に言いました。「あなたがたには何も不足するものはないでしょう、そして生きているかぎり幸せでしょう」
妖精の言ったとおり、ジャックと母親はその後ずっと幸せに暮しました。


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