レディバードブックス100点セット
 

 

王女とカエル

 昔むかし、7人の美しい娘を持つ王さまが住んでいました。しかし、すべての娘のなかで、末娘が一番の美人でした。
この王女には、すべての彼女の玩具のなかで、お気に入りのものがひとつだけありました。それは金色のまりでした。彼女はそれを空中に投げ上げたり、受け止めたりして何時間も過ごすのでした。

王さまのお城の近くに、大きな深い森があり、森のはずれにある大きな木の下に、深い暗い池がありました。
暑い日に、池のそばの涼しい木陰で休むのは楽しいことでした。王女はひとりで遊ぶために、しばしばそこへ行きました。

 末娘の王女は、彼女の金色のまりを投げ上げたり受け止めたりしながら、池の近くの草の上をかけまわるのが常でした。
しかし、ある日、王女がまりを投げ上げたとき、それは彼女の広げた手の中に落ちてきませんでした。まりは草の上に落ち、はずんでザブンと深い池の中に入ってしまったのです。

 王女は、美しい金色のまりを本当になくしてしまったのだと思うと、耐えられませんでした。彼女は泣きはじめました。お気に入りの玩具をなくしてしまったのだと考えれば考えるほど、彼女の泣き声は大きくなりました。
王女が泣いていると 「なぜ泣いているのですか、若い王女さま。どうしたのですか」 という声が聞こえてきました。

 王女は、誰が話しかけているのか知ろうと顔をあげました。近くには、謡も見えませんでした。池の縁に、1匹のかえるがすわっているだけでした。
そこで、彼女はかえるに言いました 「私の美しい金色のまりが、この深い他の中に落ちてしまったので泣いているのよ」

 「泣いてはいけません」 と、かえるが言いました。「私はまりをとってきて、あなたの手助けをしますよ。でも、私があなたにまりを見つけてあげたら、あなたは私に何をくださいますか」
「おまえのお望みのものは、何でもあげるわ」 と、王女は答えました。
「私の金色のまりを見つけてくれさえすれば、私の服でも、宝石でも、金の冠だってあげるわよ」

 「私はあなたの服も、宝石も、金の冠だってほしくはありません」 と、かえるは答えました。
「私を愛してほしいのです。私をあなたの友だちにして、いっしょに遊んでほしいのです。私は食卓であなたのそばにすわり、あなたの金のお皿から食べ、あなたの金のコップから飲みたいのです。あなたのベッドの中で、あなたのおそばで眠りたいのです」

 「もしあなたが、これらのことを約束してくだされば」 と、かえるは続けました 「私は深い池にもぐって金色のまりを見つけてきましょう。約束してくださいますか」
王女は、かえるが馬鹿なことばかり言っていると思いました。また、彼女は金色のまりがほしくてたまりませんでした。そこで、彼女は言いました 「おまえが私の金色のまりを見つけてくれさえすれば、私は、おまえの頼んだことを全部果すと約束します」
この言葉をきくと、かえるは池の中にもぐっていきました。

 かえるは池の中に深くもぐって、まもなく金色のまりを口にくわえて、再び泳いで上がってきました。彼は、まりを草の上に投げました。
王女は、お気に入りの玩具がまた見られてたいへん幸せでした。彼女はそれを拾い上げ、何回も何回もそれを投げ上げたり受け止めたりして、楽しそうに笑いました。

 それから彼女は、かえると池に背中を向け、森を抜けて、父親のお城の方にかけ出しました。
「待ってください! 待ってください!」 と、かわいそうなかえるはゲロゲロ言いました。「私は、あなたほど速くは走れません!」 そしてかえるは追いつこうと、王女のうしろをぴょんぴょんはねて行きました。彼女は振り向かず、ただかけ続けるばかりでした。

 翌日、若い王女は王さまや延臣(王さまにつかえる役人)や他の王女たちといっし,ょに、食事をするためにすわっていました。彼女がかわいい金の皿から食べているとき、かえるはお城の大広間に通じる道を見つけました。彼は大理石の階段を一段ずつとびはねて登りました。階段を登りきると、彼は食堂のドアをノックしました。「一番若い王女さま、私のためにドアを開けてください!」 と、かえるは叫びました。

 王女は、誰が彼女に呼びかけているのかを見るために、ドアにかけ寄りました。それがかえるだとわかると、彼女は恐ろしくなりました。彼女はすばやくドアをパタンと閉じると、食卓の自分の席に戻りました。
王さまは、王女がこわがっているのに気づきました。「王女よ、何をこわがっているのかね」と、彼はたずねました。「ドアの外側に、おまえを連れ去ろうとしている巨人でもいるのかな」

 「いいえ、愛するお父さま」 と、王女は答えました。「ドアの外に巨人なんていません、ただ、ぞっとする、ぬるぬるのかえるがいるのです」
「かえるがおまえに何を望んでいるのかな」 と、王さまはたずねました。
そこで王女は、昨日、森の中で起ったことを父親に話しました。「私は、彼といっしょに暮らしてよいと約束しました」 と、彼女は言いました 「でも私は、彼が池からこんな遠くまでやってくるとは思ってもいませんでした」

 ちょうどそのとき、ドアがもう一度ノックされ、叫び声が聞こえました。
「一番若い王女さま、私の言うことをきいてください。
 あなたが、金色のまりをなくしたのを思いだしてください、
 おひとりで池のそばで遊んでいるときに。
 私は冷たい池の中にもぐりました、
 そして、あなたのまりを見つけてあなたにお返ししました。
 さあ、どうかあなたの誠実な約束を思いだしてください、
 私を連れていって、いっしょに暮すという約束を」

 「約束をしたら、それを守らなければならないよ」 と、王さまは娘に言いました。「行ってドアを開けなさい」
一番若い女王は、ドアのとこうへ行ってドアを開けました。彼女が自分の席に戻るとき、かえるは彼女のうしろについてはねました。彼女がすわると、かえるは言いました 「どうか、私を食卓の上のあなたのそばに置いてください」
王女はためらいましたが、王さまはかえるの頼むようにしなさいと彼女に言いました。

 かえるは食卓にのると、王女に言いました 「あなたのかわいい金のお皿を、もう少し私に近づけてください。そうすれば、私たちは同じお皿からいっしょに食べられますから」
王女はそうしましたが、とてもいやいやながらでした。彼女は、食べものにはほとんど触れませんでした、しかも、一口一口の食べものが彼女の息をつまらせるように思えました。しかし、かえるは一口一口を楽しんで食べました。

 食事を終えると、かえるは王女の方を向いて言いました。「さて、私は疲れました。どうぞ私を、あなたの部屋に連れていってください、そして私たちは、あなたのかわいい絹のベッドに横になって眠りましょう」
これを聞くと、一番若い王女はわっと泣き出しました。彼女は冷たいやなかえるに触れたくありませんでしたし、かえるが自分のベッドの中で、自分のそばにいると考えることに耐えられませんでした。

 そのとき王さまは、怒って娘にきびしく言いました。「おまえが困っているときに誰かが助けてくれたなら」 彼は言いました 「おまえは、後になって彼に背中を向けてはならない。そのかえるをおまえの部屋に連れていきなさい」
そこで、王女はかえるを拾い上げ、部屋に連れていかなければなりませんでした。

 彼女はかえるを部屋のすみに、できるだけベッドから離しておろしました。それから、彼女は自分の絹のベッドにはいり、かえるに背中を向けました。
もう一度、かえるは大声で言いました。「私だって疲れています」 と、彼は言いました。「私は絹のシーツの上で、あなたのそばで眠りたいのです。どうか私を上にあげてください」

 ふたたび、王女は泣きはじめました。「もし、あなたが私のベッドの上にあげてくれないのなら」 と、かえるは続けました 「私は、あなたのお父さまである王さまに告げなければなりません」
王女は選択の余地がないのを知りました、なぜなら、王さまは彼女に約束を守れと主張するでしょうから。そこで、顔にいっぱい涙を流しながら、かえるを拾いあげてベッドにあげ、自分のそばにある絹の枕の上に、かえるを置きました。

 彼女がそうするやいなや、かえるはハンサムな王子に姿を変えました !
彼はハンサムであるばかりではなく、思いやりのある顔をしており、びっくりしている王女にやさしくほほえみかけました。
それから彼は、いかに自分が悪い魔女に魔法をかけられ、かえるにされてしまったかを彼女に話しました。その魔力は、美しい王女がかえるを友だちとして、彼といっしょに住み、いっしょに食べ、いっしょに眠ってくれてはじめて解けるのでした。

 王子は王女に、いかに彼女が森の中で金色のまりで遊んでいるのを、いつも見守っていたかと、いかに彼が彼女に恋してしまったかを話しました。
「親愛なる王女さま、私と結婚してくださいますか」 と、彼はたずねました。
王女は彼のやさしい顔をのぞきこみ、彼の頼みどおりにすることに同意しました。

 それから、手に手をとって、彼らは王さまのところへ行き、何が起ったのかを話しました。
翌日、彼らは、6頭の白馬にひかれた馬車に乗って出発しました。彼らは王子の父親の王国まで旅をしました。彼らが到着すると、何年間も行方の知れなかった王子の帰還に、みんな大喜びでした。

 しばらくして、王子と王女は結婚し、その後ずっと、幸せに暮しました。
金色のまりは、特別なガラスのケースに入れられ,紫のクッションの上に置かれて、宮殿の中に保存されました。


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