レディバードブックス100点セット
 

 

ピノキオ

 これは、あやつり人形になり、ついには本当の生きた少年になった、1本の木の不思議な物語です。
それは、大工のアントニオが、仕事場のすみにある木の山の中から1本の木を手に取ったときから、すべてが始まります。その木は、まったくありふれた木で──まるで見栄えのしないものでした。アントニオが木の皮をはごうと鋭い斧を振り上げたそのとき、小さな声がしました 「そんなに強く私を打たないでください!」

 アントニオは恐ろしくなりました。彼は仕事場をぐるっと見まわし、それからその木にも目をやりました。「いや、いや、私は夢をみているのだ」 と、彼は思いました。そして、また斧をふりあげて、その木をとても強く打ちました。
「おお、私を傷つけたじゃありませんか!」 と、前と同じ小さな声がしました。

 アントニオは、今度は本当に恐ろしくなりましたが、ちょうどそのとき、友人のジェペットが戸ロにやってきました。ジェペットには子どもがいませんでしたので、本当の少年のように踊ったり、跳んだり、動いたりできるあやつり人形を作るのに、木をほしがっていました。

 アントニオはありがたく思って、彼をそんなに恐がらせたその木を、ジェペットにやりました。ジェペットはそれを持って心楽しく家に帰り、すぐに新しいあやつり人形を作りはじめました。「この人形をピノキオと呼ぶことにしよう」 と、彼は仕事をしながら思いました。「これはよい名前だ」
彼が人形の顔を作るとすぐに、その目が動き、その口が笑いました。それから、ジェペットが足を作り終えると、ピノキオは彼の鼻を蹴りました。

 ジェペットは、いたずらをするにもかかわらず、このできたての人形が気に入りました。彼はピノキオに、片足をもう片方の足の前にもっていってというように、歩き方を教えました。すぐに、その人形は通りへ駆けだしていきました! ジェペットは追いかけはしましたが、あまりにも足が遅すぎました。

 ピノキオは通りを駆けていって、お巡りさんの腕の中に飛びこんでしまいました! お巡りさんは、彼をジェペットに返しましたが、通りにいた人びとが、ピノキオに同情したのです。彼らはジェペットはごろつきだと言いました。お巡りさんは彼らの言うことをきいて、ジェぺットを牢屋に入れてしまいました。

 かわいそうなジェぺットが、何もしていないのに牢屋に連れていかれている間に、ピノキオは走って家に帰りました。彼はいい気分で、家の中に寝そべっていました。
やがて、遠くないところで小さな声がしました。ピノキオは、びっくりしてしまいました。顔を向けると、大きなこおろぎがゆっくりと壁の上を歩いていました。
「私は話をするこおろぎだ」 と、こおろぎは言いました。「おまえに言わなければならないことがある。お父さんにそむいて家から逃げ出すような少年は、最後にはいつもそのことで後悔するぞ!」

 「チリッチリッ言うな、こおるきめ」 と、ピノキオは言いました 「おまえが何と言おうとかまわないよ。ぼくは明日、ここから逃げるんだ。もしそうしないと、ぼくも他の少年たちのように学校へ行かなければならないだろう。ぼくは何も勉強したくない。働きたくもないんだ。ぼくがしたいのはただ、楽しい時をすごすことさ」

 こおろぎはためいきをつきました 「ピノキオ、おまえをかわいそうに思うよ。行く末は牢屋だろうな」
これをきいて、ピノキオはたいへん不機嫌になり、こおろぎめがけて金づちを投げました──すると、こおろぎは姿を消してしまいました。

 さて、ピノキオは1日じゅう何も食べていませんでしたから、空腹でした。家の中にある食べものは、卵1個だけでしたが、ピノキオがそれを料理しようとすると、ひよこにかえって、とんでいってしまいました。
彼は食べものを探しに、嵐のような雨の晩に外に出ましたが、誰も彼に食べものをくれようとはしませんでした。とうとう彼は家に戻り、乾かそうとして足を火のそばに置き、ぐっすりと眠ってしまいました。

 もちろん、ピノキオの足は木でできていましたので、眠っている間に、少しずつ足は燃えてしまったのです。

 突然、ドアがノックされました。それはジェペットでした!
あやつり人形は、ドアを開けに走っていこうとしました──そして、床の上に転んでしまいました。「私には開けられません。足がなくなってしまったのです」 と、彼は叫びました。
ジェぺットは、窓を通り抜けながら、たいへん不機嫌でした。彼はピノキオがまた別のいたずらをしているのだと思ったのです。すぐに、彼は、あやつり人形に本当に足がないのに気づき、かわいそうになりました。

 ピノキオが、あんまりお腹をすかしていたので、ジェペットは自分の朝食である3個の梨を彼に与えました。しかし、それを食べ終るとすぐに、人形は新しい足がほしいと頼みました。
しかし、ジェベットは、こらしめてやろうと思って、長い間泣かせっ放しにしておきました。
とうとうピノキオは、良い子になって、学校へも行くと約束しました、そこでジェペットは、彼に2本の美しい新しい足を作ってやりました。彼はピノキオに、通学用の服さえも作ってやったのです。

 今やピノキオに必要なものは、つづり字教科書だけでしたが、それを買うお金がありません。ジェペットは自分が役に立たないので悲しくなりました。そのうち、ある考えが浮かびました。彼は古いコートを着ながら、雪の中へと家をとび出していきました。

 まもなく彼は、帰ってきました──つづり字教科書は持っていましたが、コートは着ていませんでした。彼は、あやつり人形の息子の本を買うために、コートを売ってしまったのでした!

 雪がやむとすぐに、ピノキオは学校へ出かけました。行く途中、いつかはいっぱいお金をもうけて、ジェぺットへの恩返しに本当に美しいコートを買ってあげようと、彼はひとりごとを言いました。
突然、遠くに音楽が聞こえてきました。一体何だろう、ピノキオはじっと立ち止まって耳をすましました。やがて彼は決心しました。いつでも学校は行ける、明日行けばいいや……と。
彼は、音楽のきこえる方へ駆けていきました。

 音楽は 「大人形劇場」 から聞こえてきたのです! しかし、ピノキオには入場券を買うお金がありません。彼はしばらく考え、それから彼はつづり字教科書を2ペンスで売ってしまいました。かわいそうにジェぺットは、ピノキオに教科書を買ってやったために、家で寒さにふるえていたというのに!

 しかしピノキオは、ジェペットのことなんかみんな忘れてしまっていました。劇場の中へ入ると、彼は本当に気楽になりました。あやつり人形たちは、長い間行方不明だった弟が帰ってきたと、彼を歓迎しました、そして芝居は彼らがあいさつをする間、中断しました。

 あやつり人形たちには 「火喰い」 と呼ばれる親方がいました。彼は長く黒いあご髭を生やした、どうもうな男でした。彼は、ピノキオのために芝居が中断したのを見て怒りました。
はじめ、彼はピノキオを火の中に投げ入れようとしました。それから彼は、ピノキオをゆるし、主役のハーレクィンを火にくべようと決心しました。
しかし、勇敢なピノキオは、自分がかわりに死のうと言い、それでとうとう 「火喰い」 は両方とも許しました。
あやつり人形たちは、これを見てとてもしあわせな気持になり、手をたたきました。それから、みんなは夜中じゅう楽しく踊りました。

 翌日、「火喰い」 はピノキオに父親のジェペットのところに持っていくようにと5枚の金貨をピノキオに与え、いい気持で彼を家に送り返しました。

 ピノキオは、今度こそ良い子になろうと決心しましたが、またまた困ったことが起きてしまいました。彼は片方の足が不自由なふりをした悪いキツネと、目が見えないふりをしたネコに出会ったのです。彼らは彼のお金を盗もうとしましたが、ピノキオは彼らから逃げました。

 悪者どもはピノキオを追跡して、彼を刺そうとしました。幸いにもあやつり人形は堅い木でできていたので、彼らのナイフが折れてしまいました!
彼らはたいへん怒って、彼を樫の木から吊り下げ、彼が死ぬようにと放っておきました。
ピノキオが木から吊り下げられていたとき、青い髪の少女が近くの自分の家から、彼の姿を見つけました。彼女は本当は変装した「妖精」で、ピノキオを助けるために召使をやりました。

 妖精はピノキオを元気にするために、薬を与え、それから彼に事の一部始終をたずねました。ピノキオは、最初のうちは本当のことを言いました。
やがて金貸のことに話がいくと、彼はうそをつきました。彼は金貨をなくしたと言いましたが、本当はポケットの中に入っていたのです!

 彼がうそをつくやいなや、ピノキオの鼻は2インチばかり長くなりました! さらに彼は次のうそをつきました──すると彼の鼻はさらにのび、どんどんのび続けました。

 あやつり人形の鼻は、うそをついたためにたいへん長くなり、彼はドアの外へ出られなくなりました。
妖精は彼の様子を見ながら大笑いしましたが、彼は泣きだしてしまいました。彼は、妖精がうそをついていたのを許してくれるまで、長い間泣き続けました。そしてとうとう、妖精は彼を助けるために数羽のキツツキを呼び入れました。キツツキは、ピノキオの鼻がまたもとの長さになるまで鼻をつっつき続け、そしてピノキオは、ふたたび心楽しくなりました。

 妖精は、たいへんないたずらっ子でしたけれどピノキオが好きでした。彼女は彼に、いっしょにいることを望みました。ピノキオは父のジェペットのところへ帰りたいのだと言いました、すると妖精は、ジェぺットもいっしょにとどまるといいと言いました。

 ピノキオはこれを聞くと、たいへん喜び、興奮して、ジェペットを迎えに出かけました。彼はそれほど長い間、ジェペットに会っていなかったのです。

 ピノキオは、ふたたびジェペットに会うのを期待していましたが、そうはならない運命でした。性悪なキツネとネコがまた現れて、彼の金貨を盗んでしまいました。ピノキオがそのことを話すと、彼の方が牢屋に入れられてしまったのです。──まる4か月間も。彼はどうしてそうなったのか、まったくわかりませんでした。
牢屋から出ると、あやつり人形は、また妖精を探しにもどってきました。たしかに妖精のいた場所に戻ってはきましたが、あの家はどこにも見つからないのです!

 妖精がいなくなってしまったために、ピノキオが泣きながらそこに立っていると、1羽の鳩が降りてきました。鳩は彼に、ジェベットがたいへん不しあわせで、ピノキオを探しにボートに乗って海に出たことを告げました。ピノキオもジェペットが恋しかったために、これを聞くとピノキオは、前よりもいっそう泣声をたてました。

 鳩はピノキオがかわいそうになりました。それでジェペットを探しに彼を背中に乗せて海の方へ飛んでいきました。またまた、ピノキオは不運でした──イルカが彼に、ジェペットは恐ろしいサメに呑まれてしまったと教えてくれたのです。

 今やピノキオは、誰もが一所懸命働くので 「働き蜂」 と呼ばれている、ある島の上にいました。ピノキオはたいへん空腹でしたが、食べものを求めて働きにいこうとはしませんでした。
やがて、お腹がひどくすいてきたために、彼は働かなければならなくなりました。彼はひとりの女の人が水を運ぶのを手伝いました。彼女が彼に食べものをくれたとき、ピノキオは女の人があの妖精だとわかりました! 彼は彼女にふたたび会えたのです。

 ピノキオは妖精に、あやつり人形でいるのにあきあきしたと言いました。彼は本当の生きた少年になりたかったのです。
妖精は彼に、良い子ですなおであれば、本当の少年になれると言いました。決して嘘をついてはいけないし、学校へも行かなければなりません。
そこで、ピノキオは学校へ行きました。彼はたいへんよく勉強したために、クラスのトップになり、妖精は喜びました。彼女は彼に、まもなく本当の少年になれるだろうと約束しました。
しかし、クラスに悪い少年たちがいたのです。彼らは、彼を悪の道へと議いました──そして、ピノキオはまたまた家をとび出したのです!

 今度は、彼は他のいたずらな少年たちといっしょに、おもちゃの国へ行きました。そこで、彼らはみんな、ロバに変えられてしまいました──耳からしっぽから何から何まで!
ピノキオはサーカスのロバになりました。ある日、彼は輪くぐりをやっているときに転んで、足に怪我をしてしまいました。そのため波は片方の足が不自由になり、太鼓の皮にされるために売られました。
彼の新しい主人はピノキオを溺れさせようと、彼を海に投げこみました──すると、彼はまたもとのあやつり人形になりました。

  ピノキオの冒険は、まだ終りませんでした。彼が海の底に沈んでいるとき、サメに呑まれてしまいました。そのサメは父親のジェペットを呑みこんだ恐ろしいサメでした──そして、ジェペットはまだ生きていたのです!
ピノキオはある計画を立て、サメの口から無事にジェペットを外に連れ出しました。

 今度は、ピノキオも彼のかわいそうな父親の世話をするために一所懸命働いたので、妖精は3度目で、これが最後と彼をゆるし、その願いをかなえてやりました。
それで──とうとう──彼は本当の生きた少年になりました。


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