レディバードブックス100点セット
 

 

美女と野獣

 昔、遠い町に、3人の美しい娘を持つ金持の商人が住んでいました。一番若い娘が3人のなかでもっとも美しく、ビューティ(美女)と呼ばれていました。彼女は愛らしいばかりでなく、善良で親切でもありました。彼女の姉たちは、2人とも美しいことは美しかったのですが、親切でも善良でもありませんでした。彼女たちは自己本位で高慢でした。
ある日、彼女らの父親がたいへん深刻な顔をして帰ってきました。娘たちがどうしたのかとたずねると、彼は答えました 「ああ、私はもう金持ではなくなった。財産を失ってしまったのだ。私たちはこの美しい家を出て、田舎の小屋に移り住まなければならない」

 上の娘たちはこの知らせを聞いてたいへん怒りました。「私たちは田舎で1日じゅうどうすればいいの」 と、彼女たちはたずねました。
ビューティは言いました 「田舎で、森や野原や花にかこまれて暮らすのは、なんてすてきなことでしょう」
そこで、彼女らの父親は田舎に大きな庭園のついた小さな小屋をみつけ、彼らはみなそこへ移り住みました。父親は庭園で一所懸命に働き、作った果実や野菜を売って、快適に暮らすに足るお金を稼ぎました。

 ビューティもたいへん忙しく働きました。彼女は可愛いコックであり、女中であり、洗濯女でもありました。彼女は家の中のすべての仕事を楽しくやりました。

 ビューティが家事をしながら歌っている間、姉たちはみじめな顔つきですわっていました。彼女たちは、自分たちがもう金持ではなくなったと、こぼすことしかしませんでした。

 ある日、父親は3人の娘を集めて、商用で遠くの町まで出かけなければならないと告げました。彼は翌日までもどれないかもしれなかったのです。
「何かおみやげにほしいものはあるかね」 と、彼は娘たちに順番にききました。
「私にはダイヤモンド」 と、長女が言いました。
「私には真珠」 と、次女が言いました。
「どうぞお父さま、私には白いバラの花束を」 と、ビューティは言いました。

 やがて父親は馬に乗って出発し、ビューティは戸口で父親に手を振りました。
父親は仕事を終えると、家に向かって出発しました。まもなく暗くなって、彼は道に迷ってしまいました。彼は深い森の中に入ってしまって、出口をみつけることができませんでした。
そのうちにとうとう、遠くの方にあかりが見えました。小屋からもれているあかりだろうと思って、彼は感謝してその方へ馬を走らせました。
しかし、あかりに近づくにつれて、木がはばの広い並木道を形作っているのがわかりました。彼はその並木道を進んでいきました、すると、驚いたことには、宮殿の入口に着いたのです。

 宮殿のドアは開いていましたが、誰も見えません、そこで商人は中へ入っていきました。彼は広間の右側の部屋に入ると、暖炉に火が燃えていました。そこには、1人分の夕食が用意されている食卓がみつかりました。
商人は空腹でした、そこで、まず馬を馬小屋に連れていこうと決めました。それから部屋に戻り、もしまだ誰もいなければ、おいしい食事をしよう(と決めたのです)。彼が馬小屋からもどったとき、部屋にはまだ誰もいませんでしたので、彼は腰を下ろして夕食を楽しみました。

 夕食後、ビューティの父親は眠〈なりました、広間を横切ると、すっかり用意のできた寝室がありました。彼はベッドに横になり、翌朝までぐっすり眠りました。

 目をさますと、彼自身の服はどこにも見当たらず、そのかわりに、刺繍のついた新しい服が椅子の上に乗っていました。彼は新しい服を着ましたが、それはまるであつらえたように体にぴったりでした。
それから彼は夕食をとった部屋に行きました。そこには誰もいませんでしたが、見事な朝食が食卓に並んでいました。朝食を楽しんだあと、彼は馬の世話をしに馬小屋へ行きました。

 馬小屋へ行く途中、商人は美しいバラ園を通りかかりました。白いバラ茂みを見て、彼はビューティの願いを思い出し、彼はバラの花束を作ろうと道をそれました。

 彼がバラの花をひとつ摘みとったときに、うしろに恐ろしい音が聞こえました。振り向くと大きな野獣がいました。
大きな野獣は大きな声で言いました 「恩知らずなやつめ。おまえは誰のベッドに寝たのだ。誰の食事を食べたのだ。誰の服を着ているのだ。全部私のものだ、私のものだ、私のものだ。それなのに、おまえは恩をあだで返して、私のバラを盗んだ。おまえを殺してやる」

 大きな野獣はたいへんどう猛な顔つきをしていたので、男はかわいそうに恐れおののきました。彼はひざまずいて 「どうか私を殺さないでください」 と、頼みました。
「おまえは私のバラを盗んだ、だから死ななければならないのだ」 と、野獣はくりかえしました。
「何も私を助けることはできないのですか」 と、あわれな商人は絶望してたずねました。

 「おまえの命が救われる条件はひとつある」 と、野獣は答えました。「おまえは1か月たったらここへもどってこなくてはならない、おまえが家に帰ったとき、真先に迎えてくれたものを連れてだぞ」 ビューティの父親は、これに同意せざるを得ませんでした。

 宮殿から馬に乗って離れながら、商人は野獣にした約束について思いめぐらせました。
「私が帰ったとき迎えてくれるのは猫かな、それとも犬かな」 と、彼は思いました。
それから彼は、家を出たときビューティが彼に手を振ってくれた様子を思い出しました。ある恐ろしい考えが彼を打ちました。「私が帰宅したとき、最初に迎えてくれるのがビューティーだったらどうしよう」
馬に乗っていながらも、この考えはますます大きくなりました。家に近づけば近づくほど、この後に続くことになる不幸が彼にはたしかなものに思えてくるのでした。
小屋が見えてくるときまでに、彼はすっかり恐怖に満たされて、ほとんど頭をあげることができませんでした。

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一方、ビューティは愛する父親が帰ってくるのを見張りながら、自分の部屋の窓のところで待っていました。馬上の姿が遠くに見えると、彼女は小屋からかけ出しました。彼女は庭園のこみちを陽気にスキップしながらかけていき、外の道へと出ていきました。

 そうです。それは家にもどってくる愛する父親の姿でした、しかし、ビューティは父親がどうしたのか考えつきませんでした。彼はたいへん疲れて悲しそうに見えたのです。
「愛するお父さま、ご病気ですか」 と、彼女は彼にかけよってたずねました。
「いいや、たいへん元気だよ」 と、彼は答えました。
「それでは私に会ってうれしくはないのですか」 と、ビューティは続けました。
「うれしいって? おお、私のかわいいビューティ、おお、私のかわいいビューティ」 と、このあわれな商人は言うだけでした。

 小屋に着くと。 商人は娘たちに冒険談と野獣と交した約束について話しました。
「しかし、おまえを私といっしょに行かせはしないよ、ビューティ、たとえどんなことが起ろうとも」 と、彼は言いました。
しかし、ビューティは、いったん約束したからにはそれを守らなければならないと言いはりました。しまいには、父親もその月の終わりに彼女を野獣のもとへ連れていくことに同意しました。
ビューティと父親にとっては悲しい4週間でした。彼らはいつものようにせっせと仕事をしましたが、その小さな小屋の中には歌声もありませんでした。
その月の終りはあまりにも早くやってきました。商人は愛する娘を馬に乗せて自分の前にすわらせ、悲しみに満ちて森を抜けて出発しました。

 日暮ごろ、ビューティと父親は森の中の宮殿に着きました。前と同じように誰も見えませんでした。父親はビューティを馬から下ろし、彼がこの前訪問したとき、夕食と朝食を食べた部屋へ連れていきました。こんどは2人分のごちそうが食卓に並んでいました。しかし、1日じゅう何も食べていなかったのに、ビューティも父親もまったく食欲がありませんでした。

 彼らが食卓にすわると、恐ろしい音がドアのところに聞こえました。それが何であるのか商人は知っていましたし、ビューティも推測できました。
そうです、それは野獣だったのです。彼は入ってきて、まっすぐにビューティのところに行きました。

 野獣は長い間、ビューティをじっとみつめていました。
それから、彼は父親の方を向いてたずねました。「これが、おまえのために白いバラを集めてあげた娘なんだな」
「そうです」 と、商人は言いました 「彼女は彼女を連れずに、私があなたの宮殿に戻ることをどうしても許さなかったのです」
「彼女は悲しむ必要はない」 と、野獣は言いました 「というのは、この宮殿の中のすべてのものを使ってよいからだ。おまえは明日ここを出ていかなければならない。そしてビューティは私といっしょにここにとどまるのだ。おまえは恐れる必要はない。彼女に害を与えたりはしないから。彼女の部屋は用意ができている。おやすみ」
ビューティが彼女の部屋に着くと、それは見たこともない美しい部屋でした。疲れ果てていたので、彼女はすぐにぐっすり寝入ってしまいました。

 朝になって、ビューティと父親はいっしょに朝食を食べました。それから2人は激しく泣きながらさよならを言いました。
父親が視界から消えると、ビューティは自分の部屋に行きました。時間を過ごすために彼女はそこにある絵や装飾品を眺めました。一方の壁には奇妙な鏡がかかっていて、その下に金文字で次のように書かれていました。
「かわいいビューティ 涙をかわかしなさい
 涙やため息は必要ないのです
 この鏡をじっと見れば
 願いごとが何でもかないます」

この詩はビューティを慰めてくれました、というのは、彼女はもし不幸になったら、また家に戻りたいと願うことができると思ったからです。

 それからの日々はビューティには長く感じられました。しかし、野獣は彼女を楽しませるために多くのものを残しておいてくれました。彼女は時には本を読み、時には絵を描きました。ある日には庭に出て遊び、またある日には美しい花を集めました。毎晩夕食時になると、同じ音がドアのところに聞こえ、大きな声がたずねました 「入ってもいいですか」
そして毎晩ビューティは震えながら答えました 「はい、野獣さま」 それからビューティと野獣はいっしょにおしゃべりをしたのです。野獣の大きな体と声はビューティをこわがらせはしましたが、彼の言葉はすべてたいへん親切で、ビューティはだんだん彼をこわがらなくなりました。

 「私はたいへんみにくいですか」 と、野獣がある晩たずねました。
「はい、野獣さま」
「そして、たいへん愚かですか」
「いいえ、愚かではありません」
「私を愛することができますか、ビューティ」
「はい、私はあなたを愛していますとも、野獣さま、あなたはたいへん親切ですから」
「では、私と結婚してくれますか、ビューティ」
「おお。いいえ、いいえ、野獣さま」

 野獣はたいへん悲しそうに見えました、それでビューティはたいへんみじめな気持になりました。彼は彼女の最良の友人になっていました、だから、彼女は彼を悲しませるのに耐えられませんでした。「でも、私は野獣と結婚できないわ」 と、彼女はひとりごとを言いました。

 翌朝、ビューティは鏡をのぞきこみました。「愛するお父さまがどうなっているか知りたいわ」 と、彼女は言いました。そうして鏡を見ていると、悲しい絵が見えてきました。父親は病気で寝ており、誰も世話をしてくれる人はいないのです。ビューティは父親の苦痛とひとりぼっちなのを思って、1日じゅう泣きました。

 夕方になって野獣がいつものようにやってきたとき、ビューティがいかにも悲しそうなのに彼は気づきました。「どうかしたのですか、ビューティ」 と、彼はたずねました。彼女はそれで、なぜ悲しいのかを話し、家に行かせてくださいと頼みました。
「あなたが行ってしまうと、私の心は、ひき裂かれてしまうでしょう、ビューティ」と、野獣は言いました。

 「しかし、私はあなたが泣いているのを見るのは耐えられません」 と、野獣は続けました。「明日、家へ帰らせてあげましょう」
「ありがとう、ありがとう、野獣さま」 と、ビューティは言いました 「しかし、私はあなたの心をひき裂きはしませんわ。1週間以内にもどってくるようにします」
野獣は疑わしそうな顔をしました、彼はビューティを永久に失うのでないかと思っていたのです。
「この指輪を持っていなさい」 と、彼は悲しげに言いました 「もし、あなたがここへもどりたくなったら、夜寝る前にテーブルの上にこれを置きなさい。それでは、おやすみ、私のビューティ」
その夜、ビューティは鏡をのぞきこんで、翌朝父の小屋で目を覚すようにと願いました。

 ビューティの願いは、かないました、翌朝目が覚めると、彼女は自分の家に帰っていたのです。
父親は、ビューティに会った瞬間から回復しはじめました。ビューティは立派な看護婦で、たいへんよく彼の世話をしました。

 彼女はたいへん忙しくて、1週間がたったとき、そんなにたったとはほとんど信じられませんでした。しかし、父親はだいぶよくなってはいましたが、不親切な姉たちといっしょに置いていけるほどよくなっているとは、ビューティには感じられませんでした。
「私はもう1週間いることにします」 と、ビューティは言いました。すると、父親はそれを聞いて幸せそうにほほえみました。

 しかし、1日か2日しかたたないうちに、ビューティは夢を見ました。それは野獣が宮殿の庭のバラの茂みの近くで草の上に横たわっている夢でした。彼はこう言っていました 「おお、ビューティ、ビューティ、あなたはもどってくると言いました。あなたがいなければ死んでしまいます」
この夢をみて、ビューティは目を覚しました、そして、かわいそうな野獣のことについて考えるのに耐えられなくなりました。彼女はベッドからとびおきて、魔法の指輪をテーブルの上に置きました。それから彼女はまた眠りました。朝起きると、彼女は野獣の宮殿の自分の部屋の中にいました。

 ビューティは、野獣が晩までは会いにこないとわかっていました、まだ、昼はいつまでも終らないように彼女には思えました。
ついに夕食のときが来ましたが、野獣は来ませんでした。それから時計が9時を打ちましたが、野獣はまだ来ませんでした。
かわいそうに、ビューティはみじめな気分になりました。ついに、突然ある考えが浮かびました。彼女の夢が正夢だったらどうしよう。野獣が白いバラの茂みの近くで草の上に横たわっていたらどうしよう(と彼女は思いました)。

 ビューティは暗やみの中を宮殿の庭園へとかけていき、白いバラの茂みへと進んでいきました。

 そこには、野獣がバラの茂みの下の冷たい草の上に横たわっていました。最初ビューティは、彼が死んでいるのではないかと思いました。彼女は草の上の彼のそばにひざまずき、手を彼の頭の上に当てました。手をふれたので、野獣は目を開けました。

 「私はあなたなしでは生きられません、ビューティ」 と、彼はささやきました 「それで私は餓死しようとしていたのです。今や私はあなたにまた会えたので、満足して死んでいけます」
「おお、野獣さま、あなたが死ぬなんて、私には耐えられません」 と、ビューティは言いました。「どうか生きてください、私はあなたと結婚します。私はあなたを愛しています、ほんとうです。あなたはほんとうにやさしい心を持っています」

 ビューティはこの言葉を話し終えると、手で顔をかくして泣き続けました。彼女が見上げたときには、野獣は消えており、ハンサムな王子が彼女のそばに立っていました。彼は彼女に自由にしてくれたことを感謝しました。
「どういうことですか」 と、ビューティは驚いてたずねました。「おお、私は私の野獣がほしいのです、私の愛する野獣が、他の誰もほしくはありません」
すると、王子は説明しました。「悪い妖精が私に魔法をかけ、野獣になって愚かで醜く見えるようにしていなければならないと言ったのです」 と、彼は話しました。
「喜んで私と結婚しようとする美しい婦人だけが、呪いを解くことができたのです。あなたは美しい婦人です、ビューティ」 と、王子は続けました。

  それから王子はビューティにキスし、彼女を宮殿へと連れていきました。まもなく、よい妖精がビューティの父親を連れて現れました。
ビューティは王子と結婚し、自分の近くにきた愛する父親といっしょに、その後ずっと幸せに暮しました。


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