レディバードブックス100点セット
 

 

雪の女王

 昔、すばらしい魔法の鏡を作った、悪い魔法使いがいました。その鏡は、映すものすべてをみにくいものに変えてしまうのでした。
美しい緑の草原は、煮たキャベツのように見えました。愛らしい少女たちの顔はしみだらけになりました。一番仲のいい友だちでさえも恐ろしく見えるのです。その鏡に映ったものはすべて、なにかがおかしくなってしまうのでした。
ある、いたずら好きの小鬼たちが、その鏡をとてもおもしろいと思いました。彼らは大きな鏡を盗み出すと、それを持って空に飛び立っていきました。ところが鏡は彼らの手からすべり落ちて、粉ごなに割れてしまったのです。
かけらは地面にちらばり、人びとはそれを拾いあげてのぞきこみました。
窓ガラスほどの大きさのものもあれば、小さな破片になったものもありました。これらのかけらは人びとの心をひどく傷つけ、人びとはもう愛情や優しさを感じないようになってしまいました。もし鏡のかけらが目に入ると、なにもかもがひねくれてしまうのでした。

〈2人の子どもたち〉

 ある町のはずれの方に、1人の少年と1人の少女が住んでいました。名前はケイとゲルダといい、2人は貧しかったのですが、とても幸せでした。
2人は、2軒の高い家の向かい合った屋根裏部屋に住んでいました。屋根がとても近づいていたので、2人はそれを渡って、よくお互いの家に行って遊んでいました。
ケイとゲルダはそれぞれ、ちゃんとした庭のかわりに.小さな植木箱を持っていました。2人はそこにかわいらしい2本のバラの木を植えました、
バラの木は、2つの窓の間に花のアーチを作りあげていました。

 夏には2人はその下にすわって、本を読むことができました。ときおり、おばあさんがお話をしてくれました。

 冬には、雪片がまるで羽のように空から落ちてきて、風はひゅうひゅうとうなり声をあげました。子どもたちは外で遊べないので、おばあさんが2人に雪の女王の話をしてやりました。
「彼女は一番大きな雪のひとひらなんだよ」 と、おばあさんは言いました 「そして、ふぶきのなかを飛んでいくんだ」
「風がやむと、黒い雲のなかへ入っていってしまうんだよ。でも冬の晩に 、町じゅうを飛んで窓からなかをのぞきこむのさ」
「彼女が行ってしまうと、窓は、氷の花でいっぱいなんだよ」

 「うん、それは見たことがあるよ!」 と、ケイが叫びました。
「ここに入ってこられるかしら」 ゲルダがおずおずとたずねました。
「心配ないよ!」 ケイが言いました 「もし入ってきたら、ストーブの上にのせてやる。そうしたらとけてしまうよ」

 子どもたちはときどき、ペニー銅貨をストーブで熱くして、凍った窓ガラスに押しつけ、のぞき穴を作ることがありました。
ある晩、ケイはのぞき穴から外を見ていました。彼は、大きな雪片が植木箱のふちに降りるのを見ました。それはどんどん大きくなって、美しいまっ白な女の人になったのです。その女の人は、星の形をした雪片のマントを着ていて、目は冷ややかなダイヤモンドのようにピカピカ光っていました。
彼女はケイに手まねきをしましたが、ケイは恐ろしくて部屋にかけもどりました。女の人が飛び去っていくとき、その影が、大きな白い鳥のように窓の向うを通りすぎていきました。

 次の日、ケイとゲルダが雪のなかで遊んでいると、ケイが突然声をあげました。
「なにか目に入っちゃった!」 と、彼は言いました。「胸も刺すように痛かったぞ!」
魔法の鏡のかけらがケイの上に落ちてきたのでした。
彼は振り向くと、ゲルダが丁寧に作りあげた雪だるまをけとばしたので、ゲルダは泣きだしてしまいました。
「黙れ、泣き虫!」 ケイは意地悪く言いました。
「騒ぐんじゃないよ、もうろくばあさん!」 いったい、なにごとかと見にきたおばあさんに、彼はそう言いました。

 ケイは.もうゲルダと遊びたいと思いませんでした。そして木のそりに乗って、雪のなかを町へ遊びにいってしまいました。
1台の大きな白いそりが足の速い馬に引かれて、通り過ぎました。乗っていた人は、ずきんのついた白いマントを着ていました。ケイには、その頭を見ることはできませんでした。ケイは自分のそりを引っ張ってもらおうと、そのうしろに結びつけました。馬は風よりも早く走り、2人はまもなく郊外へ出ていました。

 それからそりは止まり、乗っていた人が振り返りました。なんと雪の女王だったのです!
「寒いでしょう、ケイちゃん!」 彼女は、 冷ややかなチリンチリンというような声で言いました。「私のコートの中へ入っていらっしゃい!」
ケイはそのなかに、気持よく体をおさめました。それはまるで、深い雪の吹きだまりのなかに横になっている感じでした。

 雪の女王は、彼の額に冷たいキスをしました。それでケイは魔法にかかってしまい、ゲルダのことも家のこともすっかり忘れてしまったのです。
そりはどんどん走り、雲の上高く、凍てついた北にある雪の女王のお城に向かって進んでいきました。

 下の方では冷たい風が、まるでむちのように野や森を激しく打っていました。狼が遠吠えをあげ、からすが鳴いていました。大きな明るい月がでてきて、ケイは、雪の女王の足元に丸くなって眠ってしまいました。

〈魔法の花園〉

 ケイはゲルダのことを忘れてしまいましたが、ゲルダは彼のことを忘れていませんでした。彼女は新しい赤いくつをはくと、彼を探しに出かけました。でも、だれもケイを見た人はいなかったのです。
ついに、ゲルダは川岸の土手にある、かわいらしいさくらんぼの果樹園にやってきました。彼女は、わらぶきの屋根で、黄色や青や赤いガラスの入った窓のある、小さな家をみつけました。
1人のおばあさんがドアのところに出てきました。おばあさんは、鮮やかな色で描いた花の飾りつけをした、すてきな帽子をかぶり、曲がりくねった杖を持っていました。
ゲルダは言いました 「ケイを見ませんでしたか」
「いいえ」 おばあさんは言いました。「でもなかに入って、さくらんぼを食べていったらどう」
ゲルダがガラスのはちのさくらんぼを食べている間、おばあさんは金のくしで彼女の髪をとかしてやりました。おばあさんは魔女だったのですが、とてもいい魔女でした。彼女はゲルダを自分の娘のようにして、ずっといっしょに暮したいと思っていました。

 魔女は、年じゅう夏の、魔法の庭を持っていました。そこでは、あなた方が思い浮かぶすべての花が咲いていて、すばらしいバラも何本かありました。
もしゲルダがそのバラを見たら、きっとケイのことを思い出すだろうということが魔女にはわかっていました。そこで彼女が杖をひと振りすると、バラの木は地面の下に消えてしまいました。
でも魔女は、自分の帽子に、赤いバラが描かれていたのを忘れていたのです。ある日ゲルダはそれを見て、ケイのことを思い出しました。
そこで彼女は、魔女と、1年じゅう夏の美しい庭とから、逃げ出していきました。外の世界は秋でした。
黄色い葉が落ち、もう寒くなっていました。
「ああ、なんということでしょう!」 ゲルダは言いました。「なんて時間を無駄にしてしまったのでしょう!」

〈王子さまと王女さま〉

 ゲルダは雪のなかを苦心して進んでいきました、ふたたび冬がやってきていたのです。
突然、彼女は大きなまっ黒なからすをみつけました、それは羽ばたきすると、彼女に向かってカーカーと鳴きました。「なにをしているんだい、娘さん、雪のなかにたった1人で」
「ケイをさがしているの」 と、ゲルダは言いました。「みかけなかったかしら」
「カーカー! う一む、えーと!」 からすは、しわがれ声で鳴きました。「その子は、あなたのように明るい目をして、金色の髪をしている少年かい」
「そうよ! そうよ!」 ゲルダは叫び、からすのピカピカのくちばしにキスしました。
「カー! カー! ちょっと待って!」 と、からすは言いました。「私の言ってる少年は、ついこの間、ここの王女さまと結婚したんだ。彼は、ある日、宮殿にやってきた貧しい少年で、王女さまは彼を好きになってしまったのさ」
「きっとそれはケイだわ」 ゲルダは言いました。「みんな彼のことを好きになってしまうんですもの。私を彼のところへ連れていってくれないかしら」

23. 「私の妻が宮殿で働いているんだ」 と、からすは言いました。「彼女が王子さまたちの寝室へこっそり入れてくれるだろう」
2羽の鳥は宮殿の裏の階段を上って、ゲルダを立派な部屋へ連れていきました。王子さまと王女さまは、ゆりの形をした2つのベッドで眠っていました。王女さまのベッドは白くて、王子さまのは赤でした。
ゲルダが赤いベッドの隅からのぞきこむと、王子さまが目を覚ましました。彼はきれいな顔立ちの少年でしたが、ケイではありませんでした!
ゲルダはとてもがっかりして泣きだしてしまい、王女さまも目を覚ましました。
2人はゲルダの話を聞くと、彼女に絹とベルベットのドレスを1着、毛皮のブーツと大きくて暖かなマフをやりました。そして、御者と4頭の白い馬つきの金の馬車も貸してやったのです。途中で食べるようにと、馬車には、お菓子や果物がたくさん積んでありました。
あのからすたちは一番高い木のてっぺんまで飛んでいって、ゲルダにお別れの手を振りました。彼女は、ケイをみつけたら、みんなに会いにもどってくると約束しました。

〈追いはぎ娘〉

 金の馬車は、追いはぎたちの潜む、大きな暗い森のなかを進んでいきました。追いはぎたちは馬車がさっと通りすぎるのを見て、「金だ! 金だ!」 と、わめきながら木の中からとびでてきました。
彼らは御者を殺して、馬をつかまえました。そして、馬車からゲルダを引っ張りだしました。
「かわいらしくて、丸まるとしていること! 朝ごはんに食べてしまおう」 と、ふさふさまゆげであごにひげを生やした、ふとっちょの追いはぎ女が叫びました。
でも、背中に乗っていた彼女の娘が母親の耳に思いきりかみつきました。娘はいたずら好きの乱暴な子でした。
「あの子を遊び相手にしたい!」 と、追いはぎ娘は言いました。「あの子のドレスとマフを私に渡して、あの子は私のベッドで寝るんだ!」
そして、娘はまた母親にかみつきました。娘は黒髪で、まっ白な歯に茶色い肌をした、とてもたくましい少女で、いつも自分の思ったとおりにするのでした。
彼女はゲルダにこう言いました 「私の言ったとおりにしていれば、まったく安全なんだよ」一同は、追いはぎたちの城へと馬車を進めていきました。

 お城は荒れ果てていて、窓はこわれ、壁には穴があいていました。そのまわりをみにくい黒い鳥たちが飛びまわり、中庭では、どう猛な犬たちが走りまわっていました。大きな広間のまん中では煙をあげながら火が燃えていて、何人かの追いはぎがテーブルのまわりでいびきをかいていました。家うさぎや野うさぎが追いはぎの夕食のために、焼き串の上で焼かれていました。
追いはぎ娘は、ゲルダに自分のペットを見せようと、広間のある隅に引っ張っていきました。それは、梁の上に止まっていたじゅずかけばとと、ふつうのはとの群れでした。1匹のトナカイも彼女のベッドの横に結びつけてありました。
「つないでおかないと、逃げてしまうのさ!」 彼女は笑って、トナカイの毛むくじゃらののど先を、自分のとがったナイフでくすぐりました。

 2人が毛皮の積んである下のベッドにもぐりこむと、ゲルダは話を始めました。追いはぎ娘は聞いていましたが、まもなく眠ってしまい、いびきをかきだしました。
じゅずかけばとの1羽がそれを聞いていて、ゲルダに話しかけてきました。
「ケイちゃんが雪の女王のそりに乗っているのを見たよ!クークー!」
「何ですって」 ゲルダは叫びました。「雪の女王はどこに行ったの」
「クークー! トナカイに聞いてごらん!」 と、はとは言いました.
「ああ、雪の女王は私の国に住んでいるんだ」 トナカイはうなずきました。
「それはどこにあるの」
「雪と氷に包まれたラップランドという美しいところだよ。凍った平野の上を何マイルだって走ることができるのさ」 トナカイは目を輝かせて言いました。「彼女はそこに夏のお城を持っているんだ。冬のお城は北極点の近くにあるんだよ」
「静かにおし、さもないとナイフでくすぐるよ」 眠そうに追いはぎ娘は言いました。

 朝になるとゲルダは、じゅずかけばとの言ったことを、追いはぎ娘に話しました。
「トナカイがケイをみつけに連れていってくれるよ」 追いはぎ娘は決めました。彼女はゲルダに毛皮のブーツを返してやりましたが、マフはおいておきました。そしてかわりに、ゲルダに大きな毛糸の手袋を与えました。
彼女はゲルダをトナカイの背中にくくりつけました、落ちないようにするためです。

 「パンとハムを少しあげる、途中でおなかがすかないようにね! さあ、私の気持が変らないうちに行ってちょうだい」 彼女は激しく言いました。
ゲルダとトナカイは雪でおおわれた田舎道を出発しました。狼が遠くで吠え、からすが鳴き、オーロラが空に輝いていました。
さらに北へ進むにつれて、どんどん寒くなっていきました。もうパンもハムも全部食べつくしてしまったとき、やっとラップランドに着いたのでした。

〈ラップ族の女とフィン族の女〉

 ゲルダとトナカイは、屋根の低い小さな小屋の近くで止まりました。なかはとても暗くて、においがたちこめていました。油を塗ったような顔をしたラップ人の女の人が、石油ランプの上で魚を料理していました。
ゲルダとトナカイは、女の人に雪の女王のお城へ行く道を聞いてみました。「まあ、かわいそうな子!」 年とった女の人は叫びました。
「まだ100マイル以上もあるよ! そこに住んでいるフィン人の女の人に手紙を書いてあげた方がよさそうね。彼女の方が私よりよく知っているからね! さあて、何に書こうかしら。紙は持ってないし」
そこで彼女は干したタラを取り上げました。「これがちょうどいいわ」
彼女はそう言うと、皮の上に何か走り書きをしました。
こうして、ゲルダとトナカイはまた出発していきました。オーロラがまだ空で、ぴかっと光ったり、ちらついたりしていました。それは雪の女王の花火でした。

 フィン人の女の人の家に着くと、煙突をノックしなければなりませんでした。とびらがあまりに小さく低かったので、見えなかったのです。
なかはとても暑く、湯気がたちこめていて、太ったフィン人の女の人は、ほとんど何も着ないで歩きまわっていました。ゲルダもブーツと手袋を取らなければなりませんでした。
フィン人の女の人は手紙を読むと、干したタラを鍋に入れて、煮てしまいました。彼女はなにも無駄にはしなかったのです!

 「私たちを助けてください!」 と、トナカイは言いました。「あなたがとても賢い女の人で、あらゆる種類の魔法の呪文を知っていることはわかっているんです」
「ケイちゃんは雪の女王のお横にいるわ」 フィン人の女の人は言いました 「でもあの子はそこが気に入ってるのよ。それは、彼の心のなかに、魔法の鏡のガラスのかけらが入っていて、目にはそのちりが入っているからなの。それでゲルダや自分の家のことを忘れてしまっているのよ」

 「彼を治す魔法の呪文を、ゲルダに教えてやることはできませんか」 と、トナカイは聞きました。
「ゲルダは、もう自分の魔力を持っているわ」 と、フィン人の女の人は言いました。「鳥や動物や人びとが、これまでにどれだけ彼女を助けてくれたかを見ればわかるでしょう。彼女は1人で雪の女王のお城へ行って、ケイを助けることができるわ、彼女は、愛の魔力を持っているからよ。
トナカイさん、あなたはただゲルダを雪の女王の庭のはずれまで連れていってやればいいの。赤い実がなっている大きな茂みのそばに彼女を降ろして、そこに残しておけばいいのよ」
そうして女の人はタラを食べはじめました。トナカイは、ゲルダがブーツと手袋を身に着ける暇がないほど、さっそく言われたとおりにしました。
トナカイは、彼女の顔をぎらぎらした舌でなめてやり、涙が彼の鼻をつたわりました。それから、トナカイは向きを変えると走り去っていきました。

 かわいそうなゲルダははだしで、雪のなかに取り残されました。彼女は雪の女王のお城に向かって走りました。みにくい格好の雪片の大群が、彼女に向かって吹きつけてきました。それらはみんな雪の女王の兵士たちでした。あるものはやまあらしのようで、あるものは小さなくまのようでもあり、またあるものはへびの群れのようでした。みんな邪悪なものばかりでした。

 ゲルダにはどうしたらいいかわかりませんでした。彼女は小さな祈りを唱えました。彼女の息が白いかすみのように口から出てきました。それは小さくて白い天使のようなキラキラ輝く雪片となり、1列に並んで彼女を守ってやったのです。みにくい雪片は消えてしまい、彼女は無事進むことができました。急に彼女は暖かくなり、もう怖さを感じなくなっていました。

〈その後、雪の女王のお城で起ったこと〉

 ゲルダが外にいたなんて、ケイは思いもしませんでした。お城は大きくてがらんとしたところで、雪の吹きだまりを積み重ねて作ったものでした。
窓やドアは、刺すような風が吹いてできた穴でした。そこには何百もの広間があって、あちこち開け放されていて、何マイルもの広い部屋になっているものもありました。
どこもかしこもとても寒く、いつも決まったときに光るオーロラで照らされていました。だれもこのお城でパーティーを開いたことがありませんでした。北極グマのダンスさえもなかったのです!

 一番大きな広間のまん中で雪の女王が王座にすわっていました、その王座は、凍った氷の湖のまん中に置いてありました。湖の氷は何千ものかけらに割れていました。

 ゲルダがお城のなかへ入る道をみつけたときには、もう雪の女王はいなくなっていました。彼女は、ケイが震えながら王座の階段の上にすわっているのを見ました。彼は寒さで青ざめていましたが、それを感じませんでした、雪の女王が、彼の心を氷の固まりに変えてしまっていたからです。
彼はすわりこんで、氷のかけらで遊んでいました、そして、かけらを並べて言葉を作ろうとしていたのです。もし彼が”永遠”という言葉をつづることができたら、雪の女王は、彼を家に帰してやると言っていたのです。
でも彼は今までに、まだその言葉をつづることができませんでした。ゲルダは彼のところに走り寄ると、抱きつきました。

 でもケイは硬く冷たくて、彼女のことがわかりませんでした。ゲルダは泣きだしてしまいました。彼女の暖かく愛情に満ちた涙がケイの顔を流れ、胸へと落ちました。彼の心のなかの氷が溶けて、ガラスの破片が出てきたのです。
それから、ケイも泣きだし、目のなかに入っていたガラスのちりも流れ出てきました。
子どもたちが下を見ると、氷のかけらが跳ねまわっていました。そして、かけらはつづったのです──永遠と! ケイは自由の身になりました!

 「ここはなんて寒くてがらんとしているんだろう!」 と、彼は言いました。
「ぼくはどのくらいここにいたんだろう」
ゲルダは彼の顔にキスしました。彼のほほに赤みがさしてきました。彼の目も輝いていました。手を取り合って、2人の子どもは氷づけのお城をとびだし、雪の上を走って、赤い実のなっている茂みのところにやってきました。
トナカイが2人を待っていました。トナカイは2人をすばやく運んでフィン人の女の人の家へ連れていきました。そこで2人はふたたび暖まって、食事をしました。
それから2人はラップ人の女の人の家へ行きました。彼女は2人に新しい服を作ってくれ、そのあとの旅のためにそりを貸してくれました。
冬ははるかうしろの方に取り残され、日が出てきました。

 ゲルダとケイは、町にある、自分たちの屋根裏の家へ帰る道をみつけました。おばあさんがいつもの場所にすわって、聖書を読んでいました。
ゲルダとケイはもう大分大きくなっていましたが、屋根裏の階段をいっしょにかけあがりながら、まるで小さいときと同じように、また幸せを感じていました。


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