レディバードブックス100点セット
 

 

勇敢な小さな仕立屋

 ある朝早く、ひとりの仕立屋が窓のところにすわってズボンを縫っていました。彼はちょっとの間、仕事から目をあげると、市場に行く途中の田舎娘が見えました。彼女のかごには新鮮な果物のジャムのびんがいっぱいはいっていました。

 さて、仕立屋はジャムが大好きでした。朝食時になっていましたので、彼はジャムを買い、それを固いパンにぬって、すぐ食べられるようにしました。しかし、まずズボンを縫いあげなければなりませんでした。

 突然、はえの群が、仕立屋のパンとジャムの上にとまりました。それで仕立屋はたいへん怒りました。彼は布切れをつかむと、はえめがけて打ちおろしました。

 おどろいたことには、彼は七匹も殺しました。彼はすっかりうれしくなりました。
「私は、なんてすばらしい男だろう!」 と、彼は思いました。
「なんて勇敢な男だろう! 全世界に私のことについて知らせなければならない」

 彼はすぐに腰を下ろして、自分でベルトを作りました。それから、彼はベルトに大文字で 「一打で七つ」 という言葉を刺しゅうしました。

 「私はこの店を出て、全世界に私がいかに勇敢であるかを知らせよう」 と、彼は決心しました。

 彼は途中で食べようと、山羊の乳で作った小さな丸いチーズをとりあげ、ドアにかぎをかけました。彼は出発するときに、やぶの中でわなに捕まったちっぽけな茶色の鳥をみつけました。彼はやさしくそれをわなから外し、ポケットにほうりこみました。

 自分のしたことについて叫びながら、彼は町の通りを誇らし気に大股で歩いていきました。人びとは彼の言うことを聞くとびっくりしました。

 「一打で七つ!」 と、彼らはおどろいてささやき合い、家の中へかけこんでかぎをかけました。彼が殺した七つが、はえだとはだれも知りません。

 小さな仕立屋は谷を渡り、丘を越えて進んでいきました。突然、大きな影が行く手にうつりました。それはものすごく大きな巨人でした。

 「どけ、どけ!」 と、仕立屋は叫んで、上着の前をひろげ、彼のベルトを指さしました。

 巨人は 「一打で七つ」 の言葉を読んであえぎました。それから彼は笑いだしました。「では競技をしよう!」 と、彼はうなるように言いました。
「もしおまえが勝てば、通してやるぞ」

 彼はそう言うと、石を拾いあげました。彼はありったけの力でそれをにぎりしめました、すっと水が一滴にじみ出ました。

 すばやく、仕立屋はポケットの中の小さな丸いチーズを思いだしました。彼は片手でそれをにぎりしめると、水が地面の上にこぼれました。巨人はびっくりしました。なぜなら、彼はそれが石だと思ったからです。

 次に、巨人は別の石を拾って、それを丘の方へ投げました。彼らはその石が向うの湖にバシャンと落ちるのを聞きました。

 それが落ちたとき、仕立屋はポケットの中の茶色の小鳥を思いだしました。彼はそれが石だというふりをして、それを空中に投げあげました。それはまっすぐ空高く飛んでいきました。
「きみの石は湖に落ちたが、私の石は決して地面に落ちてこないだろう」 と、小さな仕立屋は自慢しました。

 「もしおまえがそんなに強いのなら、おれがこの木を運ぶのを手伝ってくれ」 と巨人は命令し、かしの大木を根こそぎ引き抜きました。
「いいとも」 と、仕立屋が答えました。「きみは幹を持てよ、ぼくは技を持ってやろう、枝の方がたくさんあるからな」 と、彼はずる賢くつけ加えました。

 仕立屋は枝にとび乗りました、彼は葉っぱで体が見えなくなりました。
かわいそうに、巨人は木といっしょに、賢い小さな仕立屋も運ぶことになりました。

 かしの木はたいへん重かったので、巨人はすぐにそれを下ろさなければなりませんでした。そのとき仕立屋はとび出して、今までずっと運んでいたかのように、枝を両手で支えました。

 巨人は恐れ入って、彼と、二人の巨大な兄弟といっしょに一夜を過ごすようにと、仕立屋を招待しました。夕食に巨人たちは、それぞれが焼いた羊をまるごと一頭食べ、ぶどう酒をひと樽飲みほしました。

 夕食後、彼らは仕立屋にとてつもなく大きなベッドを与えました。それは彼にはあまりにも大きすぎたので、仕立屋はベッドには入らず部屋の隣で寝ました。

 三人の巨人は、「一打で七つ」 殺した、この小さな仕立屋のことをたいへん厄介に思っていました。彼らは彼が眠ってしまったと思うと、重いこん棒を手にして忍びこみ、仕立屋のベッドを打ちはじめました。彼らはたいそう激しくたたいたので、ベッドはこわれてしまいました。

 仕立屋はずっと部屋の隅にいたのでまったく無事でした。それで、次の朝早く起きて口笛を吹き、歌をうたいました。

 三人の巨人は、自分たちがあんなに強くなぐったのに彼を殺せなかったのにひどくたまげ、恐ろしくなって逃げてしまいました。彼らは二度と姿を現しませんでした。

 勇敢な小さな仕立屋は、自分がした行為を誇りに思いながら、町や田園を、その日じゅう歩きました。彼はベルトを示して 「一打で七つ!」 と、ときどき叫びました。

 何マイルか歩いて、彼はある宮殿へ着きました。歩き疲れていたので、彼は門のそばで眠ってしまいました。宮殿警護の兵士たちが通りかかって、彼のベルトと 「一打で七つ」 の文字を見ました。彼らは王さまに知らせに走りました。

 王さまは、彼を起して宮殿に連れてくるように、兵士をつかわしました、王さまは仕立屋のことを偉大な英雄だと信じたのです。彼は 「一打で七つ」 は、はえではなく人間のことだと思っていました。

 「わしの国には二人の恐ろしい巨人がいる。わしたちは彼らの恐ろしいしわざをおそれながら暮らしているのだ」 と、王さまは仕立屋に言いました。
「おまえがわしのために彼らを殺してくれれば、わしの王国の半分を与え、わしの娘をおまえの妻にくれてやろう!」

 「私におまかせください!」 と、小さな仕立屋は言って、すぐ出発しました。王さまは最強の兵士を百人、彼の手伝いにつけました。

 巨人の住んでいる場所に近づくと、小さな仕立屋は、王さまの兵士たちの方を向きました。「危険な目に会わないように、ここにいなさい」 と、彼は言いました。「私がひとりで巨人をやっつけるから!」
兵士たちはたいへんびっくりしました。どうしてそんなに勇敢になれるのだろう。しかし彼らは、仕立屋が 「一打で七つ」 殺したことを知っていました!

 仕立屋は二人の巨人をさがして、あたりを見まわしながら、静かに忍び足で進みました。とうとう彼はみつけました──彼らは木の下で眠っていました。すはやく彼は、みつけられるかぎり重い石をポケットにつめこみました。それから、その木に登りました。

 音をたてずに、彼はいびきをかいている一人の巨人の上に石をひとつ落とし、それから、もう一人の巨人の上にも石をひとつ落としました。彼らはそれぞれ、もう一人が自分をなぐったのだと思い、二人とも、ほんとうに怒って目を覚ましました。

 次の瞬間、彼らは戦っていました。怒りのあまり、彼らは木をひきぬき、お互いめがけて重い石を投げ合いました。彼らは、たいへん激しく戦ったので、森の中をころげまわって、すべての木を押しつぶしてしまいました。

 彼らは行く手にある物置や、柵や、乾草の山などをこわしながら、丘の斜面を転がり落ちました。じっさい、彼らは戦いに夢中で、崖っぷちから転がって海に落ちてしまいました、そして、二度と彼らの消息は知れませんでした。

 勇敢な小さな仕立屋は宮殿にもどって、ほうびを要求しましたが、王さまには、彼にしてもらいたいことがあと二つありました。

 「わしの森をうろついている一角獣と、いのししを捕えてくれ」 と、彼は命令しました。「そうしたら、わしの王国の半分とわしの娘を与えよう。手助けにわしの狩人を連れていけ」

 「そんなことは朝めし前ですよ!」 と、仕立屋は笑いとばして、また出発しました。彼は全速力で走りだしました。すぐに、彼はずっと先に行って、狩人たちからは見えなくなってしまいました。

 突然、一角獣がものすごいうなり声をあげて、彼をめがけてまっすぐにやってくるのが聞こえました。すばやく彼は木のうしろにとびのきました。
一角獣は止まることができず、角が木の幹にしっかりと突きささってしまいました。仕立屋は計略で彼をつかまえたのです!

 仕立屋は 「私はなんと利口なのだろう!」 と、ひとり思いながら、木のうしろから出てきました。
すると次の瞬間、彼の喜びは恐怖に変りました。いのししが怒り狂って、かけてきたのです。仕立屋はまわれ右をして、命がけで逃げました。

 かけていくうちに、うまいぐあいに空地に一軒の小屋がありました。彼は小屋めがけて突進して、そのドアを開け、自分は横にとびのきました。

 いのししが彼を通りすぎて小屋にとびこんでしまいました。とてもすばしっこく、仕立屋はドアをパタンと閉じて──いのししを生け捕りにしました!

  恐れおののいていた王さまの狩人たちが、一人また一人と森からはい出してきました。彼らはすばやく二頭の獣をしばりあげて、勝ち誇ってそれらを宮殿に持ち帰りました。

 王さまは大喜びでした。「わしの王国の半分と娘をさしあげよう。わしたちといっしょにいておくれ、勇敢な小さな仕立屋さん。わしたちの国は[一打で七つ]殺した人といっしょなら、いつまでも安全だろう!」


もどる