レディバードブックス100点セット
 

 

オズの魔法使い

 ドロシーは孤児でした。彼女はアメリカのカンサス州の大草原のまん中に、農夫である叔父のへンリーと、その妻エムとし・っしょに住んでいました。彼らの家は小さい家で、部屋が1つしかなく、床には地下室に通じるあげぶたがありました。それは、行く手にあるどんな建物でも押しつぶしてしまうつむじ風が、大草原にはしばしば起るからでした。つむじ風がやってくると、家族は地下室におりて無事でした。
ドロシーが外を見ても、灰色の大草原のほかは、何も見えませんでした。木は1本も生えておらず、地面は太陽に照らされてひび割れていました。
エム叔母さんとへンリー叔父さんは陰気でした。彼らは一生懸命働きましたが、決して笑顔を見せませんでした。
ドロシーは陰気ではありませんでした… 彼女は笑い、彼女の小さな黒い大のトートーとし・っしょに遊びました。ドロシ」はトートーをとてもかわいがっていました。
ある日、空がたいへん暗くなりました。へンリー叔父さんは心配そうでした。ドロシーはトートーをだきあげました。エム叔母さんはお皿を洗っていました.風の低くむせぶような音がきこえ、草がさざ波のようにゆれ、かたむくのが見えました。「つむじ風がやってくるぞ、エム!」と、ヘンリー叔父さんが叫びました。そして、めうしの面倒を見るためにかけ出していきました。

 「急いで、ドロシー!」と、エム叔母さんが金切り声で叫びました。「地下室に走りなさい!」彼女はあげぶたを開けて、急いではしごをおろしました。
ドロシーがトートーをつかまえようとしたちょうどそのとき、家が風に巻きこまれ、彼女はまっさかさまに床に倒れました。家は2、3回ぐるぐるとまわり、ゆっくりと空中にあがっていきました。

  ドロシーは、まるで気球に乗って空にあがっていくような気がしました。つむじ風は家を吸いあげて、それを羽毛のように運びました。
トートーはあぷなくあげぶたから落ちそうになりましたが、ドロシーが彼の耳をつかんであげぶたを閉じました。それから彼女はベッドへ這っていって横になりました。
数時間がすぎ、ドロシーは恐怖を乗り越えました。家は揺れていましたし、風は鳴っていましたが、彼女は眠ってしまいました。

〈ドロシーがマンチキンの人たちに会う〉

 ドロシーは突然のパタンという音に目を覚しました。家は動きが止まっていました! 彼女は自分たちがどこにいるのか見ようと、戸口にかけ寄りました。
つむじ風は、美しい国に彼らをやさしく下ろしていました。果物がなり、花が咲き、鳥が歌っていました。それはカンサスとはまるで違っていました。
ドロシーがじっと見ていると、奇妙な小さな人たちが彼女の方にやってくるのが見えました。長靴をはき青い服を着た3人の男と、白い服を着た小さな年とった女の人でした。彼らはみんな先のとがった丸い帽子をかぶっていました。

 彼らはドロシーのところへやってくると、小さな女の人が叫びました。「マンチキンの国へようこそ! 東の悪い魔女を殺してくださってありがとうございます、彼女は長いこと私たちを奴隷として働かせていたのです!」
ドロシーはたいへんとまどいました。彼女は自分がだれも殺していないことを知っていたのです。

 マンチキン人たちは彼女を家から連れだし、彼女にひとつのすみから突き出している銀色の靴を見せました。つむじ風がドロシーの家を惑い魔女の上に落として、魔女を押しつ,ぶしてしまったのです!
「あれが彼女の最期です!」と、小さな女の人が言いました。「あれは彼女の魔法の靴です。あなたはそれをとらなくてはなりません」
「あなたはどなたですか」と、ドロシーはたずねました。
「私は北のよい魔女で、マンチキン人を助けにきたのです。私の妹は南のよい魔女です。私たちは、自分たちで東と西の悪い魔女をたいじできるほど強くはありません。しかし、あなたのおかげで、この度女は死んでしまいました!」

 「マンチキン人とはどんな人たちですか」
「彼らはオズの国の東の部分に住んでいます。カドリング人は南に、ウィンキー人は西に住んでいて、北が私のふるさとです。中央にエメラルドの都があり、そこにオスの魔法使いが住んでいます」
「私は、魔女も魔法使いもみんな、ずっと昔に死んだものと思っていました!」と、ドロシーは言いました。
「オズの国では死んでいませんよ」と、魔女は答えました。ドロシーは新しい友人たちに、ヘンリー叔父さんとエム叔母さんの話をし、カンサスに帰る道を彼らにききました。
「オズの国は、越えるのにたいへん危険な砂漠に囲まれています」と、マンチキン人たちが言いました。

  ドロシーは泣きだしました、するとマンチキン人たちも同情してハンカチを出して涙をふきました。
よい魔女は考えこんでいる様子でした。「あなたはエメラルドの都に行くべきですりと、彼女は言いました。「オズの魔法使いがあなたを助けてくれるでしょう!」
「どうしたらそこへ着きますか」と、ドロシーはたずねました。
「歩いていかなくてはなりません」と、魔女は言いました。「黄色のれんがの道を」
「あなたもし・っしょに来られませんか」
「いいえ、しかし、あなたを守るために魔法のキスをしてあげましょう」
よい魔女は、ドロシーのひたいにキスしました、すると光り輝くあとが残りました。それから彼女は左のかかとを軸にして3ノミん回って消えてしまいました。

〈ドロシーはどうやってかかしを助けたか〉

 ドロシーはトートーと朝食を食べました。彼女は、みぎれし・な青と白のチェックのドレスを着、ピンクの日除け塙をかぶりました。
彼女の靴はほとんどすり切れていました。そこで、彼女は悪い魔女の銀色の靴をはきました。それから、ひとかたまりのパンをかごに入れて、彼女とトートーは黄色のれんがの道を(都を)さがしに出発しました。

 小ぎれいな青いさくがあり、よく実ったとうもろこしの畑があって、マンキンの国はきれいでした。マンチキン人たちは彼らの丸い青い家から出てきて、彼女にあいさつしました。
「エメラルドの都までどのくらいありますか」と、彼女はたずねました。
「オズの国には近よらない方がいいですよ」と、彼らは首を横に振りながら言いました。「それに都までは遠いですよ」

 しかしドロシーは、勇敢にももどらないと決心しました。彼女は数マイル歩いていくと、大きなとうもろこし畑の近くのさくに腰かけて休みました。
畑にはかかしが、棒の上高くにつき立っていました。彼の頭は麦わらをつめこんだ小さな袋で、目と岸と口がその上に描かれていました。彼は古ぼけた青い先のとがった帽子をかぶり、麦わらをつめた色あせた青い上着を身につけ、つま先が青い古ぐつをはいていました。
ドロシーがその描かれた顔を見ていると、かかしは片目をつぶってウインクし、親しそうにうなずきました。ドロシーはさくから下りて彼のそば行きました。

 「あなたは話せますか」と、彼女はたずねました。
「もちろん話せます! ごきげんいかがですか」
「至極元気です」と、ドロシーはてし・ねし・に言いました。「それで、あなたは」
「あまり元気ではありません」と、かかしは言いました。「からすをおどすために、この様に1日じゅうくくりつけられているのはたいくつなものです」
「あなたを下ろしてあげましょう」と.ドロシーは言いました。彼の中身は麦わらなので、かかしはたいへん軽いのでした。

 かかしは彼女がだれで、どこへ行こうとしているのかききました。ドロシーが、魔法使いにカンサスへ帰してくれるように頼むためにエメラルドの都へ行くのだと答えると、彼はいっしよに行ってもいいかとききました。
「たぶん魔法使いは、私にのうみそをくれるかもしれません。こらんのように、私はのうみそを持ってません、私の頭の中は麦わらなのですから!」
ロシーはいっしょに来ていし、と言い、彼らは道へもどりました。かかしはドロシーのバスケットを運びました。

〈ブリキの木こりの救出〉

 旅人たちは空き小屋をみつけて泊まりました。かかしは朝食をとりませんでした、彼の[]はただ描いてあるだけでしたから、それに、夜も限りませんでした。
「眠ったり、食べたり、飲んだりすることは厄介なことでしよ!」と、彼は言いました.「しかし、のうみそを持つことは厄介だけれど、その値うちがあるにちがし・ありません'」
このときまでに、彼らは森の中に入っていました。突然、木の間に、何かが日の光に輝いているのが見えました。
1本の木が、少し切られていました。そのそばに、全身ブリキでできた人が斧を両手で持って立っていました。

 彼らが見ていると、彼は大きなうめき声を立てました。
「何かお役に立てますか」と、ドロシーは叫びました。
「私は継ぎ目がさびついて動けないのです」と、彼は言いました。「私の小屋から油のかんをとってきてくださいませんか。油をさせば、また動けるようになるでしょう」

 ドロシーは急いで油のかんをとってきました。彼女とかかしは、彼が助けるように手助けをしました、そのため彼は斧をおろすことができました。
彼は彼らに感賞しました、そして、彼らが行こうとしている織所を聞くと、彼は言いました「魔法使いは私に心臓をくれると思いますか」彼は東の思い魔女が彼をブリキに変えてしまい、彼の心臓をとってしまったのだと説明しました。彼は他の人たちのように感情を持ちたかったので、それをとりもどしたかったのです。
ドロシーは承知しました、そこで、ブリキの木こりは斧をかつぎ、彼らはみんな、森の中の黄色いれんが道を歩き続けました。

〈おくびようなライオン〉

 しばしば、彼らは木々の脚にかくれている野戦のすごいうなり声をききました。
「こわがることはありませんよ」と、ブリキの木こりがドロシーに言いました。「私は斧をもっているし、あなたのひたいには、よい魔女がつけたしるしがあるのですから」
恐ろしいうなり声のきこえたちょうどそのとき、大きな銭褐色のライオンが道にとび出してきました。前足の一撃で彼はかかしを打ち倒しました。次にブリキの木こりにおそいかかりましたが、彼の爪はブリキをひっかいただけでした。

 トートーはほえながら彼に向かっていきました、するとライオンは口を開けてトートーにかみつこうとしました。ドロシーはかけ寄って、ライオンの岸をきつくなぐりつけました。
「おくびょう者め!」と、彼女は言いました。「おまえのような大きな動物がこんな小さな犬をかもうとするなんて! それにかわいそうなかかしを打ち倒したのですよ!」
「すみません!」と、ライオンは前足で幕をこすりながら言いました。「どうにも仕方がないのです。だれもがライオンは勇ましいものだと思っています、それで、私はうなり、人びとにとびかかるのです、すると、彼らは逃げていきます。しかし、ほんとうは私の方がとてもこわいのです!」

 「もしあなたが私のように心臓を持っていなければ、そんなおくびょう者にはならないでしょう」と、ブリキの木こりは言いました。「しかし、私は心臓をもらいに大鹿法使いのもとに行くところです!」
「私はのうみそをもらいに行くところなのです!」と、かかしが話に割りこみました。
「私もあなた方といっしょに行きたいです。彼は私に勇気をくれるでしょう」
「そうね、それに、あなたがいれば、他の野獣たちは私たちに近づかないでしょう」と、ドロシーが言いました。
そこで彼らは出発し、そしてまもなく、彼らはみんな仲良しになりました。

〈魔法使いに会いにいく旅〉

 その夜、ブリキの木こりは木を切って火をたきました。
朝になって、彼らは、底にぎざぎざの岩がある、幅の広い深いみぞを越えなくてはならないことに気がつきました。
「私は、これをとび越えられるんじゃないかと思うよ」と、ライオンは少し疑わし気に言いました。「私は蕗っこちるのがとてもこわいよ、しかしやらなければと思うんだ」
そこで、一番軽いかかしがライオンの背中に乗りました。ライオンは断崖のふちで身をかがめました。それから彼は大きく跳んで、向う岸に下りたちました。彼らはみんなかっさし、しました、それから彼はもどってきて、一度に1人ずつみんなを向う岸へ渡しました。

 彼らは急ぎました、するとまた、深いみぞがありました。こんどは、それは広すぎて、ライオンにもとび越せそうにありませんでした。
「ねえ!」と、かかしが言いました。「ブリキの木こりさんがあの木を切り倒してくれれば、木がみぞの向う側にかかって、私たちはその上を疲れるより
「なんといい考えだろう!」と、ライオンが言いました。「だれでも君の頭の中には、麦わらでなくて、のうみそがはいっていると思うだろうよ!」
彼らはかかしが言ったとおりにしました、そしてやがて森を抜けて、美しい田園の川の土手にやってきました。
「どうしたら渡れるだろう」と、かかしが言いました。「私は泳げないのだ!」
「私も泳げない」と、ブリキの木こりが言いました。「しかし私はいかだを作ることができるよ」

<川の向こう>

 ブリキの木こりのいかだで川を越えてしまうと.また国がありました。
道のどちら側にも、緑の畑や緑のさくや緑の家がありました。人びとはマンチキン人たちと同じような服装をしていましたが、色は青ではなくて緑でした。
「これは力ズの国にちがいないわりと、ドロシーが言いました。
しかし、人びとはそんなに親切ではありませんでした。「魔法使いは、あなた方にお会いにならないでしょう!」と、彼らは言いました。「彼は、宮殿から決してお出になりません」
「彼はどんなかっこうをしているのですか」と、ドロシーはたずねました。
「私たちはだれも、あの方にお会いしたことがありません。あの方は魔術師なので、ご自分の姿を変えることができるのです!」

〈門の番人〉

 仲間たちは黄色のれんが道を進んでいくと、とうとう美しい緑の輝きが空中に現れました。
「あれはエメラルドの都にちがいないわ!」と、ドロシーが叫びました。
そして、たしかに、緑の色はいっそうその輝きを増しました、とうとう彼らは、高く厚く明るい緑のへし、に着きました。

 色のれんが道は、大きな門の前で終り、その門にはエメラルドがちりばめてあってたいへん明るく、かかしでさえもその描かれた目をぱちくりしなければならないほどでした。
彼らはベルを鳴らしました、すると門が開いて、エメラルドで輝いている高い丸い天井の部屋に、彼らは導かれました。
そこには小さな緑色の人が、大きな緑色の箱のそばにすわっていました。
「私は門の番人だ!」と、彼は言いました。「おまえたちはエメラルドの都にどんな用があるのだ」

 「私たちは魔法使いさんに会いにきたのです!」と、ドロシーが言いました。
「十分な理由があるのだろうな」と、番人が言いました。「魔法使いさまはたいへん恐ろしいお方だ、理由がないと、おまえたちを即座に殺してしまわれるだろうよ。私はおまえたちを宮殿に連れていってあげよう‐ しかし、この緑のめがねをかけていなくてはいけないよ。めがねをかけていないとエメラルドの都の明るさで目が見えなくなってしまうからね!」そして.番人が箱を開けると、そこにはめがねがいっぱい入っていました。
そこで、彼らはそれぞれめがねをかけ、番人の後についてエメラルドの都へ入っていきました。

〈オズのすばらしいエメラルドの都〉

 めがねをかけていても、ドロシーとその仲間たちは、エメラルドをちりばめた緑の大理石の都の壮麗さに目がくらみました。空は緑色でしたし、見知らぬ人たち(ドロシーたち)をみつめる人たちさえも緑色に見えました。市場の屋台では、緑色のキャンデーや緑色のレモネードさえ売られていました!
力ズの宮殿は、長い緑色のあごひげを生やした兵士に守られており、彼は魔法使いに彼らが到着したことを知らせにいきました。彼らが待っている間に、ドロシーは魔法使いに会いにいくために緑色の服を着なくてはなりませんでした。
兵士がもどってきて、魔法使いが1人ずつ彼らにお会いになる、ドロシーが最初だと説明しました。「なぜならば、あなたにはよい魔女のつけたしるしがひたいにあるからです。また、あなたは銀色の靴をはき、緑色のドレスをきていますから!」
ドロシーは玉座のある部屋に連れていかれました。彼女に入れと合図するベルが鳴りました。

 玉座のある部屋は華麗な部屋でした。エメラルドをちりばめた高い丸天井があり、天井には太陽のように輝く大きなあかりがついていました。大きな緑色の大理石の玉座がまん中にありました。

 玉座には、体も腕も足もない、ものすごく大きなはげ頭が乗っていました。その目はくるくると動き、そしてドロシーには、きいきい声で、こう言っているのが聞こえました。「わしが億大で恐ろしい魔法使いだ! おまえはだれで、何をしにやってきたのだ」
「わたしはドロシー、従煩でひかえめな少女です。私は、カンサスのへンリー叔父とエム叔母のもとへ帰してくれるように、お願いしにまいりました」
「おまえはどこでその銀色の靴を手に入れたのかな」
ドロシーは東の悪い魔女について話しました。「ひたいのしるしはどこでつけてもらったのだ」と、彼はたずねました。
それでドロシーは、北のよい魔女のことを話しました。
「もしおまえがカンサスへもどりたいのなら、私のために何かしなくてはならない! 西の悪い魔女を殺してこい!」
「私にはできません! 私はほんの小さな少女ですもの!」と、ドロシーは抗議しました。
「おまえは東の魔女を殺したではないか!」と、声がきびしく言いました。
「しかし、それは偶然だったのです!」と、ドロシーは涙ながらに言いました。ドロシーはすっかり心を乱して仲間のところにもどり、魔法使いが彼女に何をしろと言ったかを彼らに話しました。

〈ドロシーの仲間たちが魔法使いに会う〉

 翌日はかかしが呼ばれました。
こんど、魔法使いは宝石のついた王冠をかぶり、ちょうちょのような羽をもった、美しい緑色の貴婦人の姿をしていました。

 かかしは、のうみそをくださいと頼みましたが、彼にもドロシーのと同じ返事が返ってきました。彼もまず西の魔女を殺さなくてはなりませんでした。
次はブリキの木こりの番でした。こんど、魔法使いはふっくりした緑色の毛におおわれた見るも恐ろしいけものでした。大きさはそうくらいで、さいのような頭を持っていました。しかしブリキの木こりは心臓がなかったので、おどろきませんでした。彼も他の人たちと同じ返事をもらいました。彼は心臓をもらう前に、ドロシーが西の魔女を殺すのを助けなければなりませんでした。
最後にライオンがいきました。こんど、魔法使いは火の玉で、ライオンのほおひげをこがしました。
「わしに悪い魔女が死んだとし・う証拠を持ってこい、そうすれば勇気を与えよう」と、火の玉が言いました。
ライオンは仲間のところへもどりました。「私たちは彼の言うとおりになければならないでしょう、さもないと、私は勇気をもらえません!」
「私ものうみそをもらえない!」と、かかしが言いました。
「私も心臓をもらえない!」と、ブリキの木こりが言いました。
「私もカンサスへはもどれないわ!」と、ドロシーが言いました。

〈悪い魔女の捜索〉

 兵士が彼らに指図しました。
「西へどんどん進みなさい、太陽の沈むところへ。しかし気をつけなさいよ。魔女は、いったんあなたたちが彼女の国にはいったと知ると、あなたたちを奴隷にしてしまいますからね」
西の、惑い魔女の日はひとつしかありませんでしたが、それは強力な望遠鏡のようなものでした。彼女はお城の戸口に立って彼女の国じゅうを見渡していて、はるか遠くでドロシーとその仲間が眠っているのをみつけました。

 そこで彼女は銀の笛を吹いて、血に飢えたおおかみの群を呼びよせました。「あいつらのところへし・って、粉ごなに引きさいておやり!」と、彼女は命令しました。
「承知しました」と、群のり一ダーは答え、他のおおかみたちを従えてうなり声をあげながら走り去りました。
しかし、ブリキの木こりは目を覚していました。彼は斧をつかみました。狼が輝く歯をむき出してやってくると、彼はひとつまたひとつと、すべての頭を切り落としてしまいました!

 魔女はたいへん怒って、笛を吹き、醜い黒いからすの群を呼びよせました。「やつらの目玉をつつき出し、彼らを粉々にしてしまえ」と、彼女は金切り声で言いました。からすは、か一か」鳴きながら飛び去りました。
しかし、かかしが彼の腕をひろげました。からすは1羽また1羽と彼のそばを通りすぎました、すると彼は次々とからすをつかまえ、その首をねじ切ってしまいました。
それで、悪い魔女はどう猛な黒い蜂の群を呼びにやりました。「彼らを刺して殺してしまえ!」と.彼女は命令しました。
しかし蜂はブリキの木こりを攻撃して、彼らの針を折ってしまいました、それが彼らの最期でした!
魔女はたいへん怒りました! 彼女の戸棚の中に金色の帽子がありました。それを持っている人はだれでも、与えられたどんな命令にも服従する、潔のあるさるを3回呼びよせることができました。彼女はそれをすでに2回使ってしまっていて、こんどが最後でした。
彼女は、帽子のふちの内側に書いてある秘密の呪文をとなえました。
空がくもってきました。それから、翼が突進してきました。大樹が顔を
出しました、すると空は肩から翼を生やしたさるでいっぱいでした。彼らの中で一番大きいさる.さるたちの王さまが魔女の前に舞い下りました。

 「あなたは私たちを3回呼びました、これが最後です! 私たちになにをさせたいのですか」
「ドロシーとその仲間をやっつけるのだ、ただしライオンは別だ! 私はやつを奴隷にしたいのだから」
さるは飛び去りました。彼らはブリキの木こりをつかまえて、彼の体を岩の上に落としました、それで彼は、ごわれてかけらになってしまいました。彼らはかかしから麦わらをぜんぶ引き抜いて、彼の服を木に投げてしまいました。彼らはライオンをぐるぐる巻きにして宮殿へ連れていき、鉄のおりにとじこめてしまいました。
しかし、いい魔女がつけたしるしがあるため、彼らはドロシーに危害を加えることができませんでした。そこで彼らは彼女を宮殿に連れていきました、すると、惑い魔女は彼女にバケツとたわしを与えて、石の床を掃除させました。かわいそうなドロシー!
ライオンは働こうとしませんでした、そこで魔女はライオンを飢えさせました。彼女はドロシーの靴には魔力があることを知っていました、そこで彼女はトートーをけって外へ出し、それを盗もうとしました!
しかし、そのためドロシーはたいへん怒って、水のはいったバケツをとり、水を魔女の体全体に‘ましやっとぶちまけました。
おどろいたことに魔女はちぢみはじめ、とげてしまいました!

 「おやまあ!私は何をしたんでしょう」と、ドロシーは叫びました。
「おまえは、水をかけられると私が死ぬということを知らなかったのかね」
と、魔女がしわがれ声でぶつぶつ言いました、そして彼女はとげて、床の上で形のないかたまりになってしまいました。
きれい好きなドロシーはそれをすっかり掃除してから、走っていってライオンを自由にしてやりました。
ウインキー人たちは魔女が死んで、自分たちがもはや奴隷でないことを知ると、ブリキの木こりを新品同機に修繕し、かかしの服の中に麦わらをもとのように詰めました。
それからドロシーは、金色の帽子の内側に書いてある秘密の呪文をとなえて、翼のあるさるたちにオズの都に連れ帰ってくれるよう頼みました。

〈エメラルドの都への帰還〉

 宮殿に着くと、仲間たちは玉座のある部屋に入っていきましたが、そこにはだれもいませんでした! きーき一声だけが天井から聞こえてきました。
「私は生き物の目には見えないのだ!」と、その声は言いました。「おまえたちはなんのためにきたのか」
「あなたに約束を守っていただくためです、たった今、私たちは悪い魔女を殺してきました!」
「私はそのことについて考えなければならないようだ! 明日やってまいれ」
と、声が言いました。

 それを聞くと、ライオンは怒りのうなり声をあげました。トートーは彼からとんで逃げて、すみに立っていたついたてを倒してしまいました。ついたてのうしろには、しわだらけの顔をした、奇妙なかっこうの小さな頭のはげた老人がうずくまっていました。
「おまえはだれだ」と、かかしがききました。
「私は億大な恐ろしい魔法使いです! どうか私を傷つけないでください!」
と、小さな男は泣き声で言いました。
「それでは、おまえは野獣でも、貴婦人でも、火の玉でもないのだな! おまえはなんなのだ」と、ブリキの木こりがききました。

 「私はぺてん師です!」と、魔法使いはき‐き一喜で言いました。「私はごく平凡な奇術師にすぎません。私はある日カンサスのすぐ近くで気球に乗ったのですよ、ドロシーさん。つなが切れて、気球はこの国の上までただよってきました。気球がおりると、この国の人たちは私を魔法使いにちがいないと思って、私を彼らの王さまにしたのです!」
「しかし、どうやってこれらの仕掛をつくったのですか」と、ドロシーがききました。
「お見せしましょう!」彼は模型や仮面でいっぱいの戸棚を開けました。
はけ頭は針金の上に紙をはった球で、目と口を動かせるように糸がついていました。
「声はどうやって出したのですか」と、彼女はたずねました。
「私は腹話術師をやっていたことがあるのです!」

 「それでは、おまえはほんとうの魔法使いなんかじゃないじゃないか!」
と、かかしは言いました。「そして、約束を守ることもできないじゃないか!」
「あなたはたいへん悪い人ですね!」と、ドロシーはきびしく言いました。
「いや、私はたいへんいい人間ですよ!」と、魔法使いは言いました。「私はただ、悪い魔法使いであるだけなのです!」

〈にせ魔法使いが約束を守る〉

 魔法使いは、自分はほんとうの魔法使いではないけれど、彼らのために最善をつくすと約束しました。
彼はかかしの頭を開けて、麦わらを少し取り出し、もみがらとピンと針を入れました。
「さあ、きみにのうみそが入ったぞ!」と、彼は言いました。かかしはうれしくなって出ていきました。
次に、彼はブリキの木こりの胸から四角を切り取りました。そして、おがくずをつめた赤い絹の心臓を中に入れました。彼は切り取った四角をハンダでまた接着しました。「ほら! 心臓が入ったぞ!」と、彼は言いました。

 次はライオンの番でした。魔法使いは、緑色のびんの中の飲みものを彼に与えました。
「これはなんですか」と、ライオンがききました。
「もしきみがそれを体の中に持っていれば、それが勇気になるのさ。勇気はいつも体の中から出てくるものだ! 勇気はきみがこわいと感じるときにあるものだ、でも、ずっときみは勇敢な行いをするだろう!」
「私は体の中に勇気があるのがわかって、今では前よりも勇敢になれるような気がします!」と、ライオンは言いました。
「今までのことをするには、そんなに魔力を必要とはしなかった!」と、魔法使いは思いました。「彼らはすでに賢く、親切で、勇敢だ、しかし自分でわからないだけだ!」

 しかし、魔法使いはドロシ」を助けるという点では、そんなにうまくいきませんでした。彼は絹の布で気球を作るうと決めました。ブリキの木こりが火を燃やし、彼らは気球に熱い空気をいっぱい入れました。魔法使いは気球の下に洗濯物を入れるかごをとりつけてそれに乗り、ドロシーに急げと呼びかけました。
しかし、彼女はちょうどそのときに、トートーをみつけることができませんでした、そして彼女がかけ寄ったとき、気球は彼女を乗せずに空中高くあがってしまいました!「もどってきて!」と、彼女は叫びました。
「もどれませんよ!」と、魔法使いは叫びました。「さようなら!」
そして、彼が雲の中にあがっていくにつれて、すべての人たちが手を振って「さようなら!」と、叫びました。

〈南へ〉

 ドロシーの仲間たちは、彼女を慰めようとしました。「なぜあなたは、私たちといっしょに、ここエメラルドの都にとどまらないのですか」と、彼らは提案しました。
しかし、ドロシーはカンサスのへンリー叔父さんとエム叔母さんのところへ帰りたかったのです。「そこは美しくないかもしれません」と、ドロシーは言いました「でも、私は他のどこよりもそこにいたいの。家庭ほどよいものはありませんもの!」
そのとき、かかしがひとつの考えを思いつきました。「あなたは、まだ金色の帽子を持ってますね! 葉のあるさるがあなたを助けてくれないでしょうか。彼らだったら、あなたを南のよい魔女のところへ連れていけますよ!」
そこでドロシーは、翼のあるさるを呼びました。彼らは空からおりてきて、ドロシーたちみんなを、美しい南の魔女のルビーの玉座のもとへ運んでくれました。魔女はグリンダという名前で、ふさふさとした赤い輝くような愛と、青い目を持ち、きらめくような白いドレスを着ていました。
「子どもさん、私はあなたに何をしてあげたらいいの」と、彼女はききました。
ドロシーは自分の身の上話をしました。
グリンダはかがんで、彼女のほほにキスしました。「私はあなた方に何をしたらよいのか言いましょう」と、彼女は言いました「しかし、まず、金色の帽子をください」

 「はい、どうぞ」と、ドロシーは言いました。
「さて」と、グリンダはかかしに言いました。
「ドロシーが家に帰ってしまったら、あなたはどうするつもりですか」
「エメラルドの都の人たちが、私に王さまになってくれと言っています」
「それでは、あなたは」と、彼女はブリキの木こりにたずねました。
「西のヴインキーの人たちは、私に王さまになってくれと言っています、
私たちが魔女を殺しましたので」
「それでは、ライオンはどうなの」
「森のけものたちが私に、王さまになってくれと言っています!」と、ライオンは誇らしげに言いました。

 「それでは私は翼のあるさるたちに、あなた方をそれぞれの王国へお連れするようにと命令しましょう。そのあとで、私はさるたちの王さまに金色の帽子をやりましょう、そうすれば、彼らは永久に自由になれるでしょう」
「私はどうなるのですか」と、ドロシーは言いました。
「あなたは銀色の靴を持っていますね。それは強力な魔力を持っていて、あなたがしなければならないことはただ、あなたがどこに行きたいのかをそれに告げることだけなの」
「それでは、私がここに着いた最初の日に、家に帰ろうと思えば婦れたの!」
「しかしそれでは、私はのうみそをもらえなかった!」と、かかしが言いました。
「私だって心臓をもらえなかったりと、ブリキの木こりが言いました。
「私だって勇気をもらえなかった!」と、ライオンが言いました。

 「それはほんとうね!」と、ドロシーが言いました。「私はお友だちを助けたことがうれしいわ。でも、今ではみんなが幸せになったのだから、私はカンサスへもどりたいわ!」そして、彼女はトートーをだきあげました。
「あなたの両方のかかとを3回打ちつけて、靴にあなたがどこへ行きたいのかを告げなさい!」と、グリンダが言いました。
「私をエム叔母さんのところへ連れていって!」と、ドロシーは言いました。すぐに、彼女は何も聞いたり見たりできないほどの速さで.空中をぐるぐるまわりながら飛んでいきました。彼女は何回か草の上をころころころがった後、やっと自分がどこにいるのかわかりました。「ああ、ありがたい!」と、彼女は叫びました。

 というのは、そこにはカンサスの大草原があり、彼女の前には真新しい農家があって、ヘンリー叔父さんがめうしの乳をしぼっていたからです。銀色の靴は脱げて、消えてしまっていました。
ドロシーは家に向かってかけていきました。エム叔母さんはキャベツに水をやっていました。トートーはうれしそうにほえながら、ドロシーの後に続きました。
「かわし・し・ドロシー!」と、エム叔母さんは彼女をだきしめ、キスしながら言いました。「おまえどこから帰ってきたの」
「オズの国からよ!」と、ドロシーは言いました。「そして、エム叔母さん、また家にもどってこられて、私はたいへんうれしいの!」


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