レディバードブックス100点セット
 

 

ギリシア神話1

〈テセウスとミノタウロス〉

 テセウスは、アテナイの王アイギウスの息子でしたが、彼の本当の父親は、海の神であるポセイドンであったとも伝えられています。
テセウスがまだ赤ん坊だったころ、テセウスが安心して大きくなれるようにと、父親はテセウスを母親といっしょにし、なかの別荘に残しておくことにしました。この別荘は、アテナイから約100マイル南にある、ギリシア東部のトロイゼンにあり、この100マイルという距離を旅するのに、当時ではたいへんな日数がかかりました。

 アイギウスは、アテナイへ帰る前に、大きな重い石の下に剣をおきました。「私の息子があの石を持ち上げて剣をとり出せるほど強くなったら、アテナイの私のもとに来させなさい、私の宮廷で高い地位につかせてやろう」 と、アイギウスは言いました。
アイギウスが帰ったあと、テセウスはいなかで育ちました。毎年テセウスは、石のところへ行き、石を持ち上げることができるかどうか試してみました。

 どんなにテセウスががんばってみても、石を持ち上げ、剣をとりだすまでには約20年かかりました。ついに、テセウスは成功し、母親に別れを告げてひとりでアテナイへと向いました。
その旅は、長くて危険なものでした。テセウスが父親のもとにたどりつくまでには、何人もの盗賊に出会い、戦い殺してきました。

 テセウスが父親に会ったとき、父親は、思い悩み、悲しんでいました。
「アテナイのようなそんなに立派な都市の王が、なぜ悲しんでいるのですか」 と、テセウスはたずねました。アイギウスは、こう説明しました。
「南の海の向こうに、クレタという島がある。そこの王であるミノスがギリシア全土を支配しているのだ。ミノスの海軍は世界一強く、私たちの都市はすべて、安全と引き替えに、犠牲をはらわなければならないのだ」 と。

 テセウスに、この話をしている間、アイギウスは頭をたれていました。
「毎年、クレタの船がアテナイにやってきて、7人の若者と、7人のもっとも美しい娘をクレタへ連れていってしまうのだ。連れていかれた彼らに二度と会うことはない。
ミノス王の宮殿には、ラビリンスとよばれる大きな迷路があるそうだ。
そこには、ミノタウロスとよばれる恐ろしい獣が住んでいる。それは半分人間半分雄牛であり、人間の肉を食べて生きている。われわれの娘や若者たちは、ミノタウロスのいけにえになっているのだ。
明日、またクレタの船がやってくる。それで、私はこうして悲しんでいるのだよ」
「お父さん」 テセウスは、言いました 「私が、この都市を救ってみせますよ。私が7人の若者の1人となってクレタへ行き、そのミノタウロスを殺してきます」
アイギウスは、恐怖におののき顔をあげました。ミノタウロスが待ちうけるラビリンスからもどってきた者は、1人もいなかったのです。

 アイギウスは、息子を抱きしめました。「だめだ」 と、彼は叫びました。
「おまえは、行ってはならない。もし、おまえという息子をなくしたら、私は生きてはいられない。クレタの船が去るまで、おまえを宮殿のどこかへ隠れさせておこう」
テセウスはほほえんで、父親にやさしく言いました。「私は、行かなくてはなりません。残虐なミノス王を満足させるために、こんなふうにわれわれの若者や娘たちがこのように死ぬということは、まちがったことです。
私はミノタウロスを殺し、白い帆の船で帰ってきます、そうすればお父さんは、良い知らせをより早く知ることができるでしょう。
もし私が失敗して死んだら、黒い帆の船を準備して、知らせましょう。
でも、心配しないでください。神が私を助けてくださいますから」 と、彼は言いました。
アイギウスは泣いて悲しみましたが、テセウスが行くことを許しました。
こうして、クレタ船が、いけにえとして7人の若者と7人の娘を連れにきたとき、テセウスはそのなかに紛れこみ、クレタへと連れていかれたのです。

 やっと船はクレタ島に着き、捕えられた人びとはクノッソスにあるミノス王の宮殿に連れていかれました。
アテナイの王の息子が、捕われ人のなかにいると聞いて、ミノスは彼らを自分の前に連れてくるように命じました。彼は、テセウスのことや、テセウスの勇気についてきいており、会ってみたいと思ったのです。ミノタウロスをものともしない若者なんて、ほとんどいなかったのですから!
ミノス王は、テセウスもいずれ死ぬのだ、という思いを楽しみながら、残忍な喜びにひたって、その勇士に語りかけました。

 「おまえは勇気ある若者だ」 と、彼は言いました 「しかし、馬鹿者だ。おまえが王の息子であろうと、ミノタウロスはおまえを殺すであろうし、そうでなくても、おまえはラビリンスで迷うのだ」
テセウスは大胆に答えました 「おまえは王にはふさわしくない。おまえの最後が近づいていることを警告してやろう。神の助けを借りて、私はミノタウロスを殺し、おまえの宮殿を滅ぼしてやる」

 ミノスは大声で笑い、捕われ人たちを連れていかせましたが、それを見ていた彼の娘、アリアドネは笑いませんでした。彼女は、父を恐れない、この勇気ある美しい若者のことを思っている自分に気づきました。彼女は、彼を助けようと決心しました。

 見張りに連れ去られていく捕われ人たちをみつめ、彼女はどうしたらいいか考えました。かつてミノタウロスから逃れた者は誰もいませんでしたが、何か方法があるはずです! そのとき、彼女にある考えがうかびました。

 テセウスと彼の友人たちは、宮殿にある、ラビリンスと呼ばれるところへ連れてこられました。これは、たいへん暗い、入りくんだ廊下の迷路で、ここに迷いこんだ者は、二度と出口をみつけることはできませんでした。
この暗闇のどこかに恐ろしいミノタウロスが潜んでおり、彼らをむさぼり食おうと待っているのです。アリアドネは、少し離れて後を追ってきていましたが、静かにテセウスのそばに忍び寄りました。

 見張りにみつかる前に、彼女はささやきました 「私はあなたの味方です。あなたがこれから必要となさるはずの2つの物をさしあげます」 彼女は2つの品物をテセウスの手の中におしこむと、そっと去っていきました。
見張りが捕われ人たちを暗闇の中に残していった後、テセウスは、アリアドネが彼に渡したものを見ました。1つは剣で、もう1つは毛糸の玉でした。

 テセウスは、何をすべきかすぐに気づきました。「ここに残っていなさい」 彼は他の人びとに命じました 「そして、この毛糸の玉の端を持っていなさい。私は、もう一方の、玉になっている方を持ってラビリンスを進み、ミノタウロスを探してくる」
彼は細い命綱の毛糸を持って、ラビリンスの恐怖に立ち向かうため出発しました。
彼のうしろの方では、他の人びとが恐れながら待っていました。果たして彼は、成功するでしょうか? 1人の娘は泣いており、彼女の友人たちがなぐさめました。「恐がらないで、テセウスが助けてくれますよ」 と、彼女たちは言いましたが、彼女たちもまた、恐がっていたのです。
テセウスは、ゆっくりと毛糸を後に残しながら、慎重に前へ進みました。彼は、あらゆる方向に曲がりくねっているかと思われる数々の通路を、手探りで進みました。
ラビリンスを進めば進むほど暗くなり、毛糸の玉もどんどん小さくなっていきました。

 テセウスは、いつ何どき、ミノタウロスが柱のかげから現われるかもしれないということを知っていました。彼は、いつでも戦えるようにしていなければなりませんでした。彼は立止まって耳をすましてみました。何の音もしませんでした。彼は当惑し、迷いました。ミノタウロスは一体どこにいるのでしょうか? ミノタウロスは、彼がラビリンスにいるのを知っているのでしょうか? テセウスは剣を抜いて、暗闇をすかして見ようとしました。
ミノタウロスについてのいろいろな話を思い出すうちに、彼はだんだん恐ろしくなってきました。

 ただ、細い毛糸の束だけが、彼を恐怖から救ってくれました。でも、これさえも、もうなくなろうとしていたのです。毛糸の端を指先に感じるまでに、そう長くはかかりませんでした。彼は引き返し、また毛糸を巻きはじめました。
突然、彼のうしろで、血も凍るような恐ろしいうなり声がきこえました。彼は振り向いて、剣を固く握りしめたまま、その声がどこからしたのか見まわしました。彼は、いつでも化物と戦える構えでした。

 かすかな光が見え、彼には、雄牛の頭を持った大きな人間のようなミノタウロスの輪郭が見えました。その化物は襲いかかってきて、テセウスの首をつかみました。しかし、勇士は構えていたので、激しい取っ組み合いの末、彼は剣をミノタウロスのわき腹に突きさしました。恐ろしいうなり声をあげて、化物は死にました。この化物が世間を脅かすことは、もう二度とないでしょう。
さて、テセウスは迷路の中を帰る道を探さなくてはなりません。あたりはまだ暗闇でしたが、彼はもう何も恐れてはいませんでした。ミノタウロスは死んでおり、あとは、友人たちが待つところまで毛糸をたどっていけばよかったのです。みんなテセウスを見て喜び、ミノタウロスについていろいろたずねました。
そこで今度は、テセウスと友人たちは、おどろいている見張りを打負かし、戦いながら宮殿の外へ出ていきました、進みながら彼らは、宮殿に火をつけました。アリアドネは彼らといっしょに行きました。

 クノッソスの、ミノス王の宮殿は燃えさかり、王の残忍な統治は終りを告げました。
ミノタウロスが死んでしまい、もう、アテナイの王が毎年、7人の若者と7人の娘を犠牲に出すことはないのです。
テセウスは、意気揚々として、国へ船を走らせていきました。

 アテナイへ帰る途中、船はナクソスの港へ寄りました。若者や娘たちは、テセウス、アリアドネといっしょに、美しい島を見ようと下船したのです。
アリアドネは、はぐれて1人になってしまい、そのまま眠りこんでしまいました。テセウスは、彼女にだんだん飽きてきたところなので、仲間をよび集め、彼女を1人島に残して船を出してしまいました。

 テセウスのこの卑怯な行為に対して、神は罰を与え、テセウスが父親に約束したように、船の帆を白に変えることを忘れさせました。
ギリシアではアイギウスが、息子がもどるのを待っていました。毎日彼は、南の海を見下ろしている高いがけにすわり、クレタから来る船を見ていました。
とうとう彼は、水平線に小さな点をみつけました。ゆっくりと、それはクレタ船の形になりました。アイギウスは悲しみに声をあげました、なぜなら、色あざやかな船体の上にはためいていた帆は、黒かったからです。
彼の息子は死んだにちがいありません。
走りながら、彼はがけから身を投げ、海に落ちて死んでしまいました。
そんなことも知らず、テセウスは勝ち誇って、アテナイの港に船を着けました。まもなく彼は王となりましたが、父親を死なせたことで、彼は自分を一生許すことはできませんでした。

 

〈ペルセウスとゴルゴンの頭〉

 ギリシアとトルコの間にあるエーゲ海には、たくさんの島があります。そのうちの1つは、セリフォスとよばれています。
ある日、セリフォスの漁師ディクティスは、家の近くの浜を歩いていました。彼は、浜のはずれで大きな箱をみつけておどろきました。波が箱に、ひたひたと寄せていました。
波はゆっくりと少しずつ、それを海から引き上げ、砂浜の方へ持ってきました。箱はたいへん重いものでした。それから彼は、それを開けるのが恐ろしいような気がして、じっとつっ立って見ていました。何が入っているのでしょう?
ディクティスは貧乏だったので、中に宝物が入っていることを願いました。ついに彼は勇気を奮い起こし、ふたを持ち上げました。彼はびっくりしてしまいました。
美しい娘が彼を見上げ、しかも彼女は腕に赤ん坊を抱いていたのです !

 娘はダナエという名で、アクリシウス王の娘でした。アクリシウスは予言者に王の孫は王を殺すであろうと言われ、ダナエを鉄の塔にとじこめて、結婚することも、子どもをつくることもできないようにしてしまいました。
それにもかかわらず、神々の王であるゼウスが、ひそかに彼女と結婚したのです。
そして、アクリシウスは、ダナエが男の子を産んだと聞かされ、ぎょっとしました。彼はダナエを殺したくなかったので、彼女と赤ん坊を箱に入れ、海に投げこんだのでした。
ディクティスは箱を開けて、2人をみつけた後、彼の小屋へ連れていき、面倒をみてやりました。
その赤ん坊は、強い若者に成長しました。母親は彼を、ペルセウスと名づけました。彼女はいつも、彼の父親は、神々の王であるゼウスだと言っていました。

 セリフォスの王は、ポリデクテスでした。彼は残忍な人間で、島の人びとはみんな、彼を恐れていました。
彼は、たいへん美しいダナエを見たとき、いっぺんで好きになってしまいました。彼はダナエと結婚したがりましたが、ダナエは彼の残忍なことをきいていましたので、それを断りました。彼女は今のままでたいへん幸せだったので、本当に誰とも結婚したくなかったのです。

 ある日、ポリデクテスは宴会を催し、島の貴族をすべて招待しました。
彼はダナエも招待しました、そうすれば彼女に、自分がいかに大金持であるかを見せることができ、自分と結婚するように説得できるからでした。
若きペルセウスも、宮殿へ行きました。彼は招待されてはいなかったのですが、人ごみに紛れて忍びこみました。彼の母親が、王を恐れているのを知っていたので、守ってやりたかったのです。
宴会の間、ポリデクテスはダナエの方を向き、「さあ、愛しい人よ」 と言ってほほえみました。「みんなに見てもらえるように、今日この日をわれわれの結婚の日としよう。もし私の后となれば、何でも欲しいものは手に入れられるのだよ」
ダナエは頭を振りました。「ポリデクテス、私は充分満足しています、もう結婚はしたくありません」 と、彼女は答えました。
王はまだほほえんでいましたが、だんだん腹を立てはじめました。

 そのとき、ペルセウスが人ごみの中から前へ進み出て、大胆にこう言いました。「王さま、私の母はあなたと結婚したくないのです。彼女をそっとしておいてあげてください」
王の目が怒りに燃えました。ペルセウスがダナエを守っているかぎり、彼女を妻にすることはできないということが、王にはわかっていました。
「もしおまえが、私の挑戦をうけてたつのなら、ダナエをそっとしておいてあげよう」 と、ポリテクテスはずるそうに言いました。

 「おまえにその勇気があるか?」 と、彼はききました。
ペルセウスはうなずきました。王は勝ち誇って、笑い声をあげました。
「それならペルセウス、ゴルゴンの頭をとってこられるかどうか、やってみろ!」
ペルセウスは、恐ろしさにあとずさりしました。彼は、わなにはめられたのです。この挑戦を断わることはできませんが、しかし、どうやってゴルゴンの頭を持ち帰ったらいいのでしょうか? 彼は、ポリデクテスの笑い声を耳に残したまま宮殿を後にしました。

 ゴルゴンは3人いました。かつては、彼女たちは美しい女性だったのですが、その美しさを自慢していました。神々は、彼女たちを、見るも恐ろしい化物に変えることによって、そのうぬぼれを罰しました。ゴルゴンたちは、ブロンズの羽、かぎつめのような手、それにきばを持ち、髪の毛は蛇でした。ゴルゴンの目をひと目見ただけで、誰でもたちまち石になってしまうのです!
ペルセウスは、悲しそうに宮殿を去りました。どうやってゴルゴンたちをみつけだし、そのうちの1人をどうやって殺したらいいのでしょうか?
ポリデクテスが、彼を確実な死へと追いたてているのが、彼にはわかっていました。

 突然、目もくらむような光が輝きました。そして彼は、2つの人影が目の前に立っているのを見ました。そのうちの1つがこう言いました。
「ペルセウスよ、我々は、あなたを助けるようにとあなたの父、ゼウスから言いつかってきたのです。私は知恵の神アテナで、こちらが神々の使いであるへルメスです。これらの贈物を受け取って、海に出るまで北に向かって進みなさい。そこで、灰色の3人姉妹から助けを得られるでしょう」

 ふたたび光が輝き、人影は消えてしまいました。ペルセウスは熱心に、授かりものを調べました──カーブを描いた鋭い鎌、ピカピカによくみがかれた盾、肩から下げる袋、帽子、そして羽のついた1足のサンダルがありました。これだけ神の助けを得られれば、きっと彼は成功するでしょう!
ペルセウスは、魔法のサンダルをはけば空を飛ぶことができる、ということを知りました。そして、帽子をかぶれば彼の姿が見えなくなってしまう、ということもわかりました。新しい希望を持って、彼はヨーロッパの山々を越えて、ゴルゴンを探しに北へと飛んでいきました。

 長い間飛び続けて、やっと彼は、暗く霧のたちこめた海岸へやってきました。彼には、自分が一体どこにいるのか、どこでゴルゴンをみつけられるのか、わかりませんでした。
そのとき、彼は下の海岸に、灰色の3人姉妹をみつけました。彼女たちは、年老いて、みにくい人たちでした──目も歯も1つしかなく、それをみんなで共同で使っていました。彼女たちだけが、ゴルゴンがどこにいるかを知っていましたが、ペルセウスにはそれを教えてはくれませんでした。

 ペルセウスは帽子をかぶり、彼女達の上を飛びながら待ちました。そして、1人がもう1人に、目と歯をなげて渡したとき、彼は舞い降りてそれをぱっとつかみました。
「ゴルゴンがどこにいるのか教えてくれ、そうしないと、この目と歯を海へ投げてしまうぞ」と、彼はあざけりました。
恐ろしさと怒りにふるえながら、灰色の3人姉妹はペルセウスに居場所を教えてやりました。ペルセウスは、彼女たちの目と歯をそばの砂浜になげると、ゴルゴンのすみかへと飛んでいきました。
化物が住んでいる陰うつで薄暗い国へ来ると、ペルセウスはあたりに、じっと動かない、人や動物の形をした灰色の像をたくさん見ました。ゴルゴンの目をひと目見ただけで、みんな石に変わってしまったのです。
ペルセウスはぞっとしました。こんなに大勢の人間が失敗しているのに、どうやったら彼は成功することができるのでしょうか?

 とうとうペルセウスは、ゴルゴンをみつけました。彼女たちは岩の間で眠っていたので、ペルセウスは安心して彼女たちを見ることができました。
しかし、彼女たちは眠っていても、髪の毛となっている生きたままの蛇は、毒々しく身をくねらせていました。この光景を見て、ペルセウスは恐ろしさでいっぱいになりました。どうしたら、石に変えられずに近づくことができるのでしょう。
突然、ペルセウスは、何をしたらいいのか気がつきました。彼はやっと、なぜアテナが光る銅の盾を彼に渡したかがわかりました。盾をのぞきこむと、ゴルゴンの姿がはっきり見えました。盾を鏡のかわりにしながら、前へ忍び寄りました。そしてすばやい一撃のもとに、一番近くにいたゴルゴンの頭を切り落としました。彼女の名はメドゥサと言いました。
力強く一挙に、ペルセウスはメドゥサの頭をつかみました。彼はそれを袋の中にしっかりと入れ、羽のついたサンダルで、空へパッと飛びたちました。

 ペルセウスが空へ飛び出すと共に、他の2人のゴルゴンが叫びながら後を追ってきました。頭の蛇はシューシュー言いながら身をくねらせ、ゴルゴンたちの邪悪なつめは、彼をつかまえようと差し伸ばされましたが、彼の方がはるかに速かったのです。
サンダルについている力強い羽は、邪悪な彼女たちの手の届く範囲から、すぐに彼を連れだしてくれました。

 ペルセウスが安全なところへと飛んでいるとき、彼女たちのつめは、彼のかかとの後で、空をつかんでいました。
2人のゴルゴンは、地に横たわっている、死んだ妹のメドゥサの体に目を向けました。
2人が見ているうちに、彼女の血から、優雅と実のシンボルである白い羽を持った馬ペガサスが飛び出しました。

 ペルセウスは、島の1つを通り過ぎようとしたとき、不思議な光景を見ました。若い乙女が1人、海辺の岩に鎖でつながれて立っていたのです。
ペルセウスはすばやく舞い降り、彼女のそばに行きました。乙女は恐ろしくて泣いていました。
「あなたは誰なのですか?」 彼女を自由にしてやりながら、彼はたずねました。「誰があなたをこのように鎖でつないだのですか?」
乙女はたいへんおびえていましたが、ペルセウスにこう言いました 「私の名はアンドロメダと言い、私の父が私をここへ連れてきました。私の母が、海のニンフたちより私の方がずっと美しいと自慢したため、海の神ポセイドンが海の怪物を送りこみ、島をおびやかして罰を与えたのです。神々は父に、私をいけにえに捧げれば海の怪物は去るであろうと言ったのです」
ペルセウスにこの話をきかせる間、彼女はひどく泣いていました。
「私の手をとりなさい。そしていっしょに、海の怪物から逃げるのです」
ペルセウスは言いました。

 と、突然、乙女は指さしました。「見て!」 彼女は悲鳴をあげました。
「怪物よ!」 ペルセウスが振り向くと、大きな動物が海から出てくるところでした。
「恐れることはない」 勇士は叫びました。「どんな怪物も抵抗できない武器を私は持っているのだ」
こう言いながら、彼はゴルゴンの頭を怪物に向かって差し上げました。
即座に、怪物は石になってしまいました。

 こうして、ベルセウスはアンドロメダの命を救い、妻にするため、セリフォスへつれて帰りました。
2人がセリフォスに着くと、ペルセウスは王の宮殿へ行きました、彼は、ポリデクテスの悪行を忘れてはいなかったのです。彼はゴルゴンの頭を持って官殿に行き、王とその友人たちが宴会を開いているのをみつけました。
彼には、ペルセウスが帰ってくるなどとは思いもよりませんでした。

  ペルセウスが入って行くと、ポリデクテスは怒りました。「ここで何をしているのだ」 と、彼は頭をしかめて言いました。
「私は約束を守りました」 と、ペルセウスは言いました。「あなたに、ゴルゴンの頭を持ってきました」
ポリデクテスと友人たちは笑いました。「うそつきめ」 と、王はどなりました。「誰にもゴルゴンの頭を持ってくることはできなかったのだ」

 ペルセウスは頭を取り出し、みんなに見せるために高く差し上げました。
「自分たちの目で確かめてみろ!」 と、彼は叫びました。ポリデクテスと友人たちは頭を見て、即座に石に変わってしまいました。
ペルセウスは神々からの授かりものを返し、アテナイには、彼女の助けを感謝して、盾にかざるようにと、ゴルゴンの頭を捧げました。


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