レディバードブックス100点セット
 

 

ガリバー旅行記

 私の旅行は、1699年5月4日に始まりました。私は妻と2人の子どもたちに別れを告げ、南太平洋行きの船医として、ブリストルから出港しました。
最初の1週間はすべて順調でした。しかしその後、激しいあらしにあい、船は難破してしまいました。私を含めた6人の船員は、小さなボートに乗り、近くの島に向かってこぎ出しました。突然、大きな波がボートをひっくり返し、他の船員たちは波にのまれてしまいました。ただ1人、私、レミュエル・ガリバーだけが残されたのでした。
私は力の続くかぎり泳ぎ、もうこれ以上泳げないと思ったとき、足が底につきました。私は浜まで水の中を歩いていきましたが、浜には家や人の影も形もありませんでした。私は半マイルほど先へ進んでみましたが、やはり誰もいませんでした。疲れはてた私は、短くやわらかい草の上に横になり、眠りこんでしまいました。

 私が目を覚したときには、もう日がのぼっていました。私はしばらくの間じっと、自分がどこにいるのだろうかと考えてから、起きあがろうとしました。ところが、自分の手も足も頭も動かすことはできなかったのです!
私は地面にくくりつけられていました! そばでガヤガヤいう音がきこえたのですが、何の音なのかわかりませんでした。
突然、私は左足に、何か動くものがいるのを感じました。それはだんだん私の身体の上の方まで歩いてきて、あごの近くでとまりました。それを見ようとできるかぎり頭を持ち上げ (なぜなら、私の髪の毛も地面に結びつけられていたからです)、6インチ (約15cm) にも満たない、弓矢を持った小さな人間を見ました。そのとき、同じような小さな人間が、私の身体の上をそこらじゅう走りはじめました。私はびっくりして、思わず大声を出してしまったのです。彼らはおどろいて走り去り、逃げようとしてお互いの上に重なり合ってしまいました。後でわかったのですが、私の胸から落ちたとき、何人かがけがをしたそうです。
私は、なんとか左手を地面にしばりつけているひもをはずし、髪の毛のひもをゆるめて頭を動かせるようにしました。このため小人たちはますます恐れてしまって、私に向かって矢をうちはじめました。何本かは手の上に、また何本かは顔の上に落ちて、ちくちくと針のようにさし、ささったところは傷ついてしまいました。

 小人たちは遠まきにして、私を見ていました。少したって、私が彼らに害をおよぼさないということがわかると、私をしばっていたひもを何本か切ってくれました。そのため、少なくとも頭だけはもう少し動くようになったわけです。

 こうしてようやく、彼らの王様が私と話をするために私の頭のそばに作られた小さな台が見えました。王様はしばらく話していましたが、私には、彼が何と言っているのかまったくわからず、そのうちだんだんおなかがすいてきてしまいました。私は自分の口を指さし、かむまねをしました。彼は理解したとみえて、すぐに何人かの召使に、食べものと飲みものを持ってこさせました。
私のわき腹にはしごがかけられ、バスケットいっぱいの肉やパンを持った100人以上の小人たちがのぼってきました。肉の1枚1枚はどれも、こま切れ肉のひとかけらほどの大きさしかなかったので、私はどんどんおかわりをしなければなりませんでした。パンのかたまりもたいへん小さかったので、私は一度に3つずつ食べました。
ワインも、1樽を一気に飲みほしました。小人たちは、そんなに飲めるなんて信じられない、というようにお互い顔を見合わせていましたが、もっとワインを持ってきてくれたので私はそれも飲みました。
私は逃げ出したりしないということを身ぶりで示し、彼らがひもをゆるめてくれたので、横むきに寝ることができました。彼らはまた、手や顔に薬をぬってくれたので、矢がささったためにおきた痛みはなくなりました。
そして、私はまた眠りこんでしまいました。

 目を覚したとき、私は車のついた台の上にいました。その台は、半マイルほど先にある、彼らの都に向かって動いていました。私の手くらいの大きさの、王様が持っている一番大きな馬が、1500頭ほど私をひっぱっていました。
この台を作るのに、500人の大工と技師、そして私が寝ている間に、私をこの台の上にのせるのに900人を下らない人間が必要だったということを後で知りました。
しばらくの間私は、何で目を覚したのかわかりませんでした。しかし、後でそのわけを教えてもらいました、何人かの若者が、私が寝ている間に、私を見たいと思ったのです。彼らは台にのぼり、私の顔の上へそっとあがったのです。そのうちの1人、見張りの兵士が、やりのとがった先を私の鼻に入れ、麦わらでやるようにくすぐって、くしゃみをさせたのです、それで私は目を覚したのでした。彼らは私にみつかる前に、すばやく逃げてしまったそうです。
その日1日じゅう、長い行進を続け、夜になったので休むことになりました。彼らは、私の両横に500人の見張りをつけ、私が逃げようとすれば、いつでも矢を討てるようにしていました。

 やっと私たちは都に着きました。私がしばりつけられている台は、もう今では使われていない教会の外にとめられました。この建物が国じゅうで一番大きな建物なので、王様は、私をここへ住まわせることにしたのでした。教会のとびらは、私が寝たいと思ったとき、はって入れるくらいの大きさでした。しかし、いったん中に入ってしまうと、横になっていることしかできませんでした。
小人たちは、私を自由にはさせてくれなかったのです。彼らは私の左足に100本ほどもの小さな鎖をつけ、立ち上がることはできても、そんなに動くことはできないようにしてしまいました。

 この作業がおわると、王様が私に会いにきました。王様は、私が逃げ出したとき身を守れるようにと、私たちが使うかがり針くらいの大きさの剣を手に持っていました。彼は顔立ちの整った小人で、そばにいる家臣よりもずっと背が高かったのです、そして、てっぺんに羽根のついた、金のかぶとをかぶっていました。宮廷の紳士や婦人たちは、みんな金や銀の服を着ており、それは日の光にキラキラと輝いていました。
王様が話しかけてきたとき、私は返事をしようとしたのですが、彼は、私が話せるどの国の言葉もわかりませんでした。まもなく彼は、私を殺してしまうかどうかを決めにどこかへ行ってしまいました、私を生かしておけば、食費がずいぶんかかるし、それに危険かもしれないと考えたからです。

 王様が行ってしまうと、小人たちが私を見に大勢集まってきました、誰もこんな大きな人間を今まで見たことがなかったのです。ある人たちが私に向かって矢を放ち、そのうちの1本が目に当たりそうになりました。見張り人がこの人たちをしばって、罰するようにと私にひきわたしました。
私は、5人をポケットの中に入れ、大そう恐がっている残りの1人を食べるふりをしました。それからペンナイフを取り出し、彼をしばっているひもを切って、下に降ろしてやりました。他の5人も、1人ずつポケットから取り出して、同じようにしてやりました。私が彼らをこんなに優しく扱っているのを見て、みんなおどろいているようでした。
見張りの2人が王様のところへ行って、私のしたことを話しました。王様は、私が彼の国の人びとに親切だったので、殺さないことに決めました。彼は、町の近くに住む人びとに、6頭の牛と40匹の羊を毎日、そしてワインも持ってくるよう命じました。すべてとても小さかったので、これでちょうどいいくらいだったのです。
300人の洋服屋が私の服を作るように言われ、600人の小人たちが私の世話をするように言われました。彼らは便利なようにと、教会の外のテントに住むことになりました。
最後に6人が、私に彼らの言葉を教えるようにと命じられました。

 3週間後には、私は小人たちの言っていることがわかり、小人たちに話しかけられるようになりました。まず最初に私が王様に頼んだことは、自由にしてもらうことでした。王様は、まず私が何か危険なものを持っていないかどう調べなくてはだめだと言いました。2人の人が私のポケットを調べにきて、みつけたものをすべて書き取りました。
彼らは私に新しい名前をつけました。それは 「大きな人間山」 というものでした。私のポケットの中に、彼らは次のようなものをみつけました。
まるでカーペットのようだと彼らが思ったハンカチ。彼らがチリゴミでいっぱいの箱とよんだ、かぎたばこ入れ。これで彼らはくしゃみをしてしまいました。
大きな文字で書いてあるノート。

 くし。彼らには、これを何に使うのかはわかっていましたが、まるで王様の宮殿のまわりにある柵のようだといいました。
ナイフ、かみそり、そして2丁のピストル。これらはすべて彼らには目新しく、何のためのものかわかりませんでした。
時計。水車のような音がすると彼らは言いました。私が、まず何をするにも、いつも時計を見ると言ったので、彼らはそれを、私が崇拝する神だと思ったらしいのです。
さいふ。彼らは、漁師が使うのにちょうどいい大きさの網だと言っていましたが、私がそれをさいふとして使っていたことはわかったようです。彼らは、さいふの中の金貨の大きさを見て、とてもびっくりしていました。

 2人は、ポケットの中を見終ると、私のベルトを見ました。彼らは、私が小人5人分くらいの長さの剣と、2つのポケットがついていた小袋を持っている、と書きこみました。このポケットのうちの1つには黒い粉が入っており、もう1つにはとても重くて丸い球が入っていました。2人はこのリストを王様のところへ持っていき、王様は私に、剣をとって静かに下へ置くように言いました。そして、ピストルは何のために使うのかとききました。私は彼に、恐がらないでくださいと言って、ピストルを1つとって空に向けて撃ちました。
王様以外の人はみんな、恐ろしくてうずくまってしまいましたが、やはり王様の顔からも血の気がひいていました。王様は私に、ただちにピストルをひきわたすように言いました。私はわたしてやり、黒い粉はたいへん危険なので、火から遠ざけておくように言いました。
私の持物は、すべて王様の倉庫にしまわれました。ただめがねだけは、彼らがみつけられなかったポケットに入っていたので、持っていかれませんでした。
だんだん王様と国の人びとは、私が危険ではないということがわかってきたようでした。ときどき小人たちは、私の手の上でダンスをし、また、少年や少女たちは、私が地面に横になっているとき、私の髪の毛の中でかくれんぼをするのが好きでした。馬さえも私を恐れなくなり、私が地面に手を置くと、馬に乗った人びとが順番に、私の手を飛びこえていきました。

 ある日、誰かが王様のところへ、大きな黒いものが地面に置いてあるのをみつけたと言いにきました。彼らはそれは生きていないと言い、たぶん 「大きな人間山」 のものだろうと思っていました。それは私が海でなくしたと思っていた帽子だったのです! それを私のところへ持ってくるために、彼らは帽子のつばに2つの穴をあげ、帽子と5頭の馬の馬具をひもで結びつけました。それから、帽子は半マイルほどひきずられてきました。これは、あまり帽子のためによくなかったようです!
また、あるとき王様は、私に足を開いて立ってくれと頼みました、彼の軍隊がその間を行進するためにです。軍隊には3000人を下らない歩兵と、1000人の騎手がいて、旗をかかげ太鼓をならして行進していました。
私はもう一度、自由にしてくれるように頼み、とうとう王様は (彼の) 規則に従うならいいと言ってくれました。私はそうしますと言い、鎖は取り除かれました。私はいつも、都を見てまわりたいと思っており、自由になった今は、そうしてもよいと王様は言いました。人びとはみんな、私がふんでしまうといけないので、家の中にいるように言われました。そこで、みんな窓に群がって、私が王機の宮殿がある広場へ、へいをまたいで入っていくのを見ていました。
宮殿はたいへんすばらしく、大きな人形の家のようでした。私が横になって中をのぞきこむと、女王様がほほえみながら窓のところへ来て、キスをするようにと手をさしのべてくれました。

 私が自由になってからまもなく、国のおえら方の1人が私に会いにきました。私たちは長いこと話しこみ、さまざまなことを知りました。
私はリリパットとよばれるこの島が、平和で幸せなところだと思っていましたが、彼が言うにはそうでもないらしいのです。
「もう、あなたは見たと思うのですが」 と、彼は言いました 「ある者は高いかかとの靴をはき、ある者は低いかかとの靴をはいています。王様は低いかかとの靴をはいている者だけを仕えさせようとするので、高いかかとの靴が好きな者は、これはまちがっていると思っているのです。このためリリパット人の間では、争いが絶えません」
それから彼は、国にふりかかろうとしている、もっと大きな危険について話しました。

 「この島の近くにブレフスキュという島があり、そこの島の人びとが私たちを攻撃してくるのです」
「なぜですか?」 私は彼にききました。
「これは、もう大分昔に始まったことなんです」 彼は答えました。「今の王様のひいおじいさんが少年だったこう、ある朝、卵のてっぺんのからをとろうとして指を切ってしまいました。それまではみんな、卵の大きい方の端を割っていたのです。しかし、それ以後、そのときの王様の命令によって、みんな卵の小さい方の端を割らなければならないようにされてしまったのです、そして、これに従わない者はリリパットを出ていかなければなりませんでした。彼らはブレフスキュの島にわたり、自分たちを『大きい端を割る人びと』とよびました。こうして今、彼らはリリパットを攻撃しようとしており、王様は、あなたに助けてほしいと言っているのです」

 リリパットの人びとが私にたいへん親切だったので、私はできるだけお手伝いしましょうと言いました。
私は 「大きい端を割る人びと」 が50隻程の軍艦を停泊させているのを知っていたので、それをうばい取ってくることにしました。
50本のひもの先に50個のかぎ針をつけると、ブレフスキュへ向かいました。島の間はたった半マイルほどしかなく、大部分は水の中を歩いていき、まん中のところだけ少し、泳いで渡りました。
敵は私を見ておびえ、船から飛び出して岸まで泳いでいきました。それから私は、かぎ針を1つ1つの船のへさきにつけ、最後に全部のひもをもう一方の端でひとつに結び合わせました。この作業をしている間、「大きい端を割る人びと」 は、たくさんの小さな矢を私に放ってきました。私は目に入るといけないと思い、めがねをかけました。
いかりの綱を切り終ると、かぎ針のついているひもの端の結び目を持ち、敵の一番大きな船50隻とともに、私はリリパットへ帰ってきました。
王様は大そう喜んで、私をナーダックにしてくれました、ナーダックとは、私のところでいう公爵のようなものでした。

 今度は王様は、敵の残りの船を取ってきてもらいたいと言いました。そうすれば、リリパットだけでなく 「大きい端を割る人びと」 の王にもなれるからでした。それから彼は 「大きい端を割る人びと」 を規則に従わせ、卵の小さい方の端を割るようにさせるつもりだったのです。私は、これは正しくないと思ったので、彼の言うとおりにしませんでした。これで王様は怒ってしまいました。
この後すぐ、何人かの 「大きい端を割る人びと」 が、リリパットに仲なおりにやってきました。彼らは私を見ると、いつかブレフスキュにも来てください、そうすれば、みんな、あなたがどれほど大きいか見ることができますからと言いました。私はぜひそうしましょうと言いましたが、これが王様をますます怒らせてしまったのです。(王様の) 海軍大臣もまた、私のことを快く思っていませんでした、それは単に、私が 「大きい端を割る人びと」の海軍を負かしたというだけでなく(彼にはそれができなかったのです)、私がナーダックになったからでもありました。
王様のおえら方のなかには、他にも私のことをよく思っていない人間がいました、なぜなら、ある人は私が食べすぎると言い、ある人は私が危険だと考えたからです。彼らはみんな、私が王様の言うことをきかなかったのだから、リリパットの敵として殺してしまうべきだ、と王様のところへ言いにいきました。

 王様は、私が彼を助けたので、殺すことには反対でした。彼は長いこと考えてから、私を罰する一番いい方法は、目を見えなくしてしまうことだと言いました。
おえら方の一人は、私の友だちでした。彼はこっそり私のところへ来て、王様の言ったことを教えてくれました、そうすれば、私が逃げ道を考えられるからです。彼の言うことを聞いて、私はリリパットを出ていくときが来たと思いました、目が見えなくなるなんて、考えるのもいやでしたから。私は浜へおりていき、王様の船を1隻取りました。ぬれないようにと服をその中に入れ、それを引っぱってブレフスキュへ泳いでわたりました。
プレフスキュの王様は、私を見て喜び、国の人たちもみんな喜んでくれました。彼らは親切で、私もみんなが好きだったのですが、ここで一生を過したくはありませんでした。私は家に帰りたかったのです。
そんなある日、私は、普通の大きさのボートが海にさかさまに浮いているのをみつけました。それに乗って家に帰れるよう、私は王様に頼んで、ボートを浜にひきよせるための船と人をかしてもらいました。

 ボートを浜辺に持ってきて、あお向けにするのに、2000人の小人が手伝ってくれました。それから私は、家へ帰る長旅の準備をしなければなりませんでした。小人たちの持っている一番ぶ厚いリンネルでも、私たちの持っている、もっとも薄いハンカチくらいしかなかったのです、そこで2つの帆は、13枚ずつ布を重ねて作られました。これを作るのに、500人の労働者が必要でした。
小人たちが持っている一番太くてじょうぶなひもを30本ほどもより合わせて、私はひもや綱を作りました。オールやマストは、王様の船大工たちに手伝ってもらって作りました。

 すべての準備が整い、食糧をのせ、それから私の家族に見せたかったので、生きた雌牛、雄牛、羊ものせました。小人も何人か連れていきたかったのですが、王様が許してはくれませんでした。
こうして私は出発し、2日後に大きな船をみつけました、船長は私を船に乗せてくれました。彼は、私のポケットに入っていた牛や羊を見るまで、私の話を信じてはくれませんでした。
ようやく家に着き、私の妻や子どもたちは、ふたたび私に会うことができ、冒険の話をきいて大いに喜びました。牛や羊は、ロンドンのグリニッツジにある私の家の近くの公園において、草を食べさせてやりました。もし今、あなたがそこへ行ってみたら、牛や羊が見られるかもしれませんよ!

〈ブロブディグナグへの旅〉

 しばらく家にいた後、私はふたたび海へ出ていきました。私は旅が好きなのです。
旅の最初のころは、何も困ったことはなく快適でした。ところがある日、ひどいあらしに遭い、船は予定の航路よりも、100マイルも流されてしまったのです。私たちは当惑してしまいました。船にはたくさんの食糧がつみこんでありましたが、水はあまりありませんでした。そこである日、私たちが島をみつけたとき、船長は私たち何人かに、陸に水を探しにいかせました。
浜辺に着いても、川や泉の影も形もありませんでした。他の人たちはみんな、浜辺の海に近いところで水を探していました。私はもっと陸の奥の方へ入っていきましたが、水をみつけることができませんでしたので、もとのところへ引き返しました。
私の立っていたところから、他の人たち全員がボートに乗り、船に向かってできるだけ速くこいでいくのが見えました。私をおいていってしまったのです! と、そのとき、私はその理由がわかりました。大きな、人のような生きものが、彼らの後を追って、海を大またに進んでいたのです。
私は何が起こるのかを見るまで待ってはいませんでした。できるだけ遠く走って逃げ、急な丘を登って、この国がどんなところなのかを見ました。

 私は、自分の目が信じられませんでした! 草は、ほとんど家くらいにのびて、とうもろこしがその上の方に、教会の塔のように高くそびえていたのです!
私は大通りだと思っていたところに沿って歩いていたのですが、あとでそれは、単にこの国の人たちの歩道にすぎなかったことがわかりました。そうして私は階段のところに来ました。
この階段の1つ1つが、私にとっては高い壁のようであり、登れませんでした。私が巨大ないけがきのすきまを探していると、別の大きな人間が見えました。それは、私の友人たちを追いかけていたのと同じようでした。私はとても恐ろしくなって、とうもろこしの方へかくれようと、かけ出しました。
彼は、私にとってはかみなりのように思える声で呼びました、すると、彼のような巨人が7人やってきました。みんな、とうもろこしを刈るために、私たちの持っているものの6倍もあるような、大がまを持っていました。

 私はますます恐ろしくなってしまいました。どこにかくれたらいいのでしょう? 私は、あちこち走りまわって彼らをよけていたのですが、相手の方が、私が逃げるのよりずっと速かったのです。
とうとう私は、1人が今にも私をふもうとしたとき 「とまってくれ!」 と、できるだけ大きな声を出しました。その男は下をみおろし、私をつまみあげ、かみつかれないようにしっかりつかみました。それから彼は、自分のみつけたものを見せに、主人のところへ持っていきました。
この男は農夫で、私が最初に畑で見た大きな人間でした。

 農夫はハンカチを出して私をそれにつつみ、自分の農場へ持って帰りました。彼の妻は、私を最初見たとき、悲鳴をあげて逃げまわりました、私の妻がねずみを見たときにやるように!
それから、3人の子どもが私を見にきました。みんなこれから夕食をとろうとしていたところで、食べながら見られるようにと、私をテーブルの上に置きました。
それはまるで、家の屋根の上にいるようでした。私は恐ろしくて恐ろしくて、落ちてしまわないように、できるだけ端から遠ざかっていました。

 農夫の妻はパンくずを私にくれ、肉をこまかにきざんでくれました。私は自分のナイフとフォークを取り出して食べはじめましたが、これを見て彼らは喜びました。農夫の妻は、一番小さいカップ (それはバケツほどもありましたが) の中に、サイダーを入れてくれたのですが、私は全部飲むことはできませんでした。
そのとき赤ん坊を抱いて、子もり娘が入ってきました。その赤ん坊は、私をおもちゃとして欲しがりました。彼らが私を赤ん坊にわたすと、赤ん坊は、私を頭から口に入れようとしました。私が大声でわめいたので、赤ん坊はおどろいて私を落としてしまいました。赤ん坊の母親が、エプロンで受けとめていなかったら、私は死んでいたところです。

 夕食の後、農夫はまた畑にもどっていき、彼の妻が私をベッドに寝かせ、シーツのかわりにハンカチをかけてくれました。ベッドはイギリスの大通りと同じくらい広く、ハンカチは船の帆よりも厚かったのです。
あとでこの家の娘が、赤ん坊のゆりかごの中に、私のベッドを作ってくれました。この少女は私にたいへんよくしてくれました。彼女は9才で、この国では年のわりには小さく見えました、たった40フィートしかなかったのですから! 彼女は私を「小さい人間」 という意味の、グリルドリッグと呼び、彼女たちの言葉を話せるように教えてくれました。私は彼女がとても好きでした。
近くに住む人たちは、私のことをきくと、すぐに見にきました。そのうちの1人が農夫に、次の市の日に私を町へ連れていって、お金をとって見せるべきだといいました。そして、農夫はそのとおりにしました。彼の娘が、私の世話をするためにいっしょに来たので、私は彼女を、私の子もり娘と呼びました。
私は、宿屋の一番大きな部屋で、テーブルの上にのせられました、それはまるで、フットボールの競技場くらいの大きさでした。私は思いつくだけの、いろいろなおもしろい芸当をしました。さか立ちをしたり、ぴょんぴょん飛んだり、踊ったりして、私を見にきた人たちを喜ばせました。

 農夫は、私を見せることによってたいへんな金もうけをし、彼は、私を他の町にも連れていくことにしました。そしてとうとう私たちは、王室のある都にまで来てしまったのです。
女王様が私を大そう気に入ってしまい、農夫から買い求めました。私は女王様に、私の子もり娘もいっしょにいさせてくれるように頼み、彼女は許してくれました。それから農夫は帰っていきました。
女王様は、私のために小さな部屋を作ってくれました、その部屋の天井は持ち上げることができ、家具は私にちょうどいい大きさでした。彼らにとってはそれは、持ち運びできるように革ひものついた、小さな箱でしかなかったのです。女王様はまた、私のために銀カップ、うけ皿、そしてお皿も作らせました。

 彼女にとって、それはまるで人形のお茶セットのようでした!
私はいつも、女王様のテーブルの上にある小さなテーブルで食事をしましたが、彼女が食事をするところを見るのはいやなものでした。彼女は、私たちのパン2斤くらいの大きさのパンの切れ端を、一気に口に入れてしまうのです! 彼女のディナー・ナイフは、私よりも大きくて、たいへん危険に見えました。
毎週水曜日に、といっても彼らにとってはそれは日曜日に当たるようなのですが、必ず王様が、私たちといっしょに夕食をとりました。王様は私と話し、イギリスのことをきくのが好きでした。彼は、どんな点で私たちが、彼の国ブロブディグナグの人びとと違っているのかを知りたがりました。

 ただ1人、私とうまくいかなかったのは、女王様の小人でした。彼は私の5倍はあり、約30フィートはあったのですが、これでも彼らのなかでは小さい方だったのです。王様などは、この小人の2倍はあったのですから!
この小人は、私にいろいろいたずらをしました、なぜなら、女王様が、この小人よりも私を気に入っていたからです。一度、彼は私をクリームつぼの中に落としました。私はふちまで泳いでいき、私の子もり娘が救い出してくれました。女王様は小人を大そう怒り、遠くへやってしまいました。
彼女らが私に小さいボートを作ってくれ、こげるように水のおけの中に入れてくれたとき、私はうれしく思いました。ときおり、ボートに帆もつけてくれました。それから女王様と侍女たちは、扇で風をおくりました。みんな、私がいかにうまくボートを操縦するかを見るのが好きでした。私にとっても、それはたいへんな楽しみだったのです。
しかしときには、ブロプディグナグでの生活が、まったくおもしろくないこともありました! 一度は、私は、何匹かのスズメバチを短剣で追いはらわなければなりませんでした。ススメバチは、鳩ほどの大きさもあり、私の親指くらいの大きさの、ぬい針のようにとがった針を持っていたのです! 私は4匹殺しましたが、残りは逃げてしまいました。
またあるときは、猿が私の部屋に入ってきて、私を抱きあげました。私が思うに、猿は、私を赤ん坊の猿だと勘違いしたのです、なぜなら猿は、私を抱きながら、優しく顔をなでたからです。突然、ドアのところで音がし、猿は私を連れて窓からとび出し、屋根に上がってしまいました。彼らははしごを持ってきて屋根に上がり、猿を追いはらって私を連れおろさなければなりませんでした。

 ある日、王様が私と話をしているとき、私は火薬の作り方を教えてあげましょう、そうすれば数々の戦争で勝つことができます、と言いました。
しかし、ブロブディグナグの王様は、たいへん賢い人でした。彼は作り方を教わりたくないと言うので、私はもう話しませんでした。彼は、もし人が、今まで1つしか育たなかったところに、2つのとうもうこしを育て、2本の草を育てることができたなら、それは戦争に勝つよりもっとためになることをしたことになると言いました。

45ページ
こんなことがあってからまもなく、王様と女王様と家来たちは、ブロブディグナグの、他の土地へ長旅に出発しました。私は箱に入って、いっしょについていきました。彼らは、箱の中にハンモックをつるしてくれました。そうすれば、ついていく途中のゆれをそんなに感じなくてすむからです。
私の子もり娘もついてきましたが、途中でひどいかぜをひいてしまいました。やっと宿泊地に着いたときには、ベッドで2、3日休んでいなければなりませんでした。
私は、海の近くに来ていることがわかると、ぜひもう一度海を見たいと思いました。私の子もり娘が床についていたので、女王様の小姓のうちの1人が、私の箱を海岸に持っていくように言われました。
私はハンモックに横になり、海をながめ、さびしく思っていました。いつまた家を見ることができるのでしょうか?
小姓は鳥の卵を探しにいってしまい、私は眠りこんでしまいました。

 私は突然の振動に目をさましました。頭の上で大きくひゅーひゅーという音がし、箱はものすごいいきおいで上にあがっているようでした。私は何回か大声を出したのですが、誰もきこえませんでした。
そのとき私は、何が起ったのか推測しました。大きな鳥、たぶんワシが舞い降りてきて、くちばしで箱の取手をくわえていったのでしょう。私は空中を飛んでいたのです!
やがてすぐ、ワシ同士が争ってでもいるかのように、大きな鳴く声がし、たちまち私は落ちていきました。だんだん早く、下へ、下へ、下へ! 箱は大きくザブーンという音をたてて、とまりました。
しばらくして、私のふるえはとまり、窓から外を見てみました。私は海にいたのです!
箱の屋根についている小さなはね上げ戸を開けて、新鮮な空気を入れました。それから助けをよんだのですが、誰にも聞こえなかったらしいのです。ここに私の子もり娘がいたら、どんなによかったでしょう!
私はハンカチを取り出すと、ステッキに結びつけました。それから、いすの上に立つと、はね上げ戸からその旗をさし出し、それをあちこち振りながら、ふたたび助けをよびました。誰も来ませんでした。私は途方にくれて、あきらめてしまいました。

 私は長いこと、望みを失って、すわっていました。それから、私は窓の外を見て、突然箱が引っぱられているのに気がつきました。
しばらくして箱はとまり、私の頭の上で、取手にケーブルが通されたような、カラカラという音がしました。ふたたび私は、はね上げ戸から、さっきの旗を出し、助けをよびました。今度はたいへんうれしいことに、誰かが返事をしたのです──しかも英語で! 私は彼に、そばにきて、出してくれるように頼みました。彼は、私はもう安全であり、箱は彼の船の横に結びつけられていると言いました。彼はまた、1人をこっちへこさせて、穴をあけてくれると言いました。
すぐにこの作業が行なわれ、私は、快く助けようとする人びとの手と、はしごの助けにより、甲板の上にひきあげられました。
その船はイギリス船で、イギリス人の船員が乗っていました──巨人でもなく、小人でもなく、私と同じ大きさの人たちでした!

 船員たちは、なぜ私が箱の中にいたかとききました。私が今までの話をしても、彼らは信じてくれませんでした。最初、船長は、私が何か思いことをしたので、箱の中にとじこめられたのだと思っていました。私がブロブディナグの話をしても、彼も信じてくれませんでした。
そこで私は、女王様にもらった金の指輪を見せました──その指輪はあまりに大きかったので、首飾りのように、首にかけていたのです。それから、私は船長に、プロブディナグの歯医者がまちがえて抜いた、巨人の歯をわたしました。その歯は、ミルクびんほども大きかったのです!
最後には、彼は私を信じてくれました。彼は、私をイギリスへ連れて帰ってくれると言い、私たちは家に向かって船を進めました。
何週間もの航海の後に船をおり、陸にふたたび着いたとき、家や人びとがすべてたいへん小さく見えたので、私は、またリリパットに来たのかと思ってしまいました。私の妻は、私が体験してきた危険なできことについての話を全部聞くと、もう絶対海に出てはいけないと言いました。


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