レディバードブックス100点セット
 

 

失われた世界

 私、エドワード・マーロンが、初めてあの風変りな男、チャレンジャー教授に会ったのは、私がまだガゼット新聞社のかけ出し記者だったころでした。チャレンジャー教授は科学者であり、探険家でもあり、そのころちょうど、彼の見た変った生き物の不思議な話をたくさんもって、南アメリカ、アマゾン川上流の探険から帰ってきたところだったのです。私は彼を取材してくるようにいいつけられたのです。それが私の生涯の冒険につながろうとは、夢にも思いませんでした!
「教授は乱暴だし、危険で気むずかしい男だよ。彼と会った人間はみんなきらっているのさ」私はこう注意されていました。彼は実際、彼の話を信じようとしなかった何人かの記者に、なぐりかかったことがあるのです! でも、私は若く頑丈だし、ラグビーをやっていたこともあるので、こんなことではおどろかされませんでした。それに何か変ったものを探りだして、私の恋人を感心させたかったのです、彼女は、私が成功したら結婚してくれると言ったのでした。
教授は体の大きい毛むくじゃらな人で、黒いひげを生やし、樽のような胸、刺すような目、そしてとてつもなく大きい手をしていました。彼の声はうなるようなガラガラ声で、たしかに恐ろしいものでした。でもなぜか彼は私を気に入ったようで、スケッチブックを見せてくれました。それは、メープル・ホワイトというアメリカ人の画家のもので、教授は、その人がアマゾンの森の近くの村で死んでいたのをみつけたのです。

 最初のページは景色のスケッチでした。手前にある、薄緑の羽のような植物が、赤っぽい崖の線に向かってゆるやかな傾斜で生え、崖は絵を横切って、ずっと切れ目のない壁になって続いていました。一か所、1本の岩の柱があり、そのてっぺんに大きな木が生えていて、広い裂け目によって、崖から切り離れて突ったっていました。うしろには真青な熱帯地方の空がありました。赤い崖の上には、もっとたくさんの木が生えていました。
「とてもおもしろいですね」 と、私は丁重に言いました。
「おもしろい?」 教授は大声をあげました。「こんなのは世界じゅうどこを探したってないんだぞ! おどろくべきことなんだ! ページをめくってみたまえ!」

 ページをめくって、私は大声をあげました。それは私が見たこともない、まるで悪夢から出てきたような、とても変った生き物の絵でした。その生きものの頭は鳥のようで、体は太ったとかげのようでした。長く引きずった尾にはとげが並んでいました。丸くなった背中には、1ダースものオンドリのとさかのような妙なへりが交互に並んでいました。そして、小人のような小さな男がその前に立って見あげていたのです。
「なぜ彼がこんな動物を書いたと思うかね?」
「酔っぱらっていたんでしょうよ! あなたはどう説明するんですか」 と、私はききました。
「明らかに説明できることは、この生き物がいるということだ。つまり、実際に生きているものをスケッチしたということさ」

 もし私が教授の気質についてきいていなかったら、面と向かって笑いとばしていたでしょう。彼は怒り狂った野牛のように鼻をならし、大きな毛むくじゃらの、先まで太い指で絵をつつきました。
「この生き物のうしろにある植物がわかるかね? きみはたぶん、これを芽キャベツだと思っただろう! これはゾウゲヤシという植物で、少なくとも50フィートはのびるんだ。この人間は大きさを比べるために書かれているんだぞ。この人間だって、5、6フィートはあるだろう。木は10倍も大きいんだ。さあ、そうするとこの怪物はどうなるのかね?」 彼はゆっくりと、皮肉たっぷりに言いました。
「チャリングクロス駅に匹敵するくらいの大きさでしょうね!」 と、私は認めました。
教授はたなから本を取りだしました。
「ここに、化石の研究から、大昔の動物がどんな姿をしているのか復元したものがある。これはジュラ紀の恐竜で、ステゴザウルス(剣竜) というんだ」
私は息をのみました。ジュラ紀の岩層は、まだ人間がいなかったころ、およそ1億3千5百万年ごろ始まりました。この時代は恐竜という大とかげの時代でした。スデゴザウルスは、よろいでおおわれた恐竜でした。チャレンジャー教授は、今世紀南アメリカで、メープル・ホワイトによってその1頭が生きているのが自撃されたと私に信じさせたがっているのです!
今度は、彼は私に色あせた写真を手渡しました。それはスケッチと同じ景色でしたが、ただ木の上に、大きな鳥のようなものがいました。
「さあ、この虫眼鏡で見てごらん」
「くちばしの大きな鳥のようですね──ペリカンじゃないでしょうか」 と、私はそう考えました。
「きみの視力はあまり喜ぶべきものではないな」 教授はぶつぶつ言いました。「これはペリカンでも鳥でもない。私はこいつを撃ち落したんだが、残念なことに、船の事故で死骸をなくしてしまったんだ。翼の一部だけをなんとかとっておくことができたのだが」

 その断片は、湾曲した骨に皮のような皮膚がついていて、コウモリの類の一部のように私には思えました。
「巨大なコウモリですか?」 私は思いつくままに言いました。
教授は、また本を開きました。
「ほら」 と彼は、飛んでいる怪物の絵を指さして言いました。「これは、ジュラ紀の空飛ぶは虫類、プテロダクティル(翼竜) のみごとな復元だ。次のページには、その翼の仕組の図が載っている。よろしかったらどうぞ、それときみが手にしている見本とを比べてみるといいよ」
私はプテロダクティルについては少しは知っていました。名前の 「プテロ」 の部分は 「翼」という意味で、「ダクティル」 の部分は 「指」 という意味で、つまりこれは指のついた翼ということなのです。こんな生き物が現在空を飛びまわっているなんて、信じられませんでした、にもかかわらず、私はその一部分を手にしていたのです。どんなに信じがたくとも、教授は自分に有利な実際の証拠を持っていたのでした。
「今までに、こんなすごいことはきいたこともありませんよ」 私は熱っぽく叫びました。「あなたは失われた世界を発見したんですよ! でもこれをどう説明するんです?」
「そのあたりで火山の爆発があったに違いないんだ。それがイギリスと同じくらいの大きさの地帯を、生き物も全部いっしょに、平地よりずっと高い位置に持ちあげてしまったんだろう。これが高原か台地となり、国から切り離されてしまったんだ。こうして、絶滅していたはずの生き物がそこに生き残っているんだ」
ふと教授にある考えがうかびました。「その台地行きの探険に加わらないか?」 彼は熱心に言いました。「私の一番のライバル、サマリー教授も自分自身で確かめに行くんだ、あいつは私の言うことを信じていないんだ。それから猛獣ハンターのジョン・ロクストン卿も行くんだ。我々の話を書いてくれる記者がいるとありがたいんだよ」

 私はためらいませんでした──こんな機会は生涯に二度とありませんから。編集長にこの話をすると、彼も、ぜひきみが行ってガゼット紙にいい記事を載せるようにと大乗り気でした。後になって、私は探険に行く他の2人に会いました。サマリー教授はやせて皮肉っぽい感じの人で、チャレンジャー教授の主張をあざけっていました。ジョン・ロクストン卿は本当の冒険家で、有名なハンターであり、濃く日焼けして、赤っぽい髪に鋭い青い目をしていました。私はすぐに彼が好きになってしまいました。私が探険隊のなかでは一番若いのでした。もしこれから起ろうとすることがわかっていたなら、私はこんなに熱心にはならなかったでしょう。

 私たち3人は船でブラジルへ渡り、それからマナオ(ブラジル北部) まで汽船で行き、 そこでチャレンジャー教授が合流しました。私たちは変った一行でした。まばらなヤギのようなあごひげを生やした65歳のサマリー教授は、網を持ってそこらじゅうを走りまわり、標本を集めていました。
彼は、一風変った 「放心状態におちいる教授」 で、服装にはむとんちゃく、いつもやることなすことがあまり清潔でなく、絶えず短くてずんぐりしたパイプをふかしていました。
40代のジョン・ロクストン卿は、白のトロピカルスーツに長くて茶色いモスキートブーツをはいて、たいへんきちんとした身なりをしていました。彼は1日に少なくとも一度はひげをそり、静かな声と物腰をしていました。彼はインディアンたちに崇拝されていて、髪の色から 「赤い首長」 と呼ばれていました。以前、ペルーの奴隷売買者からインディアンの一族を助けてやり、自ら手を下して奴隷売買者のリーダー、ペドロ・ロペスを殺したからです。彼の、その国のことや言葉に関する知識はたいへんな助けになりました。
私たちの旅は汽船に始まりましたが、やがて奥地に入るにつれ、2つのカヌーにし、荷物を2つに割りふりました。私たちといっしょに、ポルトガル人とインディアンの混血の2人の兄弟ゴメス、黒人のザンバ、そして2人のインディアンが同行して案内してくれることになっていました。

 ときどき急流を避けるために、カヌーを陸へあげて運んでいかなければなりませんでした。森の荘厳な神秘に、私たちは威圧されてしまいました。
巨大な木々が頭上にのびて、堂々たる列を成していました。その枝は、大きな緑色のからみ合った天井を作り上げていました。すきまから迷いこんだ黄金の日ざしだけが、薄暗がりのなかへ差しこんでいるのでした。私たちは朽ちた植物の厚いカーペットの上を静かに歩きました、あたりはしんとしていました。鮮やかな蘭が木の幹に生えていて、金や真紅や深い紫の大きな花が咲いていました。つる植物がどの木にも巻きついていました。
私たちが野生の生き物のたてる音を聞いたのは、日没と夜明けだけでした──それは、木のてっぺんでホエザルが叫び声をあげているのや、インコのかん高いさえずりなどでした。遠くの方で、太鼓の音が聞こえました。
「戦いの太鼓だ」 と、ジョン卿が言いました。
「そうだ」 と、ゴメスの兄の方が言いました 「インディアンの蛮族だ。やつらは我々の行方をいつも見ている。そして、機会があればつかまえようとしているのだ」

 私たちは、チャレンジャー教授が秘密の台地へ続く道だと覚えていた道標のところに近づきました。突然彼は、通路へ出ることを示した高いヤシと薄緑のトウシンソウの一帯をみつけたのです。私たちはカヌーを進め、別の、浅くてさざ波をたてて流れる水晶のように澄んだ川にいるのに気づきました。その川は木々の緑のトンネルを通って、美しく不思議な世界へと続いていました。もう太鼓の音は聞こえなくなって、目のさめるような草や木のなかで動きまわっている、動物や鳥の音がしているだけでした。
「ここにはインディアンはいない──クルプリが恐いのだ」 と、ゴメスが言いました。
「クルプリというのは、森の精のことなんだ」 と、ジョン卿が説明しました。

 3日後には、私たちはカヌーから降りて、蚊の群がる沼のなかを歩いていかなければなりませんでした。それから道は上に向いはじめました。森はまばらになり、ヤシの木立があって、間には茂みがありました。進んでいきながらも、2人の教授は絶えず、どちらがこの探険の責任者かで口論していました。
私たちはさらに9日間歩き続け、それからは、竹やぶのなかの道を切り開いていかなければなりませんでした。大きい動物たちが、すぐそばを動きまわっているのが聞こえました。そしてその後、一連の丘の最初の1つにたどり着いたとき、1マイルほど先に、大きな灰色の鳥のようなものを見たのです。それはゆっくりと地面からはばたき立ち、すべるようにシダの方へ飛んでいきました。
チャレンジャーは 「サマリー、あれを見たか?」 と、叫びました。
「あれが何だというんだ?」
「私の信じるかぎりではプテロダクティルだ!」

 「プテロークダラナイだと!」 サマリーは笑いました。「もし何かを見たとしても、それはコウノトリだ!」
ジョン卿は双眼鏡を目に当てました。
「あれは、私が今までに見た鳥とは違うようだ」 彼は思慮深く言いました。
私たちは旅の目的に近づいており、未知のすぐそばにいるのでした。

 とうとう私たちは、台地を取りまいてそびえ立つ崖の下にやってきました、そして、決して登ることのできない、張りだした頂上を見あげました。
ただ岩の柱だけは少し低く、それは広い裂け目によって、台地から切り離されていました。

 「どこか登る道があるはずだ」 チャレンジャーは悩みました 「そうでなければ、メープル・ホワイトは、いったいどうやってあの絵に描いた怪獣を見たんだ?」
「あの上に何か生き物がいるという証拠は、まだ何もないんだぞ」 と、サマリー教授はあざけりました。でも彼は、すぐに前言を取り消すことになるのです。
私たちは崖のふもとのまわりや、砦を越えたりじめじめしたところを通って歩きました。それには5、6日かかりました。ある場所で私たちは古いたき火の跡をみつけ、崖にチョークで書かれている矢印をたどっていきました、それはおそらくメープル・ホワイトによって書かれたものと思われました。矢印は、私たちをあるほら穴の入口に連れていきました、これはたぶん上へ続く道だったのでしょうが、落石によってふさがれていました。
一番ぞっとするような発見は、背の高いとがった竹やぶのまん中に白く光っていた、人間の頭蓋骨でした。そばには骸骨もありました。イニシャル入りの銀の煙草入れによって、チャレンジャーは、それがメープル・ホワイトの一行の1人が持っていたものではないかと思いました。
「崖から落ちたんだろうな、運の悪いやつだ!」 と、ジョン卿は言いました。
「落ちたのかな──それとも突き落とされたんだろうか?」 と、私は考えました。
その晩は、テントを張って夕食をとることにしました。ジョン卿が小さな野生のブタをしとめ、私たちは火をおこしてそれを焼きはじめました。

 月は出ていませんでしたが、星あかりで平野の少し先まで見えました。
突然、夜空から飛行機のように、ヒューという音をたてて何かが飛びかかってきました。私たちは一瞬、天をおおうばかりの草のような翼でおおわれました。私は、長くてへびのような首に、どん欲そうな赤い目、そしてかみつくような大きなくちばしを見ました。次の瞬間には、もうそれはいなくなっていました──そして、私たちの夕食も消えていたのです! 20フィートもある大きな黒い影が星の光をおおい隠し、崖の向うへ消えていきました。

 しばらくして、サマリー教授が沈黙をやぶりました。
「チャレンジャー教授」 と、彼は真面目くさって言いました 「私はあなたにおわびしなければならないな」
この2人がとうとう手を取りあって仲なおりをしたのですから、盗まれた夕食分の価値はあったというものです。

 朝になって私たちは、岩の柱に挑戦してみることにしました、それしか登る道はないように思われたからです。チャレンジャーは長くてじょうぶなロープをひと巻と、他にも登山用の道具を持ってきていました。彼が一番最初に上に登り、てっぺんで大きな木の幹にロープを巻きつけました。
それから残りの人間が引っぱりあげられ、みんなは、25フィート平方ほどの草が生えた高台に乗ったことがわかりました。私たちは、下に見える広大な平野と、その向うに見える今まで通ってきた森のながめにおどろきましたが、チャレンジャーは台地の方に行きたがりました。
「この木が我々の問題を解決してくれるだろう」 彼は興奮して言いました。
「我々に必要なのは、この広い裂け目を渡る橋なのさ」

 それはすばらしい思いつきでした。木はもうすでに台地の方に傾いていましたし、もし気をつけて切れば、まっすぐ裂け目を渡って向う側へ倒れることでしょう。教授は斧を持ってきていました。彼はジョン卿と私、つまり一番若くてじょうぶな者に木を倒すようにと言いました。1時間ほど私たちは力のかぎり頑張り、それから裂けるような音がしました。木は倒れ、枝は反対側の茂みのなかに落ちました。
当然のことながら、教授が一番に渡りたがり、元気よく上を渡っていきました。私たちはもう少し慎重に後に続き、私は下を見ないようにしました。ジョン卿は平然とぶらぶら渡りました。あの人は鉄の神経を持っているのです。

 私たちが50歩も歩かないうちに、うしろですさまじい音がしました。あわててもどってみると、私たちがかけた橋がなくなっていたのです──深い裂け目に落ちていたのでした。いったい何が起ったのでしょう?
その答はすぐに得られました。憎しみに顔をゆがめ、ほくそえんでいるゴメスの兄の顔が現れたのです。彼と弟が、太い折れた枝を使って幹を取り去ったのでした。
「さあどうだ、イギリスの犬め!」 彼はジョン卿に向かって叫びました
「おまえはそこに残されるんだ! おまえは5年前ペドロ・ロペスを殺しただろう、これがおれの復讐だ! おまえたちはわなにひっかかったんだ、1人残らずな!」
そう言うと、彼は岩の柱をはいおりていきました。ジョン卿は台地のふちまで走っていくと、発砲しました。悲鳴が一声と、からだのドサッと落ちる音がしました。
「これは私の責任だ。こいつらがどんなにしつこく恨みを抱いているか覚えておくべきだった」 と、ジョン卿は言いました。
下の平野で弟の方が、私たちの忠実な黒人ザンバにつかまっているのが見えました。まもなくザンバの正直そうな顔とたくましい体が柱の上に現れました。もはや彼だけが外の世界との唯一のつながりでした。

 「私は逃げませんよ」 彼は叫びました 「でもインディアンたちは逃げてしまいました。クルプリがこわいんですよ!」
彼は木の切り株からロープをほどくと、私たちの方へ投げてよこしました。それで食料や弾薬を少し、裂け目を越えてこちら側へ引きよせることができたのですが、下へおりるにはロープは短かすぎました。まるで月にでもいるかのように、人間による救出からほど遠いところにいたのです。

 私が古びたノートと鉛筆を持っていたのは幸いでした、この台地で起ったおどろくべき体験を記すことができるからです。もうすでに、これまでの旅程は図に書いておきました。
私たちは、とげだらけの茂みのさくで守られている空地に本拠地を構えました。そしてそのなかに、荷物を積みあげておきました。1本の大きなイチョウの木が、私たちの小さなとりでをおおっていて、近くには小川が流れていました。気候はそんなに暑くありませんでした。音さえたてなければ私たちは安全だったのです。ジョン卿がこう言いました。「行き来するような仲になる前に、お隣さんがどういう人たちだかよく見ておかないとな!」 私たちはこの台地を、最初の発見者にちなんでメープル・ホワイトランドと名づけました。
私たちが最初に見た生き物の跡は、小川の近くの柔らかい土の上に残された、巨大な3本指を持った足跡でした。

 「まったく!」 と、ジョン卿がおどろきの声をあげました。「これがきっと、すべての鳥の祖先なんだろうよ!」
大きな足跡のなかに混じって、5本指の、人間の手のような跡もありました。
「これは前に見たことがあるぞ」 チャレンジャーが叫びました 「──粘土のなかで化石になった足跡で見たんだ。この生き物は3本指で直立になって歩き、ときどき5本指の前足を地面につけるんだ。これは鳥ではないんだよ、ロクストン君──は虫類なんだ! 恐竜なんだよ!」

 それをたどっていくと、私たちは森のなかの空地に出ました、そこには今までに見たこともないような、もっともおどうくべき生き物が5頭もいたのです。私たちは茂みにはいつくばって、目を見張って見ました。
その生き物は巨大なカンガルーに似ていて、体長は20フィート、黒いワニのようなうろこ状の皮膚を持っていました。

 それは力強そうな尾でバランスをとって立ち上がり、5本指の前足で枝を引っぱって緑の若枝を食べていました。とてつもなく力持ちらしく、枝ごとまるまる木からむしり取っていました。2頭は親で、他の3頭は子どもでした。彼らの脳はとても小さく、反応は鈍いのです。5頭はもっと食べものを求めて、おとなしくどしんと歩いていってしまいました。

 「今のは何だ?」 と、ジョン卿はききました。
「イグアノドン(禽竜) だ」 サマリーが言いました。「やつらは草食竜なんだ。イギリスの南へ行けばやつらの足跡がそこらじゅうに見られるんだよ。やつらを維持するだけの緑の植物が十分でなくなったとき、死に絶えてしまったんだ。ここでは状態がずっと変らないので、やつらは生きのびていたんだろうな」
この怪獣たちは害をおよぼしそうではありませんでしたが、他にどんな凶暴な生き物が残っているかわかりませんでした。
私たちはジョン卿を先頭に、森のなかを慎重に進んでいきました、2人の教授はその間も、不思議な新しい昆虫や花に立ち止まっておどろいていました。そのとき、何か妙な口笛のような音がしたのです。ジョン卿が丸い石の並んだところへ来るように手招きをしました、そこで私たちはおわん型の噴火口のなかをのぞきこみました。

 底にはよどんだ水がたまっていました。そこは気味の悪い場所でしたが、そこの住人はもっと気味悪かったのです。そこは、プテロダクティルの生育所だったのです! それはもう何百匹といたのです、気味悪そうな母親が、穴の底で硬い黄色い卵の上にすわってかえそうとしていました。穴の上では、オスが別々の岩の上にすわっていました、そして、大きなトンボが近くを通ったのをネズミ捕りのようなあごでつかまえる以外は、まったく動かずにいました。彼らはコウモリのような翼をたたんでいると、ショールをまとった不気味な老女のように見えました。岩の上にある食いちらしやかけらやひどいにおいから判断して、彼らは魚や死んだ鳥を食べているようでした。

 突然プデロダクティルは、私たちがそこにいるのに気づいたのです。およそ100匹もが空に舞い上がり、私たちのまわりを回りだしました。サマリーは、その恐ろしいくちばしでつつかれました。チャレンジャーは、翼の一撃で地面に倒されていました。ジョン郷は、開いたくちばしに血走った目をもつ悪魔のような化物と争っていました。私たちは森に向かって走りました、そこなら、枝の下を飛ぶ余地もないからです、こうして彼らは追うのをやめました。やれやれありがたいと私たちは、本拠地の隠れ家へ帰りました。

 その晩、私は眠れませんでした。なんだか上から見られているような、妙な気がしたのです、頭の上の、大きな木の薄暗がりのなかには何も見えなかったのですが。突然私たちは、世にも恐ろしい音に起き上がりました。
それはまるで汽車の汽笛のような、しかし少し低めの、耳をつんざく悲鳴と、それに続く、のどを鳴らすような低い笑い声でした。それが静まると、テントのすぐ外の方で、大きな動物のぶらぶら歩く、重く静かな足音がしました。私たちには、そのかがんでいる影が木の下に見えました。
ジョン卿は勇敢にもたき火から燃え盛る枝を取りあげると、前に走っていってその生き物の顔に突きつけました。一瞬、いぼだらけの皮膚に、血だらけのゆるんだ□もとをした、巨大なカエルのような恐ろしい顔がちらりと見えました。それから、もうその生き物はいなくなってしまいました。
私たちはその晩、交替で見張りをしました。
朝になって、あのぞっとするような騒ぎのわけがわかりました。あのイグアノドンの空地が戦いの場となっていたようでした。血や肉の魂があちこちに散らばっていました。何か重く大きい怪獣が食いちぎられたようでした。教授たちによると、相手は巨大な肉食竜、たぶんメガロザウルスではないかということでした。

 私たちにはまだ、この台地がどれほど広いのか見当もつきませんでした。私は、テントのそばにあるあの大きないちょうの木に登って、上から様子を見渡してみようと提案しました。みんなはそれはいい考えだと言って、私を枝のなかへ押し上げました。葉がびっしり生えているので、登りながら、大きなひと塊の葉をかきわけました。恐ろしいことに、私は、どちらかというと猿に似た人間の顔のようなものと向きあっていたのに気づきました。それは醜くて獣のようで、平たい鼻、あらいひげ、曲がった犬歯をもっていました。その目は邪悪で凶暴そうでした。突然それはぎょっとして、緑のなかにとびこんでいきました。私は、赤っぽいブタのようなその毛むくじゃらの体をちらりと見ましたが、それは消えてしまいました。

 私は自分の役目を果さなくては、と決心して登り続け木のてっぺんにたどりつき、この不思議な国のすばらしい全景をながめました。
それは、およそ長径30マイル短径20マイルほどの楕円形で、まん中の湖に向かってすべての地面が傾斜しているので、じょうごのように見えました。台地の、私たちのいる側は森でした。イグアノドンの空地とプテロダクティルの沼が見えました。反対側は崖で、ほら穴のような丸い穴がたくさんありました。私は急いでスケッチすると、仲間にみつけたものを知らせにはいおりました。
チャレンジャー教授は、私の見た猿は、きっと人間と猿の間の 「失われた環」 であろうと考えました。

 その晩、私はふたたび、とても興奮してしまって、寝つかれませんでした。そして台地の不思議なことを探検したくなって、黙って1人で出発したのです。
私は小川に沿って下り、湖の岸まで来ました、そこは動物たちの水飲み場になっていたのです。高い岩によじ登り、不思議な生き物たちを見おろしました。水面には波紋やさざなみが起こり、大きな銀色の魚がはねて光ったり、通り過ぎる怪獣のへびのような首や弓形の背中が見えたりしていました。

 枝をつけた角をもつ、巨大な雄鹿のようなオオシカが水を飲みにやってきました。一番すばらしかったのは、メープル・ホワイトがノートに描いた、まさにあのステゴザウルスを見られたことです。それはすぐそばを通ったので、背中の肉垂に触れることができたくらいでした。

 向うの崖を見て、私は丸い光をみつけてびっくりしました。あのほら穴には、人間によってともされた火があるに違いないのです! この台地には人間が住んでいたのです! 私はみんなに知らせようと急いでもどりました。
途中、ヒキガエルのような顔をしたあの大きな肉食竜、メガロザウルスからかろうじて逃げてきました。そいつは茂みのなかから、私のことをかぎつけて追ってきたのです、私は気違いのように走りました。そして、枝でおおわれた、道のまん中にあった穴にまっさかさまに落ちてしまいました。
その中には血塗られた、たくさんの木のくいがあり、まわりには骨や動物の死骸がありました。これはほら穴に住む人によって掘られたわなに違いない、と私はそこからはいだしながら考えました。
私は本拠地に近づきながら、もどったことを知らせようと大声をあげました。おどろいたことに何の返事もなかったのです。そして恐ろしい光景が私の目にとびこんできました。荷物があたり一面にちらばっていました。
くすぶっているたき火の灰のまわりの草は、ぞっとするような血の海で汚れていました。
私がこわごわあたりを見まわしていると、腕をつかまれました。ジョン卿がもどっていたのを見て、私は喜びの声をあげました。彼の顔はひっかき傷だらけで血が出ており、服もぼろぼろでしたが、傷害はうけていませんでした。
「早く、君! 銃と弾を取ってくるんだ。ポケットいっぱいにしろ。それから食べもののかんづめも持ってくるんだ! しゃべるんじゃない! 早くするんだ、さもないと我々は、おしまいだぞ!」
私は持てるものは全部持って彼の跡を追い、森のなかの安全なところまでやってきました。
「何が起ったんです? 誰が追ってきているんですか?」 私は叫びました。

 「猿人だ。なんて凶暴なやつらなんだ! 君は今までどこにいたんだ?」 と、彼は言いました。
私は急いで話しました。彼は、私のいなかったときのことを話してくれました。猿人が朝早くおそってきたのでした。
「やつらは木のなかから、りんごが落ちてくるみたいに後から後からおりてきたんだ。そして我々をつるで縛りあげると、残忍な顔をして輪になってまわりにすわったのさ──あの巨大な乱暴者め。チャレンジャーは興奮して、気違いみたいにやつらに怒り狂ったんだ」

 「彼らはどうしたんです?」 と、私はききました。
「それが実に面白いんだ! 猿人のボスがチャレンジャーに生き写しなのさ!
そいつは同じように短い体に大きな肩、首がなくて、ふさふさのひげにふさふさの眉毛をしているんだ。やつはチャレンジャーを兄弟だとおもっているようなんだ! みんなげらげら笑いだし、そして森のなかを通って私たちをひきずっていった。やつらはチャレンジャーをまるでローマ皇帝のように、高くさし上げて運んでいった。そして崖のふちのやつらの根城に連れていったんだ」
「きみは、人間のいる形跡があったと言ったね。実は我々は、人間そのものを見たんだ。原住民たちが台地の一方──崖とほら穴を占めているんだ。
猿人がもう一方を占め、両者の間には争いが起っているのさ。猿人たちは十何人かの原住民をつかまえて、そのうちの2人をすぐに殺してしまった」
「きみは、骸骨のあった竹やぶを覚えているかい? あれは、やつらの崖のすぐ下にあるんだ、やつらは捕えた者を、竹のくぎの上にとびおりさせているんだ。私たちが次の犠牲者になるはずだったのさ。幸い、私は見張りをなぐり倒し、銃を取りにもどったんだ。猿人はあまり速く走れないし、銃について知っているとは思われないので、私たちにもチャンスはあると思うよ」

 ジョン卿は、急いで歩きながら話し、私たちは半円形に木が生えている崖のふちにやってきました。その木々の枝のなかにはそまつな小屋があり、猿人の女こどもがむらがっていました。何百もの赤毛の毛むくじゃらな男たちは、崖のところに集まっていました。その前には少数のインディアンが立っていました──彼らは、みがかれた青銅のように光る赤い膚をした小さな人間でした。チャレンジャーと猿人の王は、他の者たちから離れて立っていました、2人はまったくそっくりで、ただ、一方は黒い髪をして、もう一方は赤毛でした。
猿人の2人がインディアンの手足を持つと、壁のふちから投げ落しました。他の猿人たちはふちに走りよって、インディアンが竹のくぎにくし刺しになるのを見て喜びの叫び声をあげました。次はサマリー教授の番でした。彼の細い体と長い手足が、にわとりが小屋から引っぱりだされるようにもがいて、ばたばたしていました。
私たちの銃が爆音をたてました。猿人の王が地面に倒れました。サマリーの見張りが彼を放し、私たちが人ごみのなかに銃を撃ちこむと、猿人たちは、ほえ声をあげながら木の隠れ家に走っていきました。チャレンジャーとサマリーは急いで私たちの側へやってきて、私たちは追手に銃を放ちながら全速力で本拠地にもどっていきました。

 私たちがそこにもどると、うしろでぱたぱたいう足音と悲しげな声がしました。それは保護を頼みにきたインディアンたちでした。1人がジョン卿の足もとに嘆願するようにすがりつきました。
「立ち上がりなさい、若いの、そして私のブーツから顔をあげるんだ!」
と、ジョン卿は言いました。
「この人たちは湖の向う側のほら穴に住んでいるんです。そこへ連れもどしてやりましょうよ」 私は提案しました。
彼らのうちの1人の若者は首長のようでしたが、彼が案内人として堂々と先頭を歩いていきました。私たちはみんなで湖に向い、午後遅くなってからそこに着きました。

 そこで私たちは、カヌーの大船隊が岸に向かっているのを見ました。インディアンたちは私たちの姿を見ると喜びの声をあげました。彼らはかいや槍を振りまわして若い首長を迎え、それからカヌーを浜に引き上げると、感謝の気持から私たちの前にひざまずきました。彼らは、猿人から仲間を救おうとしてやってきた戦士たちでした。
私たちは原始時代のすばらしい湖のそばで、1日じゅう過ごしました。
木々は香りのよい果物をたくさんつけ、風変りな花が草のなかで咲いていました。2人の教授は、きらめく湖に群がるいろいろな不思議な魚や鳥やは虫類を見て大喜びでした。遠くの砂浜には、不格好なカメがはいまわっていました。あちこちに、長いへびの首が水面から出ていました。そのうちの1頭が体をくねらせて近くの砂浜に上がり、樽のような体と大きなひれ状の足を現しました。
「プレシオサウルス(蛇頚竜) だ!」 サマリーは息をのみました。「あなたと私は、開びゃく以来、最も幸運な動物学者ですぞ、チャレンジャー!」
その晩、私たちのキャンプの火が木々の影に赤く輝き、大きな水生動物たちの荒い鼻息や飛びこむ音が、遠く湖から聞こえていました。
次の日、私たちは猿人のすみかをおそいに出発しました。インディアンは槍や弓、毒矢を持っていきました、私たちの近代的な武器とはずいぶん違うものです。偵察兵が先に茂みのなかをはって、森のはずれまで行きました。ここで私たちは横に1列に広がりました。ロクストンとサマリーが右側で、チャレンジャーと私は左側でした。不器用な猿人たちが木のなかから石や棒を持ってほえながら出てきました。私たちは、銃を使う必要がほとんどありませんでした、インディアンたちがすぐに優勢となったからです。彼らは猿人を崖っぷちまで追いつめ、そこで猿人は、自分たちのやり方で罰を受け、竹のくぎの上に落ちていきました。チャレンジャーはこう言いました。「これが歴史的瞬間だ! 人間が猿人に打ち勝ったのだ!」

 「我々はもう十分に冒険をしたぞ」 サマリーが言いました。「この恐ろしい国から出て、文明にもどろう」
でも、台地から出られるまでには長いことかかりました。インディアンたちが私たちを行かせたがらなかったのです。私たちに、ほら穴と妻さえ与えようとしました! 彼らは、トンネルやほら穴の平らな壁に描かれたすばらしい動物の絵を見せてくれました。彼らは猿人たちよりはるかに進歩しており、私たちが牛をそうするように、食料のためにイグアノドンの群の番をしていました。
私たちは探検をしたり標本を集めたりして毎日を過ごしました。ある日私は、ジョン・ロクストン卿が、茎を織って作った枝編み細工のつり鐘型のかごのなかに入って歩きまわっているのを見て、おもしろいと思いました。
「いったい全体、何をやらかそうというんです?」 私はききました。
「友人のプテロダクティル君を訪ねていくのさ。愉快なやつだが、見知らぬ人間には失礼なやつらだからな。やつらの注意をそらすために、この珍妙な仕かけを急いで作ったのさ」
「でも、沼のなかの何が必要なんですか?」
「チャレンジャーのために、あの悪魔の子どもを取ってくるんだ。それに、もう1つ探すものがあるのさ。心配するな! すぐもどるよ!」

 やっと何週間もたってから、若いインディアンの首長が手をかしてくれて、どのほら穴が下の平野に続いているのか教えてくれました。
そのほら穴にはコウモリがたくさんいて、頭の上でばたばたと飛びまわっていました。私たちは白く光る砂の上を急いでいきましたが、どこへ行ってもがっしりした岩にぶつかるのでした。通り抜ける道はないかのように見えましたが、とうとうもっと大きな道をみつけました。そして最後には、炎のカーテンのような明るい光が道をふさいでいるのをみつけたのです。突然、ジョン卿が叫びました。「あれは月だ! みんな、通り抜けられたんだぞ」私たちは下に平野を見おろしていました。

 私たちがザンバに会いに、平野へ出る斜面を走りおりていくとき、何か不思議な動物のかん高い叫び声が暗闇のなかからはっきりと響きました。それは、失われた世界の声が、私たちに別れを告げているのでした。
ロンドンにもどると、私たちの冒険のニュースはもう広がっていました。
有名な科学者たちとの会見が、リージェント通りのクイーンズホールで行われることになり、人びとがはみだすほど押しよせました。
私たち4人は演壇の上に立ちました。サマリー教授が旅行と私たちの体験について説明しました。彼が台地でみつけた動物の話をしはじめると、誰かが中断しました。エジンバラから来た科学者、ジエイムズ・イリングワース博士が、見た物の実際の証拠を要求したのです。観衆は大騒ぎを始め、ある者はなぐりあいをしそうになったので、チャレンジャー教授が救いの手を差し伸べました。彼は、私たちの撮った写真を見せると言ったのですが、イリングワースは、写真なんて何の説明にもならないと言いました。
「それでは、実物が見たいとおっしゃるんですな?」 チャレンジャーはそう言うと、ジョン卿と私に合図しました。

 私たちは演壇のうしろから大きな包装箱を持ってきて、教授がふたを開けました。ひっかくようながたがたいう音がしました。それからもっとも恐ろしい生き物が現れ、箱のふちに止まりました。それは赤い2つの目を持ち、サメのような歯が2列に並んだ、長くてどう猛な口をしていました。
その肩は丸く盛り上がり、まわりは古びた灰色のショールのようなものでおおわれていました。それは子どものころ見た悪魔そのものでした。

  人びとは悲鳴を上げ、気絶する者や、出口へ殺到する者がいました。生き物はぎょっとして、突然草の翼を拡げると、腐った魚のにおいを振りまきながら天井をばたばたと飛びまわりました。そして激しく興奮して壁にぶつかり、くちばしを突きだして観客の人びとに突進してきました。
「窓を閉めろ!」 教授が叫びましたが遅かったのです。その生き物は大きな蛾のように壁にぶつかりながらも、開いているところをみつけて通り抜けていってしまったのです!
とうとう教授は信じてもらえたのでした。私たちは肩にかつぎ上げられて、ピカデリーまで行進して運ばれ、人びとは歓声をあげて 「愉快な仲間」 を歌いました。
プロダクティルにいたっては、あわてふためいて、マールポローハウスの外にいる張り番の正気をほとんど失わせた後は、デボンの海岸で、大西洋に向かっている姿が見られました。たぶんその帰巣本能がメープル・ホワイトランドに連れて帰ったのでしょう。

 私たち4人は、無事、オルバニーにあるジョン・ロクストン卿の家に着き、お祝いをしました。ジョン卿は、何か知らせることがあるらしいのです。
「私が沼から持ってきたのは、プロダクティルだけではなかったのだ。これを見てくれ!」 そして彼は、ひとつかみのさえない石ころを取りだしました。
次にポケットから、大きなきらめくダイヤモンドを出したのです。
「私はこれを宝石商のところへ持っていって、カットしてみがいてもらったんだ。全部で20万ポンド以上はするだろう。1人5万ポンドだ。チャレンジャー、きみはそれでどうする?」
「私設の博物館を作るさ! 私の夢だったからな」
「きみは、サマリー?」
「引退して、白亜層の化石を分類しているよ」
「私はあの懐かしい台地へまた探検に行く準備にあてるよ。そしてきみは、若いの? たぶん結婚するんだろうな!」
「もう少し後です」 私は言いました。「もしあなたが連れていってくださるなら、私もいっしょに行きたいと思っています」
「よおし、いい子だ!」 ジョン卿は私とかたく握手をしながらそう言いました。


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