レディバードブックス100点セット
 

 

80日間世界一周

 フィリアス・フォッグは、なぞの多い人物です。2、3の簡単な事実以外、だれも彼について何も知りません。フォッグは家族もなく、ロンドンにある大きな家に住んでいました。フォッグは金持でしたが、家には身のまわりの世話をするひとりの召使だけしかいませんでした。
フォッグは、とても正確な習慣の持主でした。家の中に1枚の時間表がつるしてありました。それには、フォッグが毎朝かっきり8時23分にお茶とトーストの食事をとることを示していました。

 9時37分には、召使に華氏86度ちょうどに温められたひげそりの湯を持ってこさせました。毎日、11時30分かっきりにフォッグは家を出て、リフォーム(革新)クラブに行きます。
フォッグは、クラブで読書をしながら1日をすごしました。それから、 6時10分ちょうどにトランプ遊びを楽しみ、その後、毎晩きまった時刻に家にもどりました。トランプ仲間たちは、顔立ちの整ったフィリアス・フォッグが、もの静かな魅力ある人物であることを認めていました。仲間たちは、フォッグがお金に決して興味を示さないことにも気がついていました。
トランプで勝ったお金も、フォッグは慈善団体に寄付したのです。これらわずかの簡単な事実は、すべてだれでも知っていることでもありましたが、フィリアス・フォッグにとってほとんど悲劇的に終るにちがいない賭けは、どのようにして始まったのでしょうか。それは、このようなことが起ったからなのです……。

 1872年の10月2日、新しい召使がフィリアス・フォッグのもとで働くためにやってきました。彼はジーン・パスパルトゥーという名のフランス人でした。パスパルトゥーは、これまでたくさんの仕事を体験してきました。パリでは消防夫、歌手、サーカスのアクロバットまでやりました。彼は強く、しかもやさしく、おまけにしあわせそうな微笑みのある顔のために、彼の行くところどこでも人気者になりました。仕事から仕事を転々としてきた後、パスパルトゥーの望みは、今や身を落ち着け、静かな生活をすることでした。パスパルトゥーにとって、フィリアス・フォッグは求めてきた、またとない主人そのもののようでした。
その日の11時30分、ジーン・パスパルトゥーは仕事を始めました、いつものように、フィリアス・フォッグはリフォームクラブへ出かけました。フォッグはその日も読書ですごし、それから6時10分に、いつものようにトランプ遊びの仲間に会いました。みんなは、興奮しながら銀行泥棒について話をしていました−イングランド銀行から5万5千ポンドが盗まれたばかりだったのです。泥棒は札束をとりあげると、何げないようすでそれを持って出ていきました。5、6人が泥棒を見ていて、人相がきが手配されました。懸賞金が捕えたものに支払われる旨の表示があり、刑事は、国外への泥棒の逃亡をとどめるために、鉄道の駅や港を監視していました。
クラブの仲間はトランプ遊びに興じながら、銀行泥棒がうまく隠れる場所があるかを話しました。みんなは、泥棒が追跡を逃れてすみやかに国外へ逃れるかどうかいぶかりました。
「世界は、かくれるにはじつに広いですぞ」 1人が言いました。
「そうですな」フィリアス・フォッグは同意しました 「しかし、今や我々には電報も、鉄道も、汽船もあります、世界はどんどん狭くなってきましたぞ」
「世界が縮んでいるわけではないでしょう」 仲間の1人が言いました 「なぜなら、我々が世界をひと周りするには、ゆうに3か月はかかりますからね」

 「3か月なんてかかりませんよ」フォッグは言いました。 「80日間で世界一周できます」
「80日間だって? そりや、不可能だ」 もう1人が笑いました。
「考えてもみたまえ、そりゃ、だめだね」 3人目の男が言いました。
「いいえ」 フィリアス・フォッグは叫びました。「私は、それができることがわかってます。私はそれに2万ポンドを賭けてもいいですよ。それを証明するために今夜出かけましょう。私は80日間で世界をひと周りしてみせます」
「きみ、冗談だろ」 「今夜出かけるなんて、できやしないよ」 「そんなこと、絶対だめだ」 仲間たちは、口ぐちに叫びました。
「私はやります」 フォッグはもの静かに言いました。「英国人というのは、こういう賭けをするときには冗談を言わないものです。あなたがたは、この賭けに応じますかな」
「もちろんだとも」 仲間たちは 「やりましょう」 と、同意しました。
「よろしい」 フォッグは続けました。「今日は、10月2日水曜日です。私はここリフォームクラブへ、12月21日土曜日の8時45分にもどってきましょう。さて、諸君、それでは、トランプゲームをこれでおわりにしましょう」
家にもどると、フィリアス・フォッグは、彼の召使を呼びました 「パスパルトゥー! 小さなバッグに旅行に必要なものをつみこみなさい。我々は、10分以内にドーバーへ向けて出発する。世界一周に出かけるのだ」

 「世界一周ですって?」 パスパルトゥーはあえぎながら言いました。
「そう、世界一周だ」 フォッグは答えました。「我々は、ただちに出発する!」
「そんりゃ、すんばらしいことで……」 みじめなパスパルトゥーは、バッグに荷物をつめこみながらぶつくさ言いました。「わしの求めていたのは、静かな生活だったのになあ。わしは、気違いじみた冒険にでかけようとするご主人様を持っちまった!」

 8時に、2人は出かける用意ができました。フォッグは、世界の船と鉄道の時刻表を持ってきました。バッグの中に、フォッグは銀行紙幣の厚い束をすべりこませました。
「このバッグには、よく気をつけるのだよ」 フォッグはパスパルトゥーに話しました。「その中には、2万ポンド入っているのだからね」
駅で、フォッグはパリ行きの2枚の切符を買いました。リフォームクラブの仲間たちが、フォッグを見送るために待っていました。
「みなさん」 フォッグは言いました 「私がもどってきたとき、パスポートを調べていただいて結構です。私が通ってきた国々のスタンプをお見せすることができるはずです。スタンプは、私が世界をひと周りしてきたことを証明してくれるでしょう。私たちは、12月21日土曜日の夕方8時45分にふたたびお目にかかりましょう」
汽車は煙をぽっとはいて、駅を出発しました。だまってすみの席にすわったフィリアス・フォッグと、バッグをかかえたパスパルトゥーは、陰うつな暗い夜の闇のなかを出発しました。
フィリアス・フォッグの賭けのニュースは、野火のように広がりました。
フォッグの写真はあらゆる新聞に載り、人びとは少しばかり余計なことも話しました。ある人は、フォッグが刺激的な冒険にがんじがらめになるだろうと思い、ある人は頭をふりながら、フォッグは気違いにちがいないと言いました。
フォッグとパスパルトゥーは、パリからイタリアまで旅行しました。そこで2人は、インドの西海岸にあるボンベイまで行くことになっている、モンゴリア号という汽船に乗りました。
スエズで、パスパルトゥーは、パスポートを持って上陸しました。船の近くに立っていた見知らぬ男が、パスパルトゥーをじっと見ていました。
「どうかしましたか」 見知らぬ男がパスパルトゥーにたずねました。
「私はこのパスポートに、スタンプをおしてもらいたいんです」 パスパルトゥーは男に話しました。「領事館の事務所までの道を教えてくれませんでしょうか」

 見知らぬ男の鋭い目が、しっかりパスポートを調べました。男は、そこにあるフィリアス・フォッグの写真をみつめました。
「これは、あなたのパスポートではありませんな」 男はいいました。「パスポートの持主が、陸にあがって自分で事務所まで行かなくてはなりませんよ」
「そいつは、主人には面白くないことですね」 と、パスパルトゥーは言いました。彼は、フィリアス・フォッグをみつけるために甲板へいそいでもどりました。
見知らぬ男は、領事館の事務室にいそぎました。
「閣下!」 男は、領事に話しました 「私の名前はフィックスといいます。
ロンドン警視庁に所属していて、ここに送られてきた刑事です。我々は例の銀行泥棒を探しています。私は泥棒が、スエズにたった今着いたと確信しております。私が男の逮捕状をもらうまで、彼をここにとどめてもらうわけにはいきませんでしょうか」
「そんなことはできません」 領事は言いました。「もし、その男のパスポートが適正であれば、ここにとどめておくことなんてできませんからな」
フィリアス・フォッグが、事務所の中に入ってきました。領事がパスポートにスタンプを押す間、フィックス刑事はフォッグをじっと観察しました。この男に間違いない、フィックス刑事は確信しました。フォッグを見失ってはならない。船がボンベイにむけて出航する前に、ロンドンに電報を打たなくてはなるまい。
その日の夕方、1通の電報がロンドン警視庁につきました。
「スエズ発 ロンドンロンドン警視庁へ
銀行泥棒 フィリアス・フォッグを発見
ボンベイまで逮捕状を送れ  フィックス刑事」
まもなく新聞は、不思議な男フィリアス・フォッグの話をたくさん載せました。リフォームクラブでも、他のメンバーは、注意深くフォッグの写真を調べました。それは確かに銀行泥棒の人相書きとよく似ていました。フォッグ氏の世界旅行は、警察からの追跡を逃れるために投じられたトリックそのものでした。英雄であるかわりにフォッグは今や、おたずねものの銀行泥棒でした!

 モンゴリア号の航海中、フィリアス・フォッグは、トランプ遊びをしていました。フィックス刑事もまた乗船しました、そしてパスパルトゥーは、ふたたびフィックスに会えて喜びました。パスパルトゥーは、フィックスに彼の金持の主人と世界一周旅行について、すべて話しました。召使がフィックスに話したあらゆることで、フィックスは、フォッグが銀行泥棒であるという確信をいっそう深めました。もちろん、フィックスが彼の主人を捕えようとしている刑事であるということは、パスパルトゥーの貧しい頭には捉えきれませんでした。
一行がボンベイに着いたとき、ボンベイからカルカッタまでインドを横断する長い旅の列車が出発するまでに、3時間の余裕がありました。パスパルトゥーは、ボンベイの町の探索に出かけました。パスパルトゥーは、ある寺院の中に入りました。3人の怒った坊さんがパスパルトゥーを投げとばしました、パスパルトゥーが、靴をぬがずに寺の中に入ったからでした。パスパルトゥーは、勇敢にも坊さんと戦い、逃げもどりました。鉄道の駅で、パスパルトゥーはフォッグにいさかいのことを話しました。
フォッグの逮捕状を待ちつづけているフィックス刑事は、2人を監視し、聞き耳をたてていました。
「もしわしが、寺院に入っていさかいをおこしたパスパルトゥーを監獄にぶちこむことができたなら」 フィックスは考えました 「フォッグは、パスパルトゥーが自由な身になるまで待たなくてはなるまい。そうすれば、逮捕状が届いてあの男を捕えられる」
列車は、フィックスを残したまま出発しました。フィックスには、パスパルトゥーを捕らえる仕事があったからです。
インドを横断する列車は、どんどん走りました。それから、突然警告もなく止まりました、そして、びっくりしている乗客たちは降りるように言われました。
「見てください、ご主人!」 パスパルトゥーが叫びました。「これ以上線路がありません!」

 鉄道は、次の駅の50マイル手前でとまっていたのです。乗客たちは、そこまで行く道を自分で工夫しなくてはなりません。パスパルトゥーはすばやく考えました、そして近くの村まで走りました。彼はまもなく、主人のためによいニュースを持ってもどってきました。
「ご主人!」 彼は興奮しながら叫びました 「象を持ってる男をみつけてきました。彼は、次の駅まで我々を連れていってくれますよ」
まもなく一行は、象の背中に乗ってカルカッタへいく道をガタゴトゆれながらいきました。しばらくいくと、前方に奇妙な音がきこえてきました。象使いは象を停止させ、きき耳をたてました。
「山賊かな!」 パスパルトゥーが言いました。
彼らはひそかに道から離れて動き、遠くからみるために木の間に隠れました。太鼓を打ち鳴らし、声をあげて泣き叫びながら、大きな葬式の行列が通りすぎました。ひとりの王様が死に、王は火葬されようとしていたのです。若くて美しい王妃アウダが、護衛に腕をとられ、連れていかれました。
「王妃に何が起きようとしているのですか」 フォッグがたずねました。
「王妃は死んだ夫のために、生きたまま火葬にされるのです」 と、象使いはささやきました。
「そいつはいけないな」 フォッグは言いました。「我々は王妃を助けださなくちゃいけない。行列についていこう」

 安全な距離を保ちながら、一行は行列についていきました。行列が、ある寺院の近くに止まったとき、フォッグたちは木々の間にもう一度待機しました。彼らが見たとき、火をつけるための大きな丸太の山が積み重ねられていました、そして王の死体は、その上に置かれてありました。それから夜がふけると、護衛が若い妻を寺院の中に連れていきました。護衛たちは壁のまわりに立ちました。

 暗くなってパスパルトゥーは、アウダを救うための計画を練りあげました。そして、夜明け前に彼は、音をたてずに火がつけられるところまではっていきました。そこからてっぺんまで登り、丸太のたばの中に隠れました。
朝の太陽の光が空に満ちたとき、怖れのために気が遠くなった愛らしいアウダは、護衛に葬式の火のところまで連れていかれました。護衛たちは、彼女をむりやり死んだ夫のそばに横たえさせました。騒々しい歌声が大群集のなかからわきあがり、もう一度太鼓が鳴りはじめました。それから火がつけられました。炎と煙が空にまきあがりました。フィリアス・フォッグが手にナイフを持ち、前方におどりでようとしたとき、突然、炎と煙のなかから、パスパルトゥーが火の真上に立ち上がりました。恐ろしさで、護衛と会葬者たちは、地面に平伏しました。「王様が生きている!」 と、誰かが叫びました。

 パスパルトゥーは、炎のなかでアウダの腕をとり、火をとびこえ、安全なところまで彼女を連れて走りました。フィリアス・フォッグは、彼女らが象に乗るのを助け、急いで出発しました。うしろで弾丸が飛び、叫び声がひびきわたりました。こうして、うまく切り抜けることができました。象がすばやく地面を走り、危険が遠のいたころ、アウダは命の恩人たちにお礼を言いました。その美しい目は、喜びの涙であふれていました。
3人はその夜、次の駅までたどり着き、カルカッタ行きの列車に乗りこみました。フォッグは真剣に考えていましたが、やはりアウダがインドにいるのは危険だと思いました。そして、アウダの世話をしてくれる従兄弟のいる香港へ連れていこうと決めました。ところが、カルカッタで列車から降りるとき、一行はひとりの警官に呼び止められたのです。

 「アウダを連れだしたことでとがめられたとしても」 フォッグは考えました 「アウダを死なせるようなところへ送り返すわけにはいかない」 と。ところがおどろいたことに、警官はパスパルトゥーを捕らえたのです、ボンベイのお寺でいさかいをおこした罪をとがめられたのでした。
法廷でフォッグは、召使の保釈金を支払うことにしました。法廷のうしろからそれを見ていた刑事のフィックスは、激怒しました。フォッグの逮捕状がまだ届いていないので、もはやフォッグをとどめておくことができなかったからです。
香港行きの汽船が出航しようとしていたちょうどそのとき、一行は大急ぎで乗船しました。航海の間、フィリアス・フォッグとアウダは、幸せな時間をすこしました。フォッグはアウダを優しく魅力的だと思い、アウダも、安全な場所へ連れてきてくれた、この気高く親切な紳士を愛するようになりました。

 パスパルトゥーは、船上でふたたびフィックス刑事に会ったのでびっくりしました。彼は、フィックスは、リフォームクラブから自分たちを見張るように派遣されたスパイではないかと疑いはじめました、でも、フィリアス・フォッグには何も言いませんでした。
激しい嵐にもかかわらず、一行は、次に乗るカーナティック号が日本の横浜へ向けて出航する16時間前に、香港の港に到着しました。フォッグは、アウダの従兄弟を探すために、アウダといっしょに急いで町へ出ていきました。ところが、アウダはとても落胆していました、親戚は香港を去って、今はオランダに移り住んでしまったということだったからです。
「私たちといっしょに、ヨーロッパへいらっしゃい」 フォッグは、そうアウダに勧めました。
その間、パスパルトゥーも香港の町なかをぶらぶら歩いていました。ひどくびっくりしたことに、彼はまたフィックスに会ったのです。

 「あなたも日本にお行きなさるんで」 と、パスパルトゥーはたずねました。
「そうなんです」 刑事は彼に言いました。そこで、2人はいっしょに、横浜行きの船の切符を買いに行きました。切符売り場で、2人は船が予定より早く出発することになったことを知りました。
「今夜出られるなんて、旦那様はさぞお喜びになることでしょう」 パスパルトゥーは言いました。「急いで知らせにいかなきゃ」
「時間はたっぷりありますよ」 ずるがしこい刑事はそれを止めました。
「いっしょにワインでも一杯飲みましょう」
ワインを飲みながら、フィックスはついに自分が刑事であることをパスパルトゥーに明かしました。「あなたのご主人はね」 彼は言いました 「逃亡中の銀行泥棒なんですよ。捕まえるのに協力してくださったら、賞金をお分けしますよ!」

 「ばかばかしい!」 パルパルトゥーは叫びました。「旦那様ほど正直な方はいません。あんなすばらしい人を裏切ったりできるものですか。絶対にないです」
「何もごぞんじないのですね」 忠実なパスパルトゥーにフィックスは言いました。「でも、仲よくしましょう」 フィックスは続けました。「さあどうです、もう1杯」
ふたたび2人はお酒を飲みました。 哀れなパスパルトゥーの頭がクラクラしはじめました。フィックスはこの召使の手にパイプを渡しました。パスパルトゥーはアヘンを吸っているとは気づかずに、何回かそれを吸いました。まもなく彼は麻酔にかかって眠ってしまいました。

 フィックスは静かにその場を立ち去りました。さあ、カーナティック号はフォッグと召使を乗せずに出航しようとしている! あと逮捕状さえ届いていれば! そうしたらフィリアス・フォッグを捕えて賞金はおれのものに!
フォッグとアウダは、パスパルトゥーがもどってくるのを待ちました。
彼が来なかったので、2人は船着き場まで急ぎました。パスパルトゥーは、そこにもいませんでした。そのかわりフィックスをみつけ、彼からカーナティック号がもう出港してしまったことをきかされました。
「それなら」 フォッグは言いました 「別の船を捜さなければなりませんな」

 刑事の心は沈んでしまいました。ついてないと思いました、まだ逮捕状が届いてなかったからです。
すぐにフォッグは小さな船の船長をみつけ、上海まで行くのを承諾してもらいました。上海で横浜行きの汽船に乗ることができるときいたのです。
「あなたもカーナティック号に乗りそこねたのですな」 フォッグはフィックスに言いました。「よろしかったら、いっしょに行きませんか」
フィックスは喜んで承知しました。銀行泥棒の親切心のおかげで、刑事はまだ彼を見張ることができるのです。
フォッグは町役場に行って、パスパルトゥーを捜してもらうように頼んでおきましたが、やはりだめでした。フィックスはずっとだまっていました。船がいよいよ出港するというのに、フォッグとアウダは、2人の忠実な召使を連れずに悲しく去らなければならないのでした。
香港を出港して2日目に悪い天候にみまわれ、台風が吹き荒れはじめました。大きな波が船にすさまじくぶつかってきます。台風に吹きつけられて、船はきしみ、揺れました。それから、中国領の海岸に近づくと風は止みました。貴重な時間が失われ、上海まで、まだ100マイルもありました。
船長は全速力で前進するように命じました。そして上海の海岸が見えてきたちょうどそのとき、大きな別の汽船が彼らの方へやってくるのが見えたのです。
「遅すぎた!」 船長は叫びました。「あれが横浜行きの船です」

 「信号を出してください」 フォッグは命令しました。
大きな汽船が速度をゆるめると、小さな船はそのそばに並びました。そして、アウダ、フィリアス・フォッグ、それにフィックスは汽船に引き上げられました。彼らが小さな船の船長に別れの手を振ると、大きな汽船は横浜への航海に向かって動きだしました。
「パスパルトゥーが私たちといっしょでいてくれたならば!」 と、アウダは言いました。
誰も知らないことでしたが、パスパルトゥーも、もうすでに日本に向かっていたのです。フィックスから渡されたアヘンのおかげでまだ眠かったのですが、彼はやっとのことで波止場までたどり着きました。そして、船乗りにちょうど出港するところだったカーナティック号へと引き上げてもらったのでした。

 パスパルトゥーは自分の船室に連れてこられ、そこですぐまた寝こんでしまいました。目が覚めたとき、彼は主人を探していました。しかし、フォッグとアウダは乗船していませんでした。やっとフィックスにだまされたことに気づいたパスパルトゥーは、ひどくみじめな気持になりました。
主人が乗船しなかったのは自分の過失なのです。もし、フィリアス・フォッグが時間どおりにロンドンにもどるのに失敗し、賭けに負けたら、責めを負うのは彼、パスパルトゥーなのです。
一文なしで1人さびしく、パスパルトゥーは横浜に上陸しました。通りを歩きながら、彼はロンドンまで帰るのにどうやってお金をもうけようかと考えていました。そのとき、英語で書かれたポスターが彼の目をとらえました。それには、こう書かれていたのです。
[世紀のショー ピエロにアクロバット 手品師 今夜!]
「これだ!」 彼は思いました。「アクロバットの仕事をやってみよう」 パスパルトゥーはまっすぐ劇場へ入っていきました。
「ああ、がんじょうな男なら、使ってもいい」 アクロバットのリーダーの男が言いました。「人間ピラミッドを支える男がほしかったのだ。あおむけに寝てもらって、他の男があんたの上でバランスをとる」
3時にそのショーは始まりました。太鼓の音とともに50人のアクロバットたちが舞台におどり出ました。パスパルトゥーは横になり、その上で他の男がお互いに組合わさってバランスをとりました。人間ピラミッドがどんどん高くなるにつれて、観客はかっさいし、楽団は演奏しました。あおむけになったとき、パスパルトゥーは劇場の中を見ることができました。そして彼は、上の桟敷席でフォッグとアウダの姿をみつけたのです!

 「旦那様!」 パスバルトゥーは喜んで叫びました。自分の上の男たちを押しのけたので人間ピラミッドは総くずれになりました。彼は一目散にステージを降りて、離ればなれになっていた主人とアウダのところへかけよりました。劇場は騒然となりました。アクロバットたちは怒り狂いました、しかし、フォッグは召使がみつかったので喜び、彼らをしずめ、手いっぱいの札束を与えてその場をおさめました。
3人はそろって、太平洋を渡ってアメリカに行く汽船に乗りこむために波止場へと向かいました。フォッグは召使に、彼とアウダ、そしてフィックスがどのように日本にたどり着いたか話しました。パスパルトゥーも、アヘンを吸っていたために彼らを見失ってしまったことを話しました。が、彼は刑事に会ったことは話しませんでした。
汽船は時間どおり、サンフランシスコに向けて出航しました。「これまでまったく順調だ」フィリアス・フォッグは言いました。「この分だと時間どおり、リフォームクラブにもどれるだろう」
パスパルトゥーは喜びました。彼は主人とアウダのうしろについていました。フォッグ氏がまだ賭けに勝っていて、ついにフィックスから解放されたように思われました。彼はまた刑事のことを主人に話さなくてよかったと思いました。明らかに何かのまちがいだったのだ、でも、もうあいつのことは心配する必要はあるまい、と彼は思いました。

 パスパルトゥーは甲板の上を散歩しながら、もとの陽気な自分にかえっていました、それが、角を曲がったところでフィックスとはち合わせになるとは! 何も言わずにフィックスに向かっていくと、彼は何発もパンチをおみまいし、フィックスをなぐり倒してしまいました。
「だまされたお返しだ」 彼は大声をあげました。「今度だましてみろ、首をへしおってやる」
賢明にもフィックスは、残りの航海の間パスパルトゥーたちの目につかないところにいました、そして11日後船はサンフランシスコに入港しました。
その夜、彼らは3786マイル先のニューヨークに向かう列車の中にいました。7日間で、列車は太平洋岸から大西洋岸へと向かうことになっていました。彼らにはあと18日間が残されていました。
すべてがうまくいっている、とフォッグは思いました。おどろき、そしてうれしいことに、フィックスがまた列車に同乗していたのです。パスパルトゥーは、おどろきもうれしがりもしませんでした。
夜どおし列車はロッキー山脈を、濁流の川の上を汽笛をあげながら走り続けました。そして平原を横切っていたところでした。何千頭もの大きな野牛が線路をぎっしり走りぬけるところにぶつかり、突然列車は止まってしまいました。野牛の群は、何時間もまるで目の届くかぎりのびていく茶色の川のように、列車の前を通りすぎていきました。

 パスパルトゥーはこの遅れにいら立ちました、しかし、フィリアス・フォッグの気分を妨げるものは何もありませんでした。彼は長い間トランプをしてすごしました、まるで時間など気にならないかのように! やっと列車が動きだせるようになったとき、雪が降りはじめました。パスパルトゥーはふたたび心配になりました、まもなく平原が雪でおおわれることを知っていたからです。大雪は線路をこわし、この冒険を終らせてしまうことにもなりかねません。
3日目の朝、列車は突然また止まりました、パスパルトゥーは、何が起きたのか見にいきました。
「いや、川は渡れないよ」 彼は信号係がそう言うのをききました。「列車が通れるほどあの橋はがんじょうじゃない」
機関士は止まっていたくありませんでした。「通らせてくださいよ」 彼は頼みました。「全速力で走れば、飛ぶように渡れれまさぁ!」
彼は列車を少しうしろにもどすと、すぐにスピードをあげて前進しました。エンジンは、悲鳴のような音をあげました。列車もガタガタ揺れました。スピードはどんどんあがりました、時速60マイル、80マイル−100マイルまでも! 車輪は線路に触れていないように見えました。そして電光のように川の上を通りすぎたのです。最後の車両が反対側の岸に着くやいなや、橋は濁流の川へくずれ落ちてしまいました。

 次の日、またもや危険がおそってきました。スー族のインディアンの一群が列車をおそい、あたりは野蛮な叫び声とライフルの火花でいっぱいになりました。
100人ものインディアンが列車のそばを疾走し、何人かは列車に飛び乗ってきました。乗客もピストルで応戦しました。
スー族の酋長は馬から機関車に飛び乗りました。彼は機関士と助手をなぐり倒して、そしてハンドルを回して列車を止めようとしたのです。
しかし、機関車はさらに早く音をたてて走っていきました。ハンドルを逆の方向に回してしまったのです。

 「列車を止めなければ」 フォッグはドアの方にむかいながら叫びました。「いけません、旦那様」 パスパルトゥーは叫びました。「私が行きます」
インディアンにみつからないように、彼は客車からぬけだし、走っている列車の下へもぐりこみました。ゆれる鎖にしがみつき、機関車に着くまで前に進みました。彼がすぐに機関車を客車から切り離したところ、列車はゆっくりスピートを落しはじめました。
客車が駅に近づいたとき、乗っていたインディアンたちは、プラットホームに兵隊がいるのに気づきました。そして、列車からとびおりて逃げていきました。

 駅に着いて、機関車が運転手と助手を乗せたまま、遠くへ消え去ってしまったことがわかりました。パスパルトゥーと2人の乗客もまた、いないことがわかりました。
「インディアンが彼らを連れていってしまったのです」 アウダがため息をついて言いました。
「私が勇敢なパスパルトゥーと乗客たちをみつけてきますよ」 フィリアス・フォッグは彼女に言いました。何人かの兵隊といっしょに、彼はインディアンを追って出発しました。
アウダとフィックスは他の乗客たちといっしょに駅で持っていました、すると突然警笛がきこえました。そしてうれしいことに、機関車が線路の上をもどってくるのが見えたのです。機関士は彼と助手が意識をとりもどしたとき、スー族の酋長は逃げていて、機関車も止まっていたと話しました。また、機関車の中の火も燃え尽きていたことがわかりました。2人はもう一度火をたき、客車を求めてもどってきたのです。乗客はみんな、もう一度列車にもどって乗車し、ニューヨークへの旅が再開することになりました。
「でも、フォッグ氏といなくなった乗客はどうするのです」 アウダがたずねました。「どうか彼らをおいて出発なさらないで」 彼女は懇願しました。
「みんな明日の列車に間に合わなければならないのですよ」 機関士がそう答えました。アウダはいっしょに行かないことにし、列車が出ていくのを見送りながら駅で待つことにしました。フィックスも彼女といっしょにとどまることにしました、まだ銀行泥棒を捕えられない、と心配しながら。

 長くて寒い夜でした。雪でおおわれ、凍りついたこの地に太陽がのぼるころ、銃声がきこえました。そして、ついに行進する男たちの一群があらわれたのです。フィリアス・フォッグが、いなくなった乗客と兵隊たちの先頭に立っていました。まもなくアウダは、フォッグとパスパルトゥーに再会できたのです。彼女はフォッグがスー族と戦いぬいて、どのようにパスパルトゥーと乗客を捜し出したか聞きました。勇敢なパスパルトゥーは素手で3人のインディアンをなぐり倒したのでした。
フォッグは列車が彼らをおいて出発してしまったことに怒りました。
「24時間の遅れだ」 と、彼は言いました。「私は12月11日にニューヨークにいなければならない。汽船がそこから、その夜の9時にリバプールに向けて出航することになっているのだ」
そばに立っていた1人の男がこの話をききました。彼は、大きな帆とハガネのすべりで走る帆走そりで目的地まで連れていってあげよう、と申し出ました。フォッグは喜んで頼むことにしました、そしてすぐに氷まじりの風がフィックスを含む一行を、飛ぶように凍てつく雪の上を通って運んでいきました。
一行は、ニューヨーク行きの列車が駅で待っている町へとやってきました。彼らは乗りこみ、フォッグは運転手に話しかけ、「全速力で前進」 と命令させました。平原と町々がみるみるすぎていきました。12月11日の夜11時すぎに、列車はニューヨークに到着しました。しかしおそすぎました。リバプール行きの汽船はもう出てしまったあとだったのです。
負けてたまるかと決意して、フォッグは波止場へ急ぎました。そこで、彼はちょうど出航しようとしている小さな貨物船をみつけました。
「どこまで行くのです?」 彼は船長にたずねました。

 「フランスのボルドーさ」 というのが答でした。
「私と3人の友人をリバプールへ連れていってくれたら、たんとはずむがね」 フォッグは言いました。
「わしはボルドーに行くのだ」 船長は言いはりました。「そこへなら連れていくさ」
「わかった」 フォッグは承知しました。
1時間後、フォッグと彼の友人は、フィックスも加えてニューヨークから出港したのです。しかし、フォッグはフランスへ行くつもりはありませんでした。 彼には計画がありました。密かに彼は船乗りたちにその計画を話し、お金をはずんでおきました。まず彼は船長を船室に閉じこめました。そうして自分が船の指揮をとるようにしたのです。
すべてがうまく運んだように思われたとき、強風が吹きはじめました。フォッグは帆をおろすようにと命じました。スピードを保つために、かまどにどんどん石炭がくべられました。どす黒い空の下で、巨大な波がこの小さな船をおそってきました。ロンドンに到着せねばならない5日前、フィリアス・フォッグは、いまだ大西洋のまん中にいたのでした。そこへ船の機関士が悪い知らせを持ってきました。
「石炭がもうほとんどありません」 あえぎながら彼は言いました。「減速しなくてはいけません」
「今はだめだ」 フォッグは答えました。「全速力で進むのだ」 それから彼は、船長をブリッジ (船長の指揮する場所) まで連れてくるように命令しました。船長は鎖をはずされたトラのようにかんかんに怒っていました。

 「海賊め!」 彼はどなりました。「わしの船をぶんどったな!」
「ぶんどった?」 フォッグは言いました。「私はこの船を買いたいのですよ」
「売るものか!」 船長は声をとどろかせて言いました。

 「だが燃やさなくてはならないのだ!」 フォッグは続けました。
「燃やすだと!」 船長はあえいで言いました。「この船は5万ドルの値うちがあるのだぞ!」
「では6万ドルだしましょう」 フォッグは落ち着いて言いました。それは船長には断れない取引でした。彼は承諾し、この小さな船が全速力で進むように仲間に加わりました。石炭がなくなったとき、彼らは甲板をはぎとり、その木を燃やしました。燃えるものは、すべてかまどの燃料にされました。
12月20日の夕方、彼らはアイルランドの南に来ていました。
今や、フィリアス・フォッグがロンドンに着いて賭けに勝つのに24時間しか残されていません。彼らがコーク港に上陸すると、急行列車がリバプール行きの船の出るダブリンへと彼らを乗せていきました。

 フォッグはリバプールに上陸したとき、安心だと思いました。ロンドンには6時間で着くし、まだ9時間残っていたからです。
そのとき、彼は肩に誰かの重たい手がおかれるのを感じました。
「女王陛下の名においてあなたを逮捕します」 フィックス刑事が言いました。
パスパルトゥーはこぶしをあげましたが、警官にその腕を押さえられ、フォッグは税関の独房に押しこめられてしまいました。
哀れなパスパルトゥーはアウダにことのすべてを話しました。彼はすべての責任は自分にあると思いました。フィックスのことを主人に言いさえしていたら!
フィリアス・フォッグは独房にすわり、秒針が時を刻むのを見ていました。まさに最後の日というときに負けるなんて、とても信じがたいことでした。2時33分、独房のドアが勢いよく開き、パスパルトゥー、アウダそしてフィックスがかけこんできました。
「閣下」 フィックスは口ごもって言いました 「まちがえておりました。本当の泥棒は3日前に捕えられていました。あなたは無罪です!」
フィリアス・フォッグはゆっくり立ちあがりました。静かにフィックスの方へ歩いていき、刑事の目をじっとのぞきみました。それから、すばやいパンチでフィックスをなぐり倒しました。
「いい当りです、旦那様!」 パスパルトゥーは笑いました。

 フォッグは、最高速度でロンドンへ向けて出発する特別列車をあつらえました。しかし列車が煙をあげて駅に入ったとき、ロンドンの時計は9時10分前を示していました。世界をひと周りしてきて、フィリアス・フォッグは5分間だけ約束の時間に遅れてしまいました。彼は賭けに負けたのです。
3人の旅行者は、うなだれてフォッグの家にもどってきました。ほとんど話をかわしませんでした。みんなフィリアス・フォッグが賭けに負けたことをわかっていたからです。

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自分を責めていたパスパルトゥーは、アウダの部屋に行きました。「奥様」 彼は懇願しました 「どうかフォッグ氏をなぐさめてあげてください。彼は私をどこかへやってしまいます」
フィリアス・フォッグがアウダのために考えた計画を話しにきたとき、彼女は彼に言いました 「もし私をお助けにならなければ、もっと時間がおありだったのに」
「ご安心ください」 フォッグは言いました。「私に何が起ころうとたいしたことはありません。心配してくれるような家族はいませんから」
「かわいそうに」 アウダはため息をつきました。「つらいことは、わかちあえばもっと楽に耐えられますわ」
「そう言いますね」 とフォッグが答えました。
「それならどうか、私とあなたの悩みを分ちあってください」 アウダは言いました。「私をあなたの妻にしていただけませんか」
「願ってもないことです」 フォッグは答えました。すぐに彼はパスパルトゥーを呼び、彼に結婚式の準備をするように言いました。
「いつ式をあげるのですか。旦那様」 と、彼はたずねました。彼はその知らせを喜びました。「明日、月曜日だ」 幸せいっぱいのフィリアス・フォッグが答えました。
これ以上速くは走れないという速さで、パスパルトゥーは牧師の家へ走っていきました。「お願いします、牧師様」 彼は息を切らして言いました
「私の主人、フィリアス・フォッグ氏の結婚の手はずを、明日の月曜日に整えていただけますか」
「いえ、いえ、あなた」 牧師は言いました。「明日は日曜で、月曜ではありませんよ。今日は土曜日ですから」
「今日が土曜日ですって」 パスパルトゥーはあえいで言いました。牧師がびっくりしているのをよそに、パスパルトゥーは大急ぎで部屋をとびだし、通りへ出ていきました。フォッグ氏の部屋へかけこむと、パスパルトゥーは叫びました 「急いでください、旦那様。私たちは勘ちがいしていました。
今日は土曜日です。賭けに勝つのにまだ10分間残っています」
フォッグはぼう然としました。自分がまちがえるはずはない、と。彼は毎日きちんと数えていました。はっとそのとき気づきました。彼は東へ旅行したので、時計を直すべきだったのです。経度15度旅行するごとに、彼は1時間時計をもどさなければなりませんでした。世界を一周すると、つまり彼は24時間得したことになります。まる1日です。彼はとびはねていきました。
12月21日の土曜日の夕方、友人のグループはリフォームクラブにおちあっていました。フォッグの80日目の日でした。彼らは、彼の旅行に関する最近のニュースを知りませんでした、まだ生きているのかさえ知る人はいませんでした。
「8時20分だ」 1人が言いました。 「リバプールからの最終列車はもう到着しているはずだ。なのに彼は、まだここには現れない!」
「そんなに早くこないさ」 もう1人が言いました。「フィリアス・フォッグという男は、非常に時間に正確な男だからね。9時15分前まで、我々は安全とは言えまいよ」

 1分2分と時は刻まれていきます。秒針が最後の1分をすべっていきました。時計は8時45分を鳴らしはじめました。ドアが大きく開きました。
「私はここだ。諸君」 フィリアス・フォッグは言いました。彼のうしろには興奮した人びとが集まっていました。
いかなる危険をもくぐり抜けて、彼は80日間で世界を一周したのです。彼は時間との競争に勝ちました。賭けに勝ったのです。それに加えて、彼はアウダという女性にめぐり会えました。フィリアス・フォッグは世界一幸福な男でした。


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