レディバードブックス100点セット
 

 

おやすみ前の話〔黄〕

〈蛾と鏡〉

 森のなかの昆虫たちは、彼らが行儀よく振舞っているか、また、きちんと働いているかを見たりする、みんなを治める王さまを持っていました(ただし、チョウは別でした──チョウには、女王さまがいました)。
さて、蛾の王さまは美しい蛾でした。彼には大きな羽があり、誰も見たこともないほど大きな蛾でした。
彼はほかのすべての蛾がきちんと世話されているかを確かめるために、森を出たり入ったりして飛びまわりました、実際、彼は朝早くから夜遅くまで忙しくしていました。
ある日、蛾の王さまは森を出て、いく軒かの家をさがしに出かけました、小さな蛾にできる仕事をさがしにいったのです。彼が夕暮れのなかをパタパタ飛びまわっていると、雨が降り出しました。もちろん、彼は羽がずぶぬれになるのはいやでした、そして雷も鳴りはじめたので、彼は大きな邸宅へと向かいました。
彼はしばらくの間、窓の外側を飛びまわり、ちょうど誰かが窓を閉める前に、家の中に入りこみ、天井にしばらくの間羽を休めました。
彼はその大邸宅の中の家具や、じゅうたんや、その他の美しいものを感心して眺めました。彼がそこに止まっているうちにだんだん暗くなり、やがてすっかり暗くなりました。今やどこでも物陰があり、邸宅の中を探険するのにちょうどよい時間でした。蛾の王さまは天井をはなれて、大広間を通って大きな寝室へと飛んでいきました。

すばらしい光景が彼の目にうつりました……ぜいたくな天がいの下の大きなベッド。ベルベットのようなカーテンに厚いじゅうたん……それから不思議なことが起りました……突然、物陰に、蛾の王様の目に何かがうつりました……彼は自分の目を信じることができませんでした……それはもう1匹の蛾でした……美しい蛾でした……彼が今までに見たこともないほど美しい生きものでした……そして、彼はすぐに恋におちてしまいました。
彼がその蛾にひらひらと近づくことに、その蛾も近づきました……彼女はたいへん愛らしい蛾でした。蛾の王さまは、この蛾こそ、私のおきさきになるべき蛾だと思いました。かわいそうに、蛾の王さまは、大きな鏡にうつっている自分自身の姿を見ているのだとはわからなかったのです。蛾なのですから、それを知るはずもありませんでした……そして、彼はおきさきになるようなそんなに美しい蛾をみつけて、たいへんうれしく思いました。
突然、嵐がひどくなりました、そして雷が鏡に落ちました……鏡は粉々に割れてしまいました。鏡が割れて床に落ちてしまったので、鏡の中の王さまの姿は消えてしまいました……なんということでしょう、王さまは胸がつぶれました。彼のおきさきになる完全な蛾をみつけたと思ったら、彼女がそんなふうに消えてしまったのですから。
彼女はどこに行ったのだろう、と考えました。彼女はほんの今までそこにいたのです、空気のなかに消えたはずはないし……ここのどこかにいるにちがいない……彼は彼女をさがして邸宅じゅうを飛びまわりました……しかし、どんなに一所懸命さがしても、彼女をみつけることはできませんでした。とうとう、絶望して彼は森にもどり、ほかのすべての蛾を召集して特別集会を開きました。
彼は蛾たちに、さっき起ったことを話しました……彼がこの世でもっとも美しい蛾をどのようにしてみつけたのか……どのようにして彼女と恋におちたのか……その美しい蛾と結婚したいと思ったことなど。

 それから、彼は蛾たちみんなに、彼女がどんなふうに消えてしまったのかを話しました……今の今までそこにいた彼女が……次の瞬間には、稲妻の光とともに、消えてしまったのだと説明しました。彼は稲妻の光をはっきりと覚えていました……それはたいへん明るいものでした。彼はその光が彼女が消えたことに関係があると確信していました。
ほかのすべての蛾たちは、蛾の王さまの話に熱心に聞き入りました。彼らは王さまがそんなに悲しんでいるのをたいへん気の毒に思いました……それに彼らも愛らしい女王さまがほしかったのです。
彼らはその特別に美しい蛾をどうしてもみつけなければならないと決心しました……そして、彼女をさがしに四方へ飛んでいきました……しかし、どの蛾も彼女をみつけることはできませんでした。それで、彼らは光が重要なのにちがいないと決定し、王さまはどの蛾にも暗やみをさがすだけでなく、特に明るいところもさがすようにと命令しました。
彼らは今日に至るまで、稲妻とともに消えてしまったあの蛾を探しています。蛾が光のまわりや、ろうそくの炎のまわりさえも飛びまわっているのをよく見ることがあるのは、その理由からです。彼らは、存在しなかった女王さまの蛾をさがそうと、身を焼かれてまでも努力して飛びまわっているのです……彼女は実は鏡にうつった王さまの姿にすぎないのですから。

〈ベンのかかし〉

 ある朝ベンが、エンドウマメのつるがのびたかどうか、インゲンが大きくなっているかどうか見ようと彼の畑に出ていったとき、コッコッという音が聞こえてきました。ほんとうにコッコッとうるさいのです。
ベンにはそれが何の音なのか、すぐにわかりました。オンドリのホレイショにひきいられた、いたずら好きなメンドリたちが、垣根をとび越えていたのです。ニワトリたちはベンのエンドウマメやインゲン、畑の土にたいへんいいミミズを2回目の朝食に食べていました。彼はたいへん怒りました。
「シー、シー、このいたずらなメンドリめ、私の畑からすぐに出ていけ」 とベンはメンドリにかけより、おどかして追い払おうと手を振りあげながら叫びました。
ホレイショとメンドリたちが、無事に果樹園にもどったとき、ベンはひとつの問題をかかえているのに気づきました。どうやってホレイショとメンドリに野菜を食べさせないようにしたらいいのでしょうか。
畑のまわりにはすでに垣根があるので、もうひとつ垣根を作っても役に立ちそうにありませんし、メンドリらの行動を見張って1日じゅう立っていることなんか、とてもできることではありません。
やがて、彼にひとつの考えが浮かびました。自分が1日じゅう立っていることなんかできませんが、ほかの誰かならできます。それが答でした。
彼はかかしを作って、それを畑のまん中に立てようと思いました。彼は急いで家の中に入り、自分の寝室に行きました。お母さんが当ててくれたつぎのある、ほんとうにもう小さすぎる作業スボンを眺めました、そして、それをかかしに使ってもいいかどうか聞こうと決めました。さらにシャツとジャケットかカーディガン、帽子も必要でした。何といっても、もし、毎日毎晩たったひとりで立っているかかしになるのなら、暖かい身仕度が必要でしょう。

 階下にお母さんがいました。「ぼくの畑にメンドリが入ってこないように、かかしを作るんだ。この古い作業ズボンを使ってもいい?」 彼はたずねました。「もうとても小さくなったんだ」
「もちろん、いいわよ」 と、お母さんは言いました。彼女はちょっと考えてからつけ加えました 「階段の下の戸だなに、ぼろを入れた袋があるわ。それをここに持っていらっしゃい、その中に何か適当なものがあるかみてみましょう」
ベンはその袋をみつけ、2人で中のものを全部ひっくり返しました。「パパの古いカーディガンと、ぼくのしまのパジャマがある。これ、シャツになるよ。両方とももらっていい?」
「持っていらっしゃい、それとこのスカーフはどう? あなたにいいんじゃない」 と、お母さんはスカーフを渡しながら言いました。ベンはうれしくなりました。今や帽子のほかは全部そろいました。

 お父さんが入ってきて、そのいろんな洋服は何のためかと聞きました。ベンは説明しました。
お父さんは、それはとてもいい考えだと思い 「ほかに何か必要なものはないかい」 とたずねました。
「帽子だけです」 と、ベンは答えました。
「へりのない帽子でもいいかね」 と、お父さんがたずねました。
「いいですとも」 と、ベンが答えました。
「私の古いチェックのがあるよ。階段の下の戸だなのくぎにかかっていると思うが、とにかく、行ってみてごらん」
「ついでに、ほろの入った袋も持っていって、しまってきてね」 と、お母さんが言いました。
ベンはへりなし帽子をみつけました。ぴったり合いそうです。これで必要なものは全部そろいました。

 彼は服と帽子を庭に持ち出しました。それらをガレージの中に積んでおいて、彼はもうひとつのものをさがしに出かけました。2本の長い棒が必要でした。棒はすぐみつかりました、豆のつるの支柱を、使っていないときには庭の物置のうしろにしまってあるけど、それを使っていいよとお父さんが言ってくれたのです。ベンはちょうど同じくらいの大きさのものを2本えらび出し、それをガレージに運びました。それを十字の形に置いて、ベンはくぎを念入りに打ちつけました。
さて、今度はかかしに服を着せる番でした。まず、彼は古いズボンの片脚にたての棒を突き通し、棒の半分くらいのところでウエストをしっかりと結んでとめました。次に、彼はパジャマの袖を横の棒に通し、果樹園のそばの物置から持ってきた古い麦わらをいっぱい詰めました。次に足にもわらを詰めました。2本目のズボンの足を本物に見えるようにするためには、たくさんの麦わらを使わなければなりませんでした、しかし、作り終ったときにはたいへんうれしくなりました。それから、彼はパジャマの上にお父さんのカーディガンを注意深く着せかけ、ウールのスカーフをかかしの首に結びました。最後に、彼はお父さんのチェックの古い帽子を彼のてっぺんにかぶせました。
彼はうしろに下がって自分の作品を眺めました。彼が考えていたものとはかなりちがっていました。実際、どこかおかしいのです。しばらくの間、彼は頭をしぼりましたが、やがて、ある考えが浮かびました。彼は果樹園に行き、垣根を越えて畑へと出ました。それから畑を突っきって農夫のエヴァンスさんのところへかけていきました、エヴァンスさんは乳しぼり場で、乳しぼりに精を出しているところでした。
「すぐに行くよ」 彼はベンの姿を見て叫びました。「そこにいておくれ」

 ベンはそこで待っていました。
エヴァンスさんは1頭の牛の乳をしぼり終ると、ベンのところにやってきました、そこでベンは、庭に入ってくるニワトリのことと、かかしを作っていることを急いで説明しました。ベンの問題を聞くと、エヴァンスさんはにこっと笑いました。
「私についておいで、ベン」 と、彼は納屋に向かって歩きながら言いました。中は真暗でした。しかし、目が暗いのになれると、片すみにカブの大きな山が見えてきました。
「これならおおかた、いいのじゃないかな」 と、エヴァンスさんがベンにたずねました。

 「君のお父さんの帽子はこれにぴったりかぶさると思うよ」
「ええ、たしかに、ほんとうにどうもありがとうございました」 ベンはうれしそうに言いました。「できあがったら、ぼくのかかしを見にきてくださいね」
「あとで行くよ」 エヴァンスさんは約束しました。「今は、メウシのところにもどらなければならないからな」
ベンは畑を突っきり、垣根を乗り越えて果樹園に入り、かかしのところへもどりました。彼はまず棒の先にカブをのせようとしましたが、それは固すぎて無理でした、そこで彼はナイフを取りにいきました。お母さんはジャカイモの皮むきを使うといいと言ってくれました。
「それを使えば大きな穴が開けられるわよ」 と、彼女は言いました。
ベンは大きな穴を開けました、棒の先にぴったり入るくらいの大きさの穴を。彼はカブの頭を棒にさし、その上にチェックの帽子をかぶせました。
もうひとつだけ問題がありました──どうやって、かかしをガレージから畑まで運ぶかでした。

 ちょうどそのとき、お父さんがガレージにやってきました、お父さんはベンに助けがいるだろうとわかっていたのです。2人は注意深くかかしを菜園に運び、ベンの畑のまん中にそれを立てました。かかしはかなり立派なものに見えました。彼はしま模様のパジャマのシャツを着、つぎのあたった青いズボンをはき、赤いカーディガンをはおり、水玉模様のスカーフを首に巻き、カブの頭にはチェックの帽子をかぶっていました。
ベンはかかしをたいへん自慢に思いました。「このかかしが、うまくホレイショとメンドリたちが入らないようにしてくれればなあ」 と、ベンはお父さんに言いました。
「まあ、どうなるか、待ってみるんだな」 と、お父さんが答えました。
ベンは待ちました。翌日の朝、いたずら好きのホレイショとメンドリたちが、りっぱな服を着たかかしを一目見て、ミミズを食べたり、彼のソラマメやエンドウマメを食べたりしにベンの畑に入ろうとしないのを見て、ベンはたいへんうれしくなりました。

〈バッタのホッパー〉

 ホッパーは庭のなかでも、もっとも美しいバッタでした。彼は庭のなかに自分の住むところを持っていました、2、3回とべば行ける範囲内に友だちや隣人がたくさんいました、だから、さびしいことはありませんでした。
彼は庭にいるほとんどすべてのバッタから好かれていました、もっとも、ホッパーはいつも昼間から夢をみていたので、1、2匹の年とったバッタは彼を相手にしませんでした。彼はよく暖かいひなたに静かにすわって、行くさきざきで善いことをしながら世界じゅう旅している夢をみたものです。
また、友だちを殺そうとしている敵のバッタと戦っている夢もみました。そしてもちろん、敵がどんなに強くても、彼がいつも勝つのでした。ときどき、彼の夢はほんとうに起ったことのようにホッパーには思えて、それで彼は、友だちや近所のバッタたちに自分の最近の“冒険談” を話したくてたまらなくなるのです。そんなとき、みんなにこにこ笑いました、彼らはホッパーがまた夢をみていたのだと知っていたからです。まわりのバッタたちはホッパーが庭じゅうで一番とぶのが上手だということを知っていました、それでホッパーは、年よりのバッタに何か急用ができたとき、彼らの手伝いをよく頼まれました。
ホッパーが、ある暖かい午後、食事のあと庭のなかの自分の居場所にすわって休んでいると、あたりの静けさがガヤガヤという大きな音にかき乱されました。ホッパーは不安になり、何がそんなに音をたてているのかみようと振り向きました。たいへんなショックでした。人間がやってきたのです。ホッパーは仲間に、傷を負わされたり、ふみつぶされたりするといけないから、かくれているように警告した方がいいと思いました。彼はできるだけ大きな声で 「かくれていろ、人間がやってくるぞ、人間が来るぞ──かくれていろ」 と叫びながら、庭じゅうをはねまわりました。すぐにその警告は庭じゅうに知れわたり、かくれていないバッタはホッパーだけとなりました。人間たちはどこにもいました。大きい人間、もっと大きい人間、小さい人間、とても小さい人間などが。今やホッパーはひとつの問題をかかえていました。彼も家に帰らなければならなかったのです。
彼はできるだけはやく家に帰って安全にすごそうと、ひと足ごとに前よりも大きくはねようとして、一所懸命とびはねました。もうすぐでした。
ホッパーがもう少しで家に着こうとしたとき、突然何かが起こりました。光が消え、草が消え、何の音も聞えなくなったのです。彼は足を動かしていないのに自分が動いているのだとわかりました。さあ、ホッパーは本当にこわくなりました。彼はできるだけ大きな声で助けてくれと叫びました、もっとも、友だちは誰も助けてくれることができないと彼にはわかっていました、だって、人間に対抗してバッタに何ができるでしょうか。

 動きがしはらくの間止まりました、それから突然、警告もなしに、ホッパーはおかしなガラスのびんの中に落されてしまいました。底には草がしいてあり、びんの横側のガラスを通して、彼は庭を見渡すことができました。彼は自分の家までも見ることができました、しかし、どんなにはげしくとんだりはねたりしても、庭にもどることはできませんでした。びんの天井には小さな穴があいていました。そこから空気が入ってきましたが、そこからはい出せるほどの大きさではありませんでした。やがて、人間たちがみんな庭から外へ歩き出したので、ガラスのびんも、また動き出しました。ホッパーはとても長い間、ガラスにぶつかり続けました。彼はガラスの壁にへばりつこうと一所懸命やってみましたが、すぐあきらめざるを得なくなりました。彼はたいへんさびしく、たいへんろうばいしてしまいました。彼はその冒険に疲れはててしまいました。彼は目を覚していようとしましたが、とても無理でした。やがて、彼はやわらかな草の上で、ぐっすり眠ってしまいました。

 ホッパーが目を覚したとき、ガラスびんはとても静かでした。彼は暑くなり、おなかもすいていました。そして人間の顔がガラスすれすれに近づいてくるまで、自分がどこにいるのかわかりませんでした。その顔はとても大きく見え、ホッパーはこわくなりました。それから、彼はふたたび動いていって、どこかで高くかかげられているのを感じました。ガラス越しに眺めると、小さな人間がいっぱいいる大きな部屋のなかにいるのがわかりました。1人の大きな人間がいました、そして彼女は、小さな人間に見えるようにホッパーが入っているガラスびんをかかげていました。大きな人間が話している間、ホッパーは数分間高くかかけられていました、やがて彼女はガラスびんをテーブルの上に置きました。びんが動かなくなって、ホッパーは少し安心しました。

 次に、この恐ろしい冒険のなかで最悪の場面が起りました。ホッパーには何時間も続いたように思われましたが、たぶん30分ぐらいだったことでしょう。4つの顔が一度に彼をのぞきこんだのです。ホッパーは自分をみつめている人間の顔が見えない安全な場所をさがそうと、ぐるぐるとびまわりましたが、どこにもかくれ場所はありませんでした。そして彼がとびはねるごとに、小さな人間たちが笑ったり叫び声をあげたりするのでした。
ホッパーはそのときにはもう、もう一生涯冒険なんかしたくないと思いました。彼はただそのガラスびんから外に出たいだけでした。たとえ庭の自分の居場所へは帰れなくても、少なくとも自由になりたかったのです。

 小さな人間たちは上着を着ていました、外には大きな人間たちがいて、建物をのぞきこんでいました。「あ一あ、あの人たちは自由でいいなあ──ぼくも自由だったらなあ」 と、彼は思いました、みじめな気持でした。
「きっと彼らだって、ここに閉じこめられるのはいやだろうな」 するとそのとき、また高くかかげられて、何か暖かいものの中に押しこめられました。
ホッパーには何が起っているのかまったくわかりませんでした、しかし、また動いていることだけはわかりました、彼は前のとき以上に、はげしくゆすぶられていましたから。
彼はとても長い間、暗やみのなかにいました、おなかはすき、のどがかわいていました。すると、たちまち、ガラスびんが外に置かれて、まわりの景色が見えるようになりました。ガラス越しに彼の庭が見えました。
「私の家だ、私の庭だ」 彼はうれしくなりましたが、すぐに友だちとはねまわることはできないのだと気づきました。彼が悲しい思いで外を眺めていると、突然草がガラスびんの内側をすべっていくのが感じられました。
彼は草といっしょに注意深く庭の小道の上にあげられました。稲妻のようにホッパーは逃げ去りました。
彼の友だちは人間たちを見守っていましたが、彼らがホッパーを連れ帰ったのを見てびっくりしました。バッタたちは何が起ったのか知りたくて、至るところから出てきました、しかし、ホッパーがほしかったのは、あの快適な静かな居場所と、食べものだけでした。ホッパーはもう冒険はたくさんでした、また、たとえ彼が話をしたとしても、誰も彼のいうことを信用しないでしよう。

〈生誕劇〉

 数年前の、たまに雨が降るくらいのあるおだやかな冬のことです、ロバのダードルはジェンキンズさん一家と暮していました。
その一家はかなりの大家族でした。ジェンキンズ夫妻と、ルーシー、ポリー、メアリーの3人姉妹と、2人の少年、ポールとデイビッドがいました。
彼らはみんな、ホルサムという名の大きな村のなかの、大きな石造りの家に住んでいました。ジェンキンズさんは農園で働き、牝牛の世話をしていました。それで、乳しぼりのため、朝早く起きなければなりませんでしたし、週末でもほとんど休めませんでした。
ときどき週末に休みがとれると、ジェンキンズさんは家族みんなを連れて、海岸や動物園に行ったり、ピクニックに出かけたりしました。
ダードルは冬の間、その家族に預けられていたのです、うまやにも野原にも彼女のいる余地はたくさんありました。夜、寒くなってきたときとか、昼でも雨が降っているときには、彼女はやわらかい麦わらをいっぱい敷いた気持のいい乾いた馬小屋に入れられました。誰もが彼女の世話をし、子どもたちは彼女がいるのをうれしがっていました。
毎年、ホルサム村の若い人びとやその親たちは、村に住んでいる老人たちのためのクリスマスパーティを行うためのお金を調達しようと、熱心に働きました。食べものや、飾りつけ用品や、贈物をととのえるためのお金を調達するために、朝のコーヒー会とか、バザーとか、がらくたセールとかが計画準備されました。そしてもちろん、大きなクリスクスツリーもです !
ジェンキンズ家の子どもたちはまだ小さすぎて、いつも仕事の手助けをすることはできませんでした、ですから、他の人たちみんなが熱心に働いているのに、自分たちだけがおいてきぼりにされているような感じがときどきしたのです。

 ある晩、女の子たちがベッドの中で横になっているとき、ポリーが言いました 「クリスマスパーティのために何かできればいいと思うのよ──私たちがいつもと違ってお手伝いをしていると思うなんて、すてきじゃない」
「そうね」 ルーシーが答えました 「でも、私たちに何ができるかしら」
「困ったことには、この時期にはお母さんはいつもとても忙しくて、私たちはじゃまになるばかりだし」 メアリーはため息をつきました。彼女たち3人は眠りにつくまで、考えに沈んでいました。

 あくる日、学校へ行く途中、少女たちはポールとデイビッドに、自分たちがどんなにクリスマスのお祝いに参加したがっているかを話しました。
「そうだね、そうできればすてきだな、しかし、何をどうしたらいいかわからないよ」 と、デイビッドが言いました。
「そうだね、ぼくにもわからないや」 一番年上のポールが言いました。
「もう少し大きくなるまで待たなくちゃならないよ」
しかし、ポリーはそんなことであきらめませんでした。その後何日間か、彼女はそのことについて一所懸命考えました、しかしどんなに考えても、うまく行きそうな考えはひとつも浮かびませんで,した。
毎日、学校から帰る途中、子どもたちはダードルとちょっとおしゃべりするために足を止めました。ロバも子どもたちに会うのが好きで、鼻づらをなでてもらいたくて門までやってくるのでした。

 この特別な日に、子どもたちは門にのぼって、腰をおろし、足をぶらぶらさせていました。
そして、そのとき、ポリーがすばらしいことを考えついたのです。
「私たちに何ができるかわかったわ」 と、ポリーは門から飛びおりて言いました。
「何のために?」 と、ポールが困ったように言いました。
「あら──クリスマスパーティよ、もちろん」 と、彼女は答えました。
「ああ──あれ」 メアリーが言いました。「あなたが何を思いついたって、大人の人たちはやらせてくれないわよ、きっとよ」
「いいえ、やらせてくれるわ──私たちがちゃんとやれれば、つまり……」
「ねえ、そのすばらしい考えというのはなんなの」 と、ポールがたずねました。
「クリスマスの劇よ」 ポリーが答えました。「学校でやる生誕劇みたいなものよ、イエスさまがお生れになったときの劇」
「ばかなことを言うなよ」 デイビッドが言いました。「ぼくたちだけでは人数が足りないよ、それに、なにしろ衣装がないじゃないか」
「お友だちに参加してくれるよう、いつだって頼めるわよ──たとえばロバート・シャープとか、ジェイン・ストロングたちに」 と、ルーシーが思いきって言いました。
「ほらね」 ポリーが言いました。「やればできるわよ」
少年たちとメアリーも興味をおぼえはじめました、そして、ジェインとロバートに仲間になってくれと頼み、いいよという返事をもらったときには、みんな大喜びでした。
それから最後に、お母さんに自分たちのすばらしい考えを話しました、しかし、お母さんはそれをそんなにいい考えだとは思いませんでした。子どもたちがあまりにもがっかりしたので、とうとうお母さんも言いました 「ああ、それじゃあいいでしょう。おまえたちに何ができるか見てみましょう」

 そこで子どもたちは、衣装を作るのに古着をくださいと頼みました。彼らはドレスや敷布や毛布を集め、それを使って、羊飼いや天使やその他必要な衣装を全部作りました。
彼らは話し合って、ヨセフの役はポール、聖母マリアの役はポリーと決めました。
その重大な日が近づくにつれて、子どもたちはますます興奮してきました。ある朝、朝食のとき、彼らがリハーサルのことであんまりにぎやかに話しているのを聞いて、お父さんが言いました 「少し静かにしなさい──おまえたちは、次にはダードルまでも何かの役につけるのかな」
「わあー」 ポリーが叫びました。「なんてすばらしい考えだこと。彼女に、マリアをべツレヘムへ乗せていく、あのロバの役をやらせましょうよ」
お父さんは笑いました。「私は冗談で言っただけだよ」 彼は言いました 「でも、どういう具合になるか、やってみないのかい?」
そして、彼らはほんとうにやってみたのです。
彼らはダードルを大きな納屋に連れていき、ポリーがその背中に乗りました。それから、ロバを自分たちが作った舞台に連れていき、彼女に何をしたらいいのか教えました。何回か練習するとダードルはたいへん上手になり、みんなは手をたたいて喜びました。
ダードルにはもちろん何が起っているのかわかりませんでしたが、何か特別なことだとはわかったらしく、たいへん神妙にしていました。
そして、とうとうその当日になりました。それはすばらしいパーティでした、お年よりたちは心から喜んでくれました。
みんながお茶をのんだ後、牧師さんが言いました 「さて、みなさんのために特別な出しものがあります。生誕劇で、子どもたちのグループが演じます、彼らは自分たちだけで脚本を書き、演出したのです」
子どもたちは舞台に出ました。

 劇は、ほんとうにうまく進行しました。ダードルはポリーとポールといっしよに納屋のうしろで待ちました、そしてとうとう、舞台へ出る時間となりました、舞台には、宿屋の馬小屋に見えるようにわらが敷かれていました。
小さな行列が進むにつれて、ダードルは、青い色の衣装に身をつつんだポリーを背中に乗せて、ゆっくりと、また、堂々と歩きました。
見物人たちは、本物の生きたロバが出てきたのを見ておどろきました、そして、ロバがあまりにも上手にやるのにおどろきました。
行列が舞台に着くと、ポールがポリーを助けてロバの背中からおろしました。それから彼は宿屋の主人に話しかけ、宿屋の主人は一行を舞台の上の馬小屋へ案内しました。

 マリアとヨセフはロバをうしろに立たせて、わらの上にすわりました。
子どもたちの小さなグループは美しい絵のようで、見物人たちにそのお話をほんとうのことのように思わせました。
しかし、その次に何が起ったと思いますか。わらが暖かく、照明があり、納屋の中も暑かったので、ダードルにはがまんできなかったのです。彼女は横になって眠ってしまいました。その舞台の上で。
子どもたちは、何もなかったかのように劇を進めました。結局、ロバはイエスが生れた夜も、たぶんほんとうに眠ってしまったのでしょう。劇が終ったとき、人びとはさかんに手をたたき、歓呼の声さえあげました。

 その音にダードルは目を覚まし、よろよろと立ち上がりました。彼女は少しばかりまごつき心配そうでした──眠ってはいけなかったのだとわかったのです、しかし、子どもたちはすぐに、だいじょうぶだよと、彼女に言ってやりました。
「おお、ダードル、おまえはたいへん上手だったわ」 と、ポリーは言いました。
「そうだよ、おまえが眠ったときは、ほんとにおかしかったよ」 と、ポールが言いました。
子どもたちはロバをだきしめ、クリスマスツリーのところへ連れていきました、そこにはもう贈物が並んでいました。ぴかぴか光る赤いリボンで結んだ、ダードルのための人参の大きな束があったのです。
ダードルそっくりのロバを表に描いたカードもありました。
そのカードには 「世界一のロバ、ダードルへ。楽しいクリスマスでありますよう」 と書いてありました。
そして、たしかにダードルには楽しいクリスマスでした。

〈たいへんきれい好きなブタ〉

 ブタのパーシバルは、ほんとうにたいへんきれいなブタでした。彼はあなた方が見たこともないほどきれいなブタでした。彼が6頭のきようだいといっしょに生れたとき、お母さんブタも見たことがないほどきれいなピンク色をしていました。それから、彼が成長するにつれて、パーシーのお母さんは、彼がほかのブタとはぜんぜんちがう行動をとるのに気づきました。「あの子はきようだいとはちがうようだわ」 彼女は思いました。「あれは高慢ちきになっているわ。なぜそんなふうに考えるようになったのか、私にもわからないけれど」
パーシーのきょうだいはみんな 「ポーキー」 とか 「ピンキー」 というような名前がついていました、しかし、パーシーは家族や友だちに、自分のことを 「パーシバル」 と呼ばせました。はじめて会う人には、ぼくのことを『ブタのパーシバル殿』と呼んでもらおう」 と、彼は言いました。彼は 「殿」 とはどんな意味なのか、はっきりとはわかりませんでしたが、いいひびきを持つ言葉のように思えたのです。

 毎朝、他の子ブタたちが鼻をならして泥んこの中でころげまわろうとかけ出していくとき、パーシーは水槽の中でゆっくりと体を洗いました。彼は耳のうしろまでも洗いました。もちろん彼はいつも誰よりも早く朝の水を飲みました。
ブタたちが成長して大きくなったとき、ある日パーシーは言いました 「すみませんが、お母さん、ぼくは自分の家をみつけようと思います、ぼくはブタ小屋の中に住むのにはあきあきしました」

 彼はそんなに遠くまでさがす必要はありませんでした、すぐ近くに空いているブタ小屋があったのです。彼はそれを掃除し、毎日新しいわらを運び入れました。彼は馬小屋でみつけた古い敷物を敷き、カーテンまでもつけました。彼はドアに表札をかけました。それには 「うまや」 と書いてあり、その下に 「ブタのパーシバル殿」 とありました。他の子ブタたちは、それを見て笑いましたが、彼は気にしませんでした。彼はたいへんきれい好きなブタだということと、「うまや」 に住んでいることが気に入っていたのです。「他のブタのことを気にするな」 彼はひとりごとを言いました。「おまえは特別なブタなんだから」
ある日、パーシーは布の端が泥の中から突き出ているのをみつけました。彼は棒を持ってきてそれをすくい出し、じっと眺めました。それは黒いちょうネクタイでした。彼はそれを家に持ち帰って、洗ってかわかし、それを身につけました。「とてもスマートだ」 と、彼はひとりごとを言いました。今や彼はほんとうの紳士でした──ご主人の農夫のような。

 他のブタたちは彼を見ると、泥の中をころげまわって笑い、涙が出るまで笑いました。「パーシーは自分を誰だと思っているんだろう」 彼らは言いました。「ほんとうにおかしいな」

 パーシーは彼らの不親切な批評を無視することに決めました。「彼らがどう思おうとかまやしないさ」 と、彼は言いました。彼はひとりでぶつぶつとつぶやきながら、鼻をつんと上に向け、庭をいばって歩きまわりました。
不運なことに、彼はどこを歩いているのか見ていませんでした。次の瞬間、彼は庭にある一番深く一番泥だらけの水たまりの中に、まっさかさまに落ちてしまいました。「助けてくれ」 と、彼は叫びましたが、もう遅すぎました。黒い泥をたっぷりかぶって彼がはい出してきたとき、他の子ブタたちはまた大笑いました。彼らは笑い続けて、横腹が痛くなるまで笑いました。
パーシーは少しもおかしくもありません。泥が体じゅうからしたたったとき、彼はほんとうにばからしく思いました。それから、おどろいたことに、落ちたショックが消えると、とてもいい気分になってきたのです。たいへんいい気分なので、彼はその気持のいい泥をもっとみつけようと出かけ──その中で、ころんで、ころんで、ころげまわりました。他のブタたちはびっくりして眺めていましたが、彼は気にしませんでした。
「ぼくはとても汚いブタでいる方が、ずっと愉快だと決めたんだ」 と、パーシーは笑って言いました。

〈ポグソッグ〉

 モミの木の林の奥深くにあるポグソッグたちのすみかは、騒々しいおしゃべりや笑い声でいっぱいでした。ポグソッグのマーマデュークがその朝、空のダンボール箱をみつけ、ポグソッグたちはそれを何に使ったらいいか決めようとしていたのです。マーマデュークはほんとうにいい食器棚になるだろうと思いました、たくさんのはんぱものを入れるだけの大きさが十分あったからです。(ポグソッグはたくさんのはんぱものがなによりも好きなのです) ハーマンはそれをテントにしたいと思い、トロンゴはその中で眠りたいなと思いました。
「リッティ、君はどう思う」 と、彼らはリッティにたずねました、彼は一番賢こくて、彼らはいつも彼の考えに耳を傾けていましたから。しかしリッティはあくびをし、目を閉じて、何も言いませんでした。

 「ぼくは外に出てくるよ」 トロンゴが上着を着ながら言いました 「何かみつけられないかと思ってね。誰か来ないか」
ハーマンとマーマデュークはダッフルコートをはおり、みんな期待をもってリッティをみつめました。
「行ってもいい、と思うよ」 彼は目をあげ、またあくびをしながら言いました。それから、彼が長靴をみつける間、彼らは待たなければなりませんでした、まだ朝6時でとても寒かったからです。
4匹の小さなポグソッグたちは、大きな外の世界に通じる道をちょこちょこ歩いていきました。誰もモミの木の林より遠くへは行ったことがなかったのに、彼らはそれが大きな世界なのだと思っていました。彼らはクマの入口に着きました、そして鼻を外に突き出して、ちっぽけな鼻でくんくんと空気のにおいをかぎ、大きな、フクロウのような目でまわりじゅうを見わたしました。あなたが約7インチの背の高さで、かわいく、やわらかくって、だきしめたくなるほどだったら(クマのぬいぐるみよりも、もっとかわいいんですよ)、十分注意しなければなりません。誰もが、あなたをつまみ上げたくなりますから。彼らは少しも安心できませんでした。それが、ポグソッグがいつも夜にだけ出てくる理由でした。夜の方がずっと安全でしたし、太陽の烈しい輝きよりも、月のおだやかでやさしい光の方が彼らは好きでした。
もちろん、冬の間には、太陽の光もそんなに明るくありませんから、彼らは日中にもときどきは出かけることができました。さて、彼らはあたりを見わたし、注意深くにおいをかぎながら、1匹また1匹と、ゆっくり姿を現しました。もっとも大胆なトロンゴは、最初に茂みにかけこみました、そこに何か光るものをみつけていたのです。すぐに彼は邪魔になる土や葉っぱをどけて、みつけておいた宝物を引っぱり出しました。他の者たちはその周りに熱心に集まりました、リッティさえも、それが何なのか見たくてたまりませんでした。

 ハーマンが突然、他のポグソッグたちの上着を引っぱりました。
「何か聞えるぞ」 と、彼はささやきました。彼らはみんな、毛皮でおおわれた茶色の頭をあげて、耳を傾けました。
「たぶんあのおせっかいなウサギの仲間だろう」 トロンゴが言いました。
「やつらはいつも邪魔するんだ」
「ちがう、ちがう」 ハーマンが言いました。「音はあれから出ているんだ」
彼はおどおどして言いました。「そこのあれだよ」 彼らはみんな、トロンゴがみつけた光るものに注意して聞き入りました。たしかに、音はそれから出ていました。チック、タック、チック、タックと。彼らは少しこわくなりましたが、光るものが動きもせず、また、彼らに何も言わないので、だんだん恐ろしさに打ちかって、もっとよく見ようとそれに近づきました。
勇敢なトロンゴが上着の袖でその表面についたよごれをふきとったとき、他の者たちは恐ろしくて息をのみました、しかし、それでも何ことも起りませんでした。
「ほら、ほら……」 と、トロンゴは興奮して言いました。それは大きな光る顔を持っていて、チクタクと音を立てながら、小さな黒い針がぐるぐるまわっているのです。それは、この上なく、わくわくするものに見えました。

 「それは何だろう」 「あぶないかな」 「どこから来たんだろう」 「ぼくたちに動かせるかな」彼らは興奮してしゃべりながら、そのまわりに立っていました。それから、4匹はそれを注意深く持ち上げて、穴の中へ持ち帰りました。それをさし上げたり、押したりして通路を通り、彼らは居間へ入りました。そこで彼らはキーキー鳴いたり大声をあげたりしたので、ヴィムおばさんが目を覚ましました。彼女は眼鏡をあぶなっかしく鼻先にかけ、にぎやかに入ってきました。
「この大さわぎは何なの」 彼女は乱れた毛をなでつけながら言いました。

 彼らは光るものを彼女に見せましたが、彼女はそれから音がするので、おどろいてキャーと叫びました。彼女はテーブルの上にとびあがり、エプロンで顔をかくして、それを取り去るまで、そこから動こうとしませんでした。ポグソッグたちは彼女を落ち着かせようとしましたが、だめでした。
ヴィムおばさんはその場所から動きません。
「わかった」 トロンゴが言いました。「クレイカーおじさんをさがそう──彼ならそれが何なのか教えてくれるよ」
そこでトロンゴ、マーマデューク、ハーマンはクレイカーおどさんをさがしに出かけました、リッチィはヴィムおばさんを守るために.彼女のそばにとどまりました。

  数分たって、3匹のポグソッグはクレイカーおじさんのシャツの袖を引っぱって、急いでもどってきました。彼は怒って、ひとりでぶつぶつ言っていました、彼は若いポグソッグたちや、彼らが出す騒音がほんとうにきらいだったのです。彼は自分も昔は若かったということを忘れているようでした。
「引っぱるのはやめてくれ……放してくれよ、このいたずらポグソッグたちめ」 と、彼は叫びました。
「ほら……ほら……」 と、彼らは床の上のものを指さして言いました。
クレイカーおじさんは少しもこわがらずに、ふきげんな様子でそれに近づきました。「ふーむ……ふむ……」 彼はそれをみつめて、考え深そうにあごをなでながら.もぐもぐと言いました。「まさに思ったとおりだ、まさに思ったとおりだ……」
「ねえ、ねえ」 と、若いポグソッグたちはいらいらしてたずねました。
「ここで少し待っていなさい」 と彼は言い、静かに部屋から出ていきました。しばらくすると、彼は雑誌の中にあった写真を持ってもどってきました。
「ヴィムおばさんはテーブルの上で何をしようというのかね」 と、彼はたずねました。
「彼女はあれを捨ててしまわなければと言うんだ。あれをこわがっているんです」 と、トロンゴが言いました。
「おお、そんなばかなことを言わずに、すぐおりてきなさいよ、ヴィムおばさん」 クレイカーおじさんは大声で呼びかけました。「私はそれが何なのか知っているんだ、とても役に立つだろうよ」 ヴィムおばさんはテーブルからおり、他の者たちのうしろに立ちました、少しはずかしい気持でした。クレイカーおじさんはテーブルの上に写真を開きました。そこには、彼らがみつけたのとまったく同じ光るものがのっていました。
「ほら」 彼は言いました。「それは時計だよ……あれとまったく同じ時計なんだ」

 「しかし、それは何をするの」 みんながたずねました。
「何をするのかって……何をするのかって……それは時を知らせるんだ、それが仕事なんだ。これからは外を見なくても、夕食の時間、寝る時間、朝食の時間がわかるぞ。これからは我々の時計を見さえすればいいんだ」
彼はみんなに時計の見方とねじの巻き方を教えました。それから彼らはそれを暖炉の上に掛けました、それはたいへん立派に見えました。ヴィムおばさんでさえ、それが気に入りました。
「ひとつ、ぼくにわかることがある……」 マーマデュークがベッドの方へ歩きながら、眠そうに言いました。「ぼくは昼寝の時間だと時計に教えてもらう必要はないよ」
他のポグソッグたちも彼の後についていきました。こんなに忙しかった朝の後では、みんな昼寝がしたかったのです。


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