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伊能忠敬 1/6

50歳になって31歳の先生に学ぶ

イラスト  「それでは、家のことや仕事のこと、あとはすっかりおまえにまかせますから、しっかりと頼みますよ」
 「はい。いっしょうけんめいがんばります」
 1794年、下総国佐原村(千葉県佐原市)の造り酒屋の伊能家では、父の忠敬が長男の景敬に家をつがせる話をしていました。
 「どうぞこれからは、ゆっくりと休んでください」
 景敬のねぎらいの言葉に忠敬は首を振っていいました。
 「いや、わたしは江戸(東京都)へ出て、学問の道へ進もうと思っているのだ」
 景敬はおどろいて父の顔を見なおしました。父の忠敬は、もうすぐ50歳になろうとしていたのですから、景敬がおどろくのも無理はありません。
 「そんなにおどろくことはない。わたしは子どものころから、いつか好きな学問の道へ進みたいと思っていた」
 よく年の5月、江戸へ出た忠敬は、すぐに幕府の天文方の暦局に、有名な暦学者の高橋至時をたずねました。
 「先生、ぜひわたしを弟子にしてください」
 真剣に頼む忠敬を見て、至時は困ってしまいました。31歳の至時にとっては、父親のような年齢の人を弟子にすることになるからです。
 「学問の道には、年齢などは関係ありません。よろしくお願いいたします」
 忠敬の言葉に、至時はしかたなくうなずきました。
 忠敬はこうして、子どものころからの望みであった、学問の道へ入っていきました。


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